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小学生と中年夫婦のシェアハウス

娘と夫がまた派手に言い争いをしました。

夜、22時過ぎに仕事から帰ってきて直ぐやり合うのは、もう本当に、お疲れ様。と言う感じなのですけれど、私は私で前日に、買い物に行って来るねと出かけた30分足らずの時間に、約束は破る、嘘はつく、でガッカリが重なり過ぎて悲しいです。と言い置いて、娘の出方を見ながら放っているところだったので、気持ちわかるよー。だけど、いつもの私の気持ちもわかってねー。と、リビングから夫にエールを送りながら、激しいバトルを聞いていました。

ツムギはひとりで生きているんじゃないだろ!何で家のルールを守れないんだ!

守る必要ない!ツムギはひとりで生きて行けるもん!

平行線。
この一年、転校に始まって、留守番、買い物、家事など、今までに経験したことがないことを一気にやるようになっているため、もうすっかり、自分は一人前になったと思っている訳ですが、同じ歳の頃、入院していた母の代わりに、家族の食事を準備していた私からすれば、10分の1にも満たない自立レベル。
やれない歳じゃないんだから、やらせてみたらいいよ。

親の有り難みなんて、大人になるまで気づかないけれど、いかに自分が何もできていないかと言うことがわかれば、多少は口の利き方も改めるでしょう。

そんな風に思っていたら、夫もとうとう堪忍袋の緒が切れて、ひとりで生活する。と言う約束を取り付けてリビングに入って来ました。

住まいは出て行けと言う訳にはいかないから提供してやる。それ以外は自分ですべてやれ。食事も家にあるものは食べるな。自分の持っているお小遣いで賄え。

それでいい!そうするもん!

と、ツムギ合意の上なので、まあ、様子を見たらいい。と思いましたが、経験上、そんな約束守りっこないことはわかっていました。

それでも意地を張るツムギ。
意地を張るなら、限界まで言ったことをやり抜けばいいのに。

その夜、夫婦は夫婦で娘のことを巡って、気持ちが理解し合えず夜遅くまで話し合いをしている内に拗らせてしまったのですけれど、その間に夫には『早く寝れば』、その後私には『寝ないの』とメールを送って来た娘。
夜は根負けして寝てしまったようでしたけれど、朝には6時頃、誰も起きていないと踏んで、キッチンに食材を調達しにコッソリ現れるのでした。

そんな状況が2日続いて週末、その日は我が家では月に一度あるかないかの3人揃っての休日でした。
夫は自分で約束をしておきながら、想像以上に折れてこない娘の食生活を心配して、どうしようかと悩み始めていました。
ツムギの出方次第だな。と、大したゴールも決めずにやり始めてしまったものだから、ツムギに動きがない以上、こちらからできることが思い当たらないのです。私だったらこうする、ああする、と、いろんなやり方を示してみましたが、まあ、とにかく、この状況が続くのはよくない。今日決着をつけるよ。話をしてくる。と、娘の部屋に勇んで行きました。

40分経過。
何も状況は変わりません。
夫も、言いたいことはひと通り言ったかな?と思ったので、助け船を出すことにしました。
部屋の外から夫に目配せをすると、ああ、よろしく。と合図を送られたので。


ちょっとお邪魔するわね。
ツムギ、私も家の中でお互い口を効かないのは嫌だから、お父さんの話が終わったら、ツムギと仲直りをしようと思って順番待ちをしていたんだけど、話が長引きそうだから、割り込ませてもらうわ。

そうして、先日のことを、ツムギは私が怒っていると思っているかも知れないけれど、まったく怒っていなくて、寧ろ悲しかったんだと言うこと。そのことと、今の家の状況は別のことだけれど、お父さんの話を聞いて、確かに、ツムギがひとりで生きてるなんて思っているのは直した方がいいと思ったから、お父さんとツムギの約束に便乗したこと。だけど、家族が家の中で口を効かないと言うやり方は私の性に合っていないから、新しい方法を提案したいと言うこと。できるだけ、シンプルに穏やかに笑顔で、布団に包まる娘に語りかけました。

お父さんとの話から判断すると、ツムギはまだ納得していなくて、ひとりで好き勝手に生きたいと思っているんでしょう?だったら、それを続けたらいい。
ただ、それをやるために、挨拶もしなかったり、コソコソしたりする必要は何もないよね?
同じ家の中で、ツムギはツムギの生活、私たちは私たちの生活をすればいいよね?

うん。

だけど、ツムギは最初のお父さんとの約束を守っていないね?家にある食べ物には手を付けず、自分のお小遣いで生活するって言ったんじゃなかった?

言ってない!とツムギ。

言った!とお父さん。

まあ、いいわ。じゃあ、ツムギ、ツムギはどうしたいの?家にある食べ物は食べたいの?食べないでがんばるの?

カップ麺だけ食べる。

わかった。じゃあ、今まで食べた分のカップ麺以外、710円分はお小遣いから支払ってもらうね。

わかった。

はい、じゃあ、合意。
ツムギはどうぞご自由に。何か困ったことがあったら、コソコソせずに相談してね。


かくして、我が家のルームシェア生活が新たにスタートいたしました!

ああこれで、娘は少しでも気づいてくれるでしょうか。

ひとりでなんて生きられっこないことを。
いかにいろんなことをやってもらっているかを。
まだまだ自分には教わらなくてはいけないことがあることを。
お手伝いや協力やルールが必要と言うことを。
意地を張ることの馬鹿馬鹿しさを。

ようやくリビングに顔を出すようになった娘に、ついつい口を出してしまいそうな夫を制しながら、少々手荒い方法で、娘の成長を見守っていきたいと思います。

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