見出し画像

美術展めぐり「画家が見た子ども展」~街に公園に、子どもがいること

三菱一号館美術館(大手町)で開かれている「画家が見た子ども展」を観てきました🎨

テーマ的に、扱う時代区分がかなり広そうな企画だなと思っていましたが、取り上げられていたのは主に、ゴッホやゴーギャンといった後期印象派に続く19世紀末に活躍した「ナビ派」の画家たちの作品です。


◎ナビ派とは?🧑‍🎨
「ナビ」はヘブライ語で「預言者、案内人」の意味。
じゃあその預言者はだれかというと、ゴーギャンです

ポール・ゴーギャン『自画像』

印象派からより象徴的、神話的世界観を表現するようになっていたゴーギャン。輪郭線の強調、平面的な色塗りを重視し、ルネサンス以来大原則となったいた遠近法などの原則からも脱却していきます。

パリのアカデミーで正統な絵画技法を学んでいたポール・セリジュエはそんなゴーギャンとの出会いに衝撃を受け、生徒仲間たちで新たなグループを立ち上げます。ゴーギャン信者として、彼の芸術観を継いでいこうとする活動から「ナビ派」と呼ばれるようになったそう。

ポール・セリジュエ『護符』1888年
※ゴーギャンから指導を受けて描いた作品

前置きはそんなところで、今回の展示へ。

三菱一号館美術館。重厚な雰囲気がいいですよね…


館内の案内によれば「子ども」はそもそも、絵画の主題として扱われてこなかった対象だったそう。
(宮廷画では子どもの肖像画はたくさんあるけど、自然景観や風俗画のジャンルではということかな?)

その子どもを描こうとして視線を合わせたときに、画家たちにとって今までと違う世界の見え方がしたのでしょうか?そんなわけで、子どもそのものや、子どもがいる都市の風景、暮らしをテーマにした作品が並びます。

モーリス・ドニ『赤いエプロンドレスを着た子ども』(1897年)…点描で描いたエプロンドレスと後ろの花壇の花がとけあっていて、とにかく女の子の可憐さが伝わります

ヴァロットン『可愛い天使たち』1894年…子どもたちが何に群がっているのかというと、警察官に連行される犯人。純粋無垢で好奇心旺盛な子どもの、ある意味で残酷な一面を切り取ったイラスト。木版画で様々な場面を描いた作品が他にもたくさん展示されてました

モーリス・ドニ『子ども部屋(ふたつの揺りかご)』1899年…こちらもドニの作品。ドニは最初の妻との間に7人、その死別後の再婚相手との相手に2人と計9人の子どもがいたそう。家族が好きだったのだろうなあ、妻や子どもを描いた絵がたくさん展示されていました。生まれてまだ間もない妹に目をやるお姉さんの不思議そうで優しげな視線がとてもかわいらしく、今回のお気に入り。


こうしてみると、感情の表現や関心を示す先など、子どもというのは大人と違った視点で世界を認識しているのだなと強く感じますし、画家たちも、自分の自然な目線とは異なる「不思議な目線」を探求するために子どもというフィルターを通していたのかなあなどと想像。

また、ひとりでは安全に生きていくことも難しい小さな子どもたちが、大人たちに囲まれながら街に出て、暮らし、成長していくことができる当時の世の平穏も感じられて、穏やかな気持ちで見て回ることができました。

上に乗せたヴァロットンのイラストの子供たちに囲まれちゃう「撮影スポット」もありました。

三菱一号館の厳かで静かな雰囲気のなかで、じっくりと落ち着いて楽しむことができました🌇

【開催概要】

●会期:2020年2月15日(土)~9月22日(火・祝)
●主催:三菱一号館美術館、ボナール美術館(フランス、ル・カネ)、日本経済新聞社
●場所:〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-6-2
・JR「東京」駅(丸の内南口)徒歩5分
・JR「有楽町」駅(国際フォーラム口)徒歩6分

展示会HP(https://mimt.jp/kodomo/)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?