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[無料]登山の装備について出来るだけ短く解説しようとした

登山の装備やウェアについて真面目に書くとめちゃくちゃ長くなってしまいますが(10万文字くらい書けるね)、そんなの書いても誰も読まないの出来るだけ短くまとめる努力をしました。

対象と概要

登山を趣味として始めてみたい方、家にある靴やリュックサックでハイキングをして楽しかったので、もっと高い山に登ってみたいと思った方など。

日帰り登山から一泊の山小屋泊くらいを想定して書きます。テントや雪山はまた別の道具がいろいろ必要です。まずは初歩の装備から。

注意:重さと性能

登山の装備は軽いほうがいいんですが、軽い装備は何かを犠牲にしています。丈夫さだったり機能だったり価格だったり。重さ、性能、価格はトレードオフです。重さだけで装備を選ばないでください。超軽量装備はある程度登山が分かってから買うのがいいと思います(最後は好みの問題ですが)。

注意:はじめは登山用品店で買うべし

はじめからワークマンとかユニクロを利用して出費を抑えようとすると失敗します。そういうところは、ある程度登山用品の性能や使い方をわかってから利用しましょう。

最初は神保町のさかいやとか石井スポーツ、カモシカ、好日山荘など専門店で買いましょう。なお、お店で試着してネットで最安値のとこから買うのは人としてどうかと思うのでお世話になったらそのお店で買ってください。

注意:お金は掛かりますよ…

登山はそれなりにお金が掛かる遊びです。道具、交通費、宿泊費、誰かに習ったり連れて行ってもらうなら講習費やガイド費。お金を掛けない工夫をするのも楽しいですが、お金で解決できる問題は多い。お金をたくさん稼いでそれなりに使いましょう。

大雑把に相場感を書くと、ザックは2万円、登山靴は3万円、カッパは2万円程度は掛かります(新品の場合)。例えば富士山に登れる装備を揃えたら10万円くらいは掛かると思ってください(※)。そのくらいの装備があれば、技術的に簡単な山の無雪期ならけっこう行けます(岩とか雪の山は除くし本人の体力次第だけど)。

※…どうしても予算がないならメルカリとかヤフオク、中古屋さんなどを利用するといいんじゃないでしょうか。ただし中古は劣化具合がまちまちなので買う前によくチェックしてください。

ザック(リュックサック)

自分が行きたい山を登山用品店の店員さんに言って、要求と体に合うものを買ってください。登山を継続的にやっていきたいなら30リットル程度が無難です。これくらいあれば雪がない季節の小屋泊も出来ます。

軽いザックは耐久性が低かったりします。1kgを切るようなザックは生地が薄くて使い勝手に制約があるので、最初は1.5kg程度のザックを買うといいです(大雑把なアドバイス)。

でも最終的にはスペックではなく、体にあった上で見た目の好き嫌いで選んで好きだと思うものを買いましょう(結果として道具を愛せます)。

最近はザックカバーが付属しているものが多いですが、付属してなかったら一緒に買ってください。必須です。

登山靴

これも登山用品店で買ってください。試着して足に合うものを買いましょう。基本はミドルカットで防水透湿素材が入っているものです。

トレランシューズやアプローチシューズなどローカットの靴でもいいんだ、いや長靴が最強だなどと言う人もいますが、そういうのは山を歩き慣れて筋肉や筋が鍛えられた人の言うことです。最初はミドルカットの登山靴をオススメします。

デザインが気に入ったけど合わない靴と、足に合うけどデザインはいまいちな靴だったら、足に合う靴を選んでください。合わない靴を履くと登山が苦痛になります。

登山靴を買ったらその場で登山用の靴下も2セット買ってください。登山用の靴下は登山用品店で買うのが手っ取り早いので。

雨具

登山に使うなら防水透湿素材を使った上下セパレートのカッパが必須です。他の選択肢はありません。高いと思っても登山用のカッパを買ってください。

防水透湿素材もいろいろありますが定番はゴアテックス。ファイントラックのエバーブレスのような伸縮性がある素材もあります。伸縮性があると動きやすいです(私は冬用のハードシェルでファイントラックを使用中)。

カッパの色はお好みで。最近流行りのアースカラーや暗い色は遭難時に見つけにくい欠点がありますが、気に入った色を選んでください。ただし迷彩はやめたほうがいいと思います。あまりに山に溶け込んでしまいます。

樹林帯を歩く場合は折りたたみ傘があると快適だったりもします。これは登山用でなくても構いませんが。

衣類

まず大原則として、綿や麻の衣類は絶対にダメ。保水しやすく乾きにくいからです。化繊やウールを選んでください。登山専用でなくても、スポーツ用の速乾シャツなどで大丈夫です。

基本は重ね着で、下着、シャツ、フリース、アウターなどと重ねて調整します。何枚重ねて着るかは季節や標高にもよりますが、『山は街よりけっこう寒い』と思ってください。夏でも防寒具(フリースやライトダウンなど)をザックに入れましょう。

もちろんカッパも持っていきますし、雨が降ってなくても寒いときは防寒着として着ます。

ドライレイヤー

夏でも汗をかいて風に吹かれると汗冷えして体温を奪われます。対策としてドライレイヤーというものがあります。保水しない生地で出来ていて、体から出た汗を上に着た衣類に移し、肌と濡れた服を密着させない効果があります。

最初にファイントラックが売り出しましたが、現在は色んなメーカーが似たような商品を出しています。

濡れたシャツが肌に張り付く不快感と寒さを相当に軽減してくれます。1枚持っておくとよいでしょう。

ファーストエイドキット

自分や仲間が怪我をした時に使うので必ずパーティーに1つは必須です。単独なら自分で持ちましょう。最初はセットになったものを買うと楽です。

テーピングや三角巾が入ってなかったら買い足してジップロック等に入れて一緒に携行してください。大きめの傷にはハイドロコロイド包帯が便利です。傷の大きさに切って使います。

ツエルト

山で下山が遅れたり怪我をしてすぐには動けない場合はビバークをすることになります。そんな時にツエルトがあると無いとでは大違い。個人装備として各自が持ったほうがいいし、単独なら必ず持ちましょう。

張り綱が付いてない場合は別途買って付ける必要があります。

使い方を勉強してください

なお、ファーストエイドキットにしろツエルトにしろ、持っていても使えなければ意味がありません。せめて1回は袋から出して何が入っているか確認する、ツエルトなら自分で張ってみるなどしてください。

筆者が運営している『おくたま登山学校』ではそういう内容の講習も行っています(2020年と2021年はコロナであまり開催できていませんが)。

ファーストエイドやセルフレスキューは、山岳会、講習会、ガイド山行などで誰かに習いましょう。今ならフレキシブルに動きやすい山岳ガイド主催の講習を探すといいと思います。

ヘッドライト(ヘッデン)

どんな山に行くときでも必須の装備です。防滴や防水のものを選んでください。

街に住んでいると暗闇を忘れがちですが、山の夜は本当に暗い。日が落ちて明かりがないと何も出来ません。ヘッデン無しで登山なんて常識としてあり得ません。何度も書きますが、絶対に持ってください。予備の電池も持ちましょう(エネループを使う場合は定期的に充電しましょう)。

ウソみたいに明るいものから、暗いけどバッテリーが長持ちするものまで様々ですが、実は明るさはそれほど必要ありません。普通は夜の登山道を歩かないから(24時間耐久トレランとかやる人は別ですが)。

上記のヘッドライトは単三電池1本で使えます。電池の管理が楽で、ほどほどの明るさ、小屋やテントで使いやすい赤色灯が付いています。

ストック

1本か2本使うかはお好みですがおすすめは1本。岩場など手を使う場所では収納します。

無雪期は先端のゴムキャップを付けましょう。公共交通機関ではザックの外に付けず、中に収納するか手提げバッグなどに入れましょう。カバーもあるとよいです。

火器

日帰りや小屋泊なら必須装備ではありませんが、山で温かいごはんを食べると異常に美味しい。だからみんな火器を買います。ガスバーナーですね。ストーブやコンロという言い方もします。

基本はアウトドア缶(OD缶)の上に付けるタイプです。

カセットボンベ(CB缶)を使うものもあります。CB缶はどこでも買えるのが便利です。

それから超小型軽量、安価なものなど。

小型なのはいいのですが、弱火にすると鍋の底にススが付いたり、五徳が小さくて不安定だったり、性能はそれなりです。

火器は沼です。私は4つ持っていますが、もっと欲しくなってしまいます(買うのを我慢してます)。そうならないようにご注意ください…。

火器の注意点は、バーナーのメーカーとガス缶のメーカーを揃えることです。EPIのバーナーならEPIのガスを使いましょう。違うメーカーの組み合わせだと事故の際に補償されません。

使い際は周りに燃えやすいものが無いようにしましょう。山火事と起こすと大変です。山小屋の前にあるテーブルでは『火器の使用禁止』なんて書いてある場合もあります。クライミングの岩場でもよく禁止されています。使っていい場所かよく確認しましょう。

コッヘル(クッカー、鍋)

アルミは安いけど少しだけ重い。チタンは軽いけど高価で焦げ付きやすい。ケトルは要りません(個人の価値観です)。モンベルでこの辺のセットを買うと簡単です。

お湯を沸かせればいいから軽量コンパクトにしたいならこんなのとか。

スマホ関連

まずモバイルバッテリーは必須です。泊数によって変わりますが、10000mAh程度が汎用的に使えます。

普通ならこれで2泊くらいはギリギリもつかと思います(使い方にもよりますが)。必ず充電忘れをしてないか前日までに確認してください。充電には意外と時間がかかります。

メーカーはAnkerかCheeroが無難です。

ケーブルも忘れないでください。スマホを複数台持っていたり、仲間のケーブル忘れをカバーするのに3in1タイプが便利です。

メンバー全員がiPhoneならライトニングケーブルだけで構いませんが、単独の場合は断線も考慮して2本持ってください。

落下防止のためにストラップを付けたほうが安心です。ケースと組み合わせてストラップを固定するものもあります。

スマホケースも付けたほうがいいでしょう。落とした時の防御力がだいぶ違います。ただし、マグネット内臓の手帳タイプを登山に使うとGPSを使う際コンパスがズレてしまいます。マグネットが入っているものは避けましょう。

スマホ関連はアプリなど使い方も含めて詳しく書きました。↓

コンパス

基本はプレートコンパスです。

長辺(コンパスの横の長い辺)が短いと使いにくいので、上のシルバコンパスみたいなのを選ぶと読図講習などで使いやすいです。

地図

地図は山と高原地図のような登山地図と細かい地形が載っている地形図があります。

山と高原地図は主に計画や、現場でコースタイムを確認するのに使います。山と高原地図は縮尺が5万分の1なので細かい地形を読めません。読図には使えないと思ってください。

読図には2万5千分の1地形図を使うのが基本です。上記サイトから範囲指定して無料で印刷できます。パソコンにPrimoPDFなどを入れておけばPDFに出来ます。

更に、PDF-XChange Editorなどで予定コースや予定時間、ポイントの標高などを書き入れると便利です。

サンプルはこんな感じ。

行動中はこの地形図を使います。

GPS

スマホに登山用のGPSアプリを入れれば、スマホが登山用のGPS端末になります。

ジオグラフィカは私が作ったアプリで、登山のナビゲーションをスマホで実現するためのアプリです(なので十分使うにはナビゲーションや読図の知識が必要です)。ほとんどの機能が無料で使えます。無料でいいから使ってください。

説明書はコチラ

アプリはなんでもいいのですが、スマホにGPSアプリを入れて使えるようになってください。家の近所で練習するといいですよ。

ココヘリ

個人的には必須装備だと思っています。

行方不明になっても10km以上離れたヘリの上から信号をキャッチして探しに来てくれます。正しく使えばほぼ100%見つけてもらえます。年間3650円で安心が買えるんだから超お得ですね。日本で創業してくれてありがとうございます。

注意点は、必ず充電しておくこと。3ヶ月程度バッテリーが持つようですが、山行前には必ず充電しておくと安心です(道中モバイルバッテリーで充電してもいいと思います)。それと、必ず登山計画を出して家族にも共有しておくこと。口頭ではなく文字で山名とコースを伝えましょう。

家族が大まかでも山域を指定して捜索を依頼し、会員証が電池切れになっておらず正常に信号を発信していればほぼ発見されます。

テントなど野営装備

長くなるので短く書くと『モンベルに行くといい』です。テントはモンベルのステラリッジかアライテントのエアライズが定番です。

寝袋やマットもモンベルで買えばハズレません。モンベルに行きなされ。この辺はまたこんど詳しく書きます。

その他細かいもの

保険証、現金、免許証、補修用の針金やダクトテープ、小さいナイフ、ホイッスルなど、あれば便利な小物も持ちます。それらはポーチやスタッフバッグにまとめると便利です。

何が必要かは登山を積み重ねていくとわかってきます。

たまには天気が悪い日に行ってみるのもいいかも

天気がいい日だけ登っていると、悪天候時に何が足らないのか?実は何が必要だったのか?一応緊急用に持っていたけど使えないじゃん!というのが分かりません。

台風や強い低気圧が来てたら中止したほうがいいと思いますが、シトシト雨が降る日に敢えて山に行ってみるのも良い経験です(スリップや転倒に注意してください)。

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雨の山は色彩が濃く、山に掛かる雲も美しいものです。

メンテナンスが超大事!

せっかく良い装備を買ってもメンテナンスが悪いとすぐに劣化してしまいます。登山靴は泥汚れを落として中敷きを外して陰干ししてから仕舞ってください。湿気たまま靴箱に入れっぱなしでは靴底が加水分解して剥がれてしまいます(いずれにせよ5年程度で自然劣化しますが)。

衣類も早目に洗っておきましょう。ストックは分解して乾燥させてください。分解方法は説明書に書いてあるはずです。雨具もたまに洗濯しますが、洗濯機で脱水すると生地が水を通さないので洗濯機が振動して壊れます。

それぞれの道具には決まったメンテナンス方法があります。説明書に目を通しておきましょう。良いものを買って長く使ってください。

結局長くなってしまいました

なんだかんだで5000文字を越えてしまいました。このへんで終わりたいと思います。

登山の装備は、最初に買ったものがすべて正解というわけにはいきません。使っていると不満が出てきます。工夫したり買い替えたりして、徐々に自分の理想とするスタイルが確立します。そういう工夫も面白いのが登山の良いところです。

基本は基本としつつも、安全に想像力を発揮して快適で創造性のある装備セットを作っていってください。

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登山におけるリーダーの心得

登山でリーダーをやりがちな人、人を山に連れて行く人はこちらも読んでください。


わぁい、サポート、あかりサポートだい好きー。