[書評]『地図アプリで始める 山の地図読み 佐々木 亨著』
2021/05/19に山と渓谷社から発売された『地図アプリで始める 山の地図読み 佐々木 亨著』の書評です。
なお、私はこの本に出てくるアプリ『ジオグラフィカ』の開発者です。内容に関してはノータッチで、出来上がってから初めて読みました。
2021年の読図教科書にふさわしい
『こういう本を書く予定です』という話はだいぶ前に聞いていたのですが、実際に出来上がった本を読ませていただいて驚きました。軸が完全に地図アプリでした。ここまでアプリ主体の読図本は初めてです。
地図アプリの概要紹介から始まって詳しい機能、実践的な使い方と続きます。地図記号や等高線の見方など、基本的な読図の説明もありますがそこに載っているのは多くがアプリのスクリーンショット!徹底的にアプリの画面が使われていました。
2010年くらいは『GPSなんか使ったら読図が上達しない、紙の地図こそ至高』と言うベテラン登山者が多かったと記憶しています。時代は変わったなーと思いました。
ずっと「地図アプリは読図の答え合わせにも使えます。現在地が分かれば地形図と実際の地形を見比べることが出来ます。地図アプリは読図学習に有効です」と言い続けてきた甲斐がありました。
是非買って読んでください。
おすすめの読者層
多くの登山者が読むといい内容です。
地図アプリも読図も分からないという方はもちろん、少しは分かるけど地図アプリをどう役立てたらいいのか分からない方や、読図の講習は受けたけど地形図を見て先読みをすることが習慣にはなっていない方におすすめです。具体的にどう使えばいいのか知ることが出来ます。
どういう内容なのか?
オールカラー111ページ、全7章で構成されています。地図アプリはジオグラフィカとスーパー地形、山と高原地図の3種類。地図は国土地理院の地形図が使われています。
Par1 地図アプリを使って富士山に登ったら?
地図アプリを使って富士山を登るシミュレーション。地図アプリや読図に馴染みが無い方には難しいかも知れないので、ピンと来なかった方はPart7まで終わってから読み直すとよいでしょう。
Part2 地形図と地図アプリの基礎知識
地形図とはなにか?地図アプリとはなにか?どういう機能があるのかが紹介されています。詳しい使い方というよりは、それぞれの道具で『なにが出来るか?』という内容です。
Part3、Part4 地図記号と等高線から地図を読み解く
地形図の地図記号と、等高線などから地形を読む方法が解説されています。地図アプリの画面に表示されるのは地形図ですから、地図を読めないことにはどうしようもありません。読図が分からない方はこの辺をよく読んでください。
Part5 身近な低山で地図アプリを使ってみる
身近な低山のコースを課題に、地図アプリをどの様に使っていくか、地形図を読みながら実践的な読み方を解説しています。ここまでで学んだ基礎知識を総合的に使う内容です。東京近郊の方は実際にすぐ行ける山(小仏城山や高水三山)なので、書いてある内容を実践してもよいでしょう。
Part6 読図とコンパス
スマホが使えなくなっても問題ないように読図のコツとコンパスの使い方を説明しています。迷いやすい登山道のパターンやコンパスでのクロスベアリングの方法など、図や写真が多く使われていて分かりやすいです。
Part7 地図アプリで机上登山
尾瀬と八ヶ岳を題材にした机上登山をします。地図アプリで地形図を見ながら歩けそうな尾根や行ってみたい山を想像するのも楽しいですよね。
難しいと思っても大丈夫、何度か読みましょう
私は地図アプリを作っていて、時には講習で地形図の読み方を教えていますので、本の内容は最初からほとんど分かっています。それでも知らなかった言葉がいくつも出てきます。実は高度な内容です。
読図の知識が全くない方が1回読んですべてを理解するのは難しいだろうなと思います。1回読み終わったら最初に戻って読み直し、実地でアプリや読図の勉強をしたらまた読み直してください。
繰り返し実践しましょう
地形図も地図アプリも、使い方を学ぶには実際に使ってみるのが一番です。
地図アプリをいきなり登山で使うと、山を歩くのとアプリを使うのとで忙しいので最初は近所の公園など、自分が知っている場所で試してください。土地勘がある場所なら方向感覚や距離感などがつかみやすいですよね。
地形図やコンパスの勉強も同様で、何回か登って山容が頭に入っている山でやりましょう。答えが分かっている場所で使うことで、道具の使い方に集中できます。
本を読み、地形図を読み、地図アプリを使い、また本を読むというサイクルを繰り返すことで理解が深まっていきます。
覚えたことは繰り返すと定着するし、やめてしまえば忘れます。地形図、コンパス、地図アプリを登山で使うことを習慣化してください。そうすれば地形図を読んで先の地形や道を想定し、不安なく山を歩くことが出来るようになるはずです。
その他、登山でスマホを使う情報はコチラ
本の中では、スマホを登山で使う上での注意点は少なめでした。アプリの使い方や地形図の読み方にページを割いたからかと思われます。
スマホは街で使うように設計された精密機械なので、アウトドアで激しく使うこと壊れる可能性がありますし、バッテリーが切れたらどうしようもありません。
そういう情報はコチラにまとめておきました。参考にしてください。
アプリの細かい使い方なども下記に載せておきます。
ジオグラフィカのインストールはコチラから。
簡単な使い方を最低限書いたプリント(両面印刷で紙1枚)
ジオグラフィカの講習会で使っているスライドも公開しています。このスライドを使って各自で講習会を開いていただいても構いません。
ジオグラフィカの詳しい使い方と読図の説明書もあります。
これはPDFビューアーなどで小冊子印刷をすればA5の冊子になります。ページ数が多いので小冊子印刷をしてザックの雨蓋に入れておくとよいです。
まとめ
最初に書いたように、2021年の読図教科書としてふさわしい内容だと思います。難しい部分もありますが、実践と再読を繰り返せば理解できると思います。冒頭でも書いたけど、是非買って読んでください。
最初からすべてを理解するのは難しいでしょうから、分からない部分は分からないとしていったん横に置いて、とりあえず地形図や地図アプリを使っていきましょう。
そのうち脳の神経が上手く繋がって「こういう意味だったのか!」と分かる日が来ます。普段から地図を見る習慣をつけてください。
わぁい、サポート、あかりサポートだい好きー。