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蕎麦屋で"天抜き"
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(写真は蕎麦の散歩道より)
あいよ天抜きね
と言って店主は客に、お銚子を1本を運んで来た。
「ちょっとお待ちを」
暫くして、店主が海老天二本をどんぶりの汁に浮かべて運んで来た。
客は汁に浮かんだ海老天を箸でつついて沈めながら、徳利の酒を盃についで、くいっと旨そうに口に運んだ
「こーでなくちゃな。なんだなー 世の中ってのはうまく行かねーって奴で、からっきしなんだなー」と脇のえびの頭をこずいた。
「お頭付ときたー。 気が利いてやがるな」
別に揚げて添えられていたえびの頭の素揚げを箸でつまみ、丼の蕎麦汁に浸して口に運んだ。
「海老で一番うめーのは "かしら"だかんな」と独り言を言いながら旨そうに食べた。
※※※
蕎麦屋に来た常連客の様子であります。
※※※
この「天抜き」は裏メニューで何十年も通った常連にしか出さないと言われていた通のみ注文が出来る裏メニューなのであります。
ですから誇り高き「天抜き」を注文する客なんざそうおりやせん。
で、「天ぬき」ってのは天ぷら蕎麦から「蕎麦」を抜いたものなのです。
つまりどんぶりの中身は温かい汁と天ぷらがあるだけです。店によっては蕎麦が後から盛られて来る場合もあります。
注文の意味としては「天(ぷら蕎麦の“蕎麦”を)ぬき」で、ってことなんですよ。
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