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録音した自分の声は、聞きたくない?:一戸信哉の「のへメモ」20230125

敬和キャンパスレポでは、昨年の夏から、私のゼミのメンバーによる番組内容の振り返りを行っています。番組内容や編集に関するコメントのほか、SNSによる告知内容についてもコメントしてもらっています。

放送振り返りのねらい

ねらいは2つあります。1つは、細部へのこだわりを醸成することです。番組収録に参加するメンバーは、ひとりひとり現場で成長していますが、そのペースは異なります。自分の参加した番組がどのような仕上がりになったか、進行・つなぎ・言いよどみから、編集の仕方まで、何がどのように番組の成果につながり、あるいは欠点として記録されたのか。主に番組に参加した人たちが意識することです。

もう1つは、参加意識を引き出すことです。ラジオ番組であれ、ポッドキャストであれ、自分が制作に参加していない番組を、学生たちがきくかどうか。実際のところ、あまり聞いている様子はありません。ときに広報担当の学生ですら、台本を読んで文章を書いているのではないかということもあります。多くの学生達が、主体的に参加できる環境を用意するようにしていますが、「やらされ感」のあるうちは、なかなか主体的に参加するようにはなりません。番組の振り返りを全員でやるようにすれば、少しは番組を聞いて、自分の参加する形を考えてくれるのではないか。そこを期待しているところもあります。

自分の声を聞くのは恥ずかしい?

さて、その実態は?夏休み前に始まった「振り返り」は、Google Classroomで出席確認の意味合いで提出してもらいました。その後夏休み明けにも継続しての提出を期待していたのですが、徐々に提出者が減っていきました。現在再び働きかけをして、提出を促すようになりました。

収録参加から間もない学生たちは、自分の声を聞くのは恥ずかしいと思っているようです。それは出来不出来の問題ではなく、録音された自分の声というのは、普段聞き慣れないものなので、日頃から顔出しでYouTubeに発信している人でもなければ、なかなか聞くのはつらいのでしょう。

なにごとも、「やりっぱなし」が一番楽ですよね。楽しくお話しできれば、それで満足というの気持ちもわからなくはないです。

「ほめごろし」になってないか:「自分はなにもできていないので」という遠慮

ようやく出てきたレポートは、「よかったところ」を列挙しているものがほとんどで、適切な改善点を発見している人は少ないです。もちろん、つっかえているところ、ノイズが入ったなどのあきらかな改善点は、編集でカットするようにしているわけですから、放送データからこうした点を見つけるのは難しいでしょう。しかし、MCの進行にミスがないか、台本を棒読みしているだけになっていないか、を検証していけば、毎回何らかの改善点はあるはずです。台本が棒読みになっているのは、学生MCの力量と台本のミスマッチともいえますから、台本のほうを変えるという手もあります。こうした問題点を何も指摘せず、ほとんど「ほめごろし」のようなレポートにも見えます。

もっと改善点を出してほしいと何度か話してみると、「自分は何もできていないので」という言葉が何度か出ました。本来番組制作にもっと参加すべきなのに、あまり参加できていない自分が、番組の出来栄えの細部について、「ダメ出し」はしずらい。そういうことでしょう。なるほどその気持ちはわかります。本人の心の中にしまわれたものであっても、いずれ本人の成長の機会になっていくのであれば、それでいいのかもしれません。あるいは、他の学生にも見える形ではなく、私とその学生との対話の中身として、記録されるべきものにはできそうです。

いずれにしても遠慮は存在するようです。しかし主体的に取り組んでいる人の遠慮は、その後ろにいる、まだ主体的になれていない人の意欲をそぐのかもしれません。

誰が「質」を上げていくのか

「大学生によるラジオ番組制作」というのは、「内輪受け」に陥るリスクが常にあります。多様なコンテンツがある時代に、コミュニティFMで、地方の私立大学の大学生が、自由にしゃべっている番組を聴きたい人がいるのか。常にその逆風に抗う気持ちがなければ、「しゃべっている人たちは気持ちいい」になりかねません。番組制作の近くにいる学生たちですら、自発的に番組をきいていないという現実に、そのことは現れています。

ただ、番組のクオリティを上げて、みんなに届く番組を作ることができるのは、自分たち自身でもあります。番組をこのようにしたいという声は、ときどきあがってきます。私自身も学生たちとよく話しながら、いろんな意見が飛び交って、新しいアイデアが結実し、それが聞いてくださる方に響くような内容と品質を、目指していきたいと思います。

番組へのご意見・ご感想、いただけるとありがたいです。


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