卒団
ツムギがサッカーチームで過ごした三年間は、そのまま、私たち母娘の歴史になりました。
まだコロナの渦中にあった2021年、学校で上級生が配っていた団員募集のチラシを見て、娘はサッカーをやりたいと言いました。
ステップファミリーとしてスタートしてから数ヶ月、娘は外に居場所が欲しかったのでしょう。
娘の居場所は、私にとっても心の拠り所となりました。
年を経る毎に仲良くなっていった母たち。
結束が固くなったのは、二学年上の子たちが卒団、一学年上の子は人数が少なく他のチームと合併するような形となり、実質、ツムギたち五年生がチームとしての最上級生に位置され、それに伴い、私たちが役員を一手に引き受けることになってからだと思います。
それぞれに仕事を持ちながら、こどものサッカーの世話をするのは大変だったけれど、こどもたちはみんな格別に可愛く、身体に鞭打ってグラウンドに行ってしまえば、嫌だと感じたことは一度もなく、十二分に楽しませてもらいました。
ツムギも、団員のこどもたちも、私にとっては同じ期間を過ごしている娘たち。
この子たちが、一番、こどもから大人へと成長していく姿を間近で見ることができたことは、本当に貴重な宝物です。
卒団式は、男子たちと合同。
その姿の幼いこと。
女子の方が成長が早いとは聞いていたけれど、こんなにも差があるのですね。
違いは外見だけでなく、卒団生のスピーチでは逆に、その純粋さに、涙を拭う場面も。
今年の六年生は、団発足以来の好成績で、みんな高みを目指してがんばってきたのだそうです。
話始めはおちゃらけていた男子が、急に顔全体を掌で覆い泣き出す様子からは、サッカーに対する真剣さの違いを思わずにはいられませんでした。
一方女子は、クスクスクスクス。
照れ隠しなのか、一生懸命さがカッコ悪いと感じるお年頃なのか、女子ってこんなもんよね、と、思ってしまえばそれも成長過程のひとつで今さらガッカリもしないのですけれど、泣く気満々でハンカチを握りしめていたのに、すっかり拍子抜けしてしまいました。
中学生になったら、絶対にサッカーはやらない!
何も、そんなに強く否定しなくとも。
ここにきて、グンと上手くなった姿を見ているだけに、残念でならないのですけれど、きっとツムギの意思は固いのでしょう。
ツムギのおかげで、新しい友達もできたし、楽しい経験もさせてもらったわ。
サッカーを続けてくれてありがとう。
謝恩会から帰った夜、ツムギに心からお礼を言いました。
母たちとの交流は、きっと続くでしょう。
私にとっては恐らく、最初で最後のママ友。
ママ友なんて煩わしいだけ、と思う方もあるでしょうし、実際、ツムギのクラスの親友の母とは交流を避けたいと感じるほど考え方が合わない人もいます。
それでも私は、ツムギを通して知り合ったこのサッカーチームのみんなが好きだったなぁと思います。
家庭での娘との関係にすっかり影響を受けてしまったけれど、そんなステップファミリーを温かく見守ってくれました。
卒業式に着るショートパンツのスーツに合わせて、どうしてもニーハイソックスが履きたいと言い張っていたツムギ。
また変なところで洒落っ気出して…と、私も半ば意地になって反対していたのですけれど、父に言われてハイソックスの丈で合わせてみたツムギの膝を見て、いつの間にこんなゴツい脚になっていたんだろうと驚きました。
「ツムギ、正直な感想を言うね。勝手にもっとスッとした綺麗な膝をしていると思ってた。今の全体のバランスからすると、ニーハイの方が似合いそうだね」
ツムギは怒るどころか、
「でしょ。サッカー少女の脚なんだよ」と恥ずかしそうに笑っていました。
三年間、ほぼ休まずに練習に行っていたんだもんね。
お疲れ様、ツムギ。
卒団おめでとう。
よくがんばったね。
母さん、誇らしいよ。
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