見出し画像

思い出の書店は、次々なくなっていく

突然だが、下の写真を見てみてほしい。

何か違和感はないだろうか?

著者撮影

写真には、「東一条通り」と「東大路通り」と書かれた二つの看板と、「東山東一条」という交差点名を示す標識が写っている。

ここは「京大正門前」のバス停がある場所で、京大の目の前の交差点を西向きに見た写真である。


奇妙なのは、建物の中央にある「春琴堂書店」の文字だ。

書店と書かれてあるのに、書店らしき店舗は見当たらない。

ご存じの方も多いと思うが、ここにはかつて書店があった。

春琴堂書店は、実はWikipediaにも掲載されるほどの、由緒正しい書店だ。

谷崎潤一郎が命名したことで知られ、その店名は『春琴抄』の主人公の名が由来である。

1947年、谷崎家の女中を勤めた方とその夫が創業したという。

だが2018年3月、店主の高齢化、経営状況の悪化に伴い、惜しまれながら閉店した。


京大の医学部キャンパスは、春琴堂書店のすぐ南(写真の左)にある。

この交差点を東(写真の手前)に渡ると、時計台のある本部キャンパスや、その隣の吉田南キャンパスにたどり着く。

学生時代は、キャンパス間を行き来する際に何度もここを通り、春琴堂書店にしばしば立ち寄っては漫画や小説を買った。

京大から徒歩圏内の新刊書店は意外に少なく、医学部キャンパスからはこの小さな書店が最も近かった。


だが、今は微かな面影を残すのみで、書店はもうない。

思い出の書店は、次々なくなっていく―。


そういえば私が大学生になった時、初めて住んだ町が一乗寺だった。

京大からは自転車で15分ほどかかるエリアだ。

入学当時、多くの先輩が私に口を揃えて「なんでそんな遠いところに住んだの?」と言った。

「大学まで自転車で15分」というのは、京都の学生にとっては「遠い」のである。


初めての一人暮らし。

寝る時間も起きる時間も、食事をするのも、遊びに出かけるのも、全て自由。

地元の公立中高に通ってきた私の狭い世界は、突如として広大になった。


一乗寺のワンルームマンションは、そんな私の大切な城だった。

大学から「遠い」のも、自分の時間に浸れる点ではかえって好都合だったかもしれない。


当時、そんな私の城に最も近い書店が「丸山書店」だった。

丸山書店は北大路通りに面した大きな書店で、高野の交差点から少し西に行った場所にあった。

驚くべきことに、この書店、24時間営業だった。

友人と日が変わるまで酒を飲み、帰り道にふらりと立ち寄って、酔った勢いで漫画を大人買いすることもあった。

自由に浴する幸せを、この上なく感じられる場所だった。

だが。
丸山書店も、私が大学を卒業した翌年、突然閉店した。

思い出の書店は、次々なくなっていくのだ。



さて、実は今この跡地にあるのが、何と「大垣書店高野店」である。

カフェを併設した素敵な書店だ。

そんなわけで、紆余曲折を経て再び話題は大垣書店に至り、最後に告知をさせていただこうと思う。


2023年8月5日、京都文化博物館本館1階で大垣書店京都本店主催のトークイベントが開かれる。

詳細は以下、ご覧いただき、ぜひお立ち寄りいただければと思う。


大垣書店イベント詳細
https://passmarket.yahoo.co.jp/event/show/detail/025btder82531.html

今夏のイベントについては、SNS医療のカタチ公式サイトをご覧ください:https://snsiryou.com/