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健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023 成人版の要点

身体活動・運動は健康づくりにおいて極めて重要な役割を果たしています。身体活動とは、安静時より多くのエネルギーを消費し、骨格筋の収縮を伴う全ての活動を指し、日常生活における家事・労働・通勤・通学などの「生活活動」と、健康・体力の維持・増進を目的とした「運動」に分類されます。一方、運動は身体活動の一部であり、スポーツやフィットネスなど、計画的・定期的に実施されるものを指します。

健康増進のための身体活動・運動の推奨事項として、以下が挙げられています:

  1. 週23メッツ・時以上の身体活動(3メッツ以上の強度)

  2. 1日60分以上の歩行または同等以上の強度の活動(約8,000歩/日に相当)

  3. 週4メッツ・時以上の運動(3メッツ以上の強度)

  4. 週60分以上の息が弾み汗をかく程度の運動

  5. 週2〜3日の筋力トレーニング

  6. 座位行動時間の制限

ここで、メッツとは身体活動の強度を表す指標で、安静座位時を1メッツとし、その何倍のエネルギーを消費するかを示します。例えば、歩行の強度は3メッツに相当します。

これらの推奨事項は、科学的根拠に基づいて設定されています。成人を対象とした研究により、週23メッツ・時程度の身体活動量で生活習慣病発症リスクの大きな低下が期待できることが明らかになっています。具体的には、1日あたり10分の身体活動増加で、生活習慣病発症や死亡リスクが約3%低下すると推測されています。また、週4メッツ・時の運動で、生活習慣病発症や死亡リスクが約10%低下することが示されています。

座位行動に関しても重要な知見が得られています。座位時間の増加に伴い死亡リスクが増加することが報告されており、1日60分以上の中強度以上の身体活動によって、座位行動による死亡リスクの低下が期待できます。また、長時間の座位行動を頻繁に中断することが、心血管代謝疾患のリスク低下に重要であることも分かっています。

しかし、日本人の現状は推奨レベルに達していません。令和元年の国民健康・栄養調査によると、20歳以上の日本人の平均歩数は6,278歩/日で、年々低下傾向にあります。運動習慣者(1回30分以上の運動を週2回以上実施し、1年以上継続している人)の割合も28.7%にとどまっています。さらに、座位時間については、平日1日の総座位時間が8時間以上と回答した人が男性で38%、女性で33%もおり、日本人の座位時間は世界的に見てもかなり長いことが報告されています。

これらの現状を踏まえ、日本人の健康増進のために身体活動量の増加と座位時間の減少が喫緊の課題となっています。そのためには、個人差を考慮しつつ、可能な範囲で徐々に活動量を増やしていくことが重要です。具体的には、今よりも少しでも多く身体を動かすことから始め、強度や量を調整しながら、推奨レベルを目指すことが推奨されます。

また、座位行動の時間が長くなりすぎないよう注意することも重要です。デスクワークやテレビ視聴など、座ったり横になったりしている時間を意識的に減らし、定期的に立ち上がって体を動かすことが推奨されます。立位困難な人でも、じっとしている時間が長くなりすぎないよう、少しでも身体を動かすことが大切です。

身体活動・運動の増加は、個人の健康改善だけでなく、社会全体の健康増進と医療費削減にもつながる可能性があります。したがって、政府や地方自治体、医療機関、教育機関などが協力して、身体活動・運動の重要性を啓発し、実践を支援する取り組みを強化することが求められています。

最後に、"やりすぎ"の身体活動量については明確な基準がないため、怪我や体調に注意して無理をしないことが大切です。個人の体力や健康状態に合わせて、適切な活動量を見つけていくことが重要です。

以上のように、身体活動・運動は健康寿命の延伸に大きく寄与する要素であり、日本の超高齢社会における重要な健康戦略の一つとして位置付けられています。一人ひとりが自身の生活習慣を見直し、可能な範囲で身体活動量を増やし、座位時間を減らす努力をすることが、個人と社会全体の健康増進につながるのです。

健康づくりのための身体活動・運動ガイド 2023


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