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林業経済学会とそば屋

相変わらず林業経済学のことを考えていて、一つ例えを思いついた。

私は林業経済学が色々なものの集合体であることに違和感があるのだが、分野内の人にはあまり理解してもらえない。分野内の人からしたら、林業経済学分野が色々なものを扱うことは、そば屋で親子丼や天丼が出てくることくらいのことなのかもしれない。そして、私は「”林業そば” はなぜそば屋なのに丼や定食を出すのだ!」といちゃもんをつけているように見られているのかもしれない。

ちょっと面白い思い付きだと思ったので、早速書いてみる。

「林業そば」の人気メニューはある時期までそばであった。その後、人々の嗜好が変化して、丼ものや定食、挙句は洋食やパスタも出すようになった。一方で、「林業そば」側も「うちは”林業そば”って名前の何でも屋だから!」といった感じで、新メニューを出すことに精いっぱいで、そばを出すことには興味を失っているように感じる。

多くの常連や従業員は、そのことに違和感を持っていないようだ。しかし私は思う。新メニューを推す路線を打ち出してから30年くらい経つが、「林業そば」の出す新メニューはなかなか定着しない。レシピが固まっていないようで、そばを中心に出していた時代にはたいていの従業員がそばを打ち、それぞれに各々のそばを食べ比べて、うちのほうがうまい、あんたのそばの味はここが足りない、などと腕を磨き合っていた。しかし、今は「林業そば」店舗ごとに看板料理が違い、そばを打てない店もある。お互いにそばを食べ比べて、論評しあう気風も薄れた。だいたい、今では、奇怪なメニューを出す店が増えてきた。

私(峰尾)は「林業そば」が大好きで、その店、メニューや味が将来にも続いていけばいいと思っている。また、「林業そば」一門会以外のグループにも出入りして、勉強させてもらった。
私たちの世代は人が少ないので、「林業そば」各店が出しているメニューすべてを維持できる見通しは立たないし、創業当時からの看板メニューである「林業そば」のレシピを知っている職人も減ってきた。私は、自分のそば屋「林業そば峰尾」の経営の傍ら「林業そば」の歴史を調べ、未来のあり方について再論するよう一門会に呼びかけたが、タイミングが悪かったようで一門会で反応してくれる人はまれであった。それどころか、一門会の歴史と展望について論文を書いて会誌に投稿したら、中傷を受けた。

ところが、「林業そば」一門会は、急に70周年記念事業として新メニューのコンテストを始めた。まずは「林業そば」の看板メニュー「林業そば」や、「林業そば」一門の経営方針の見直しから始めるべきだと思っているが、これまでの研究の成果を踏まえてそのことを一門会で提案したところ、「こっちは無料でやっているんだから」などと言われ、それに傷ついて私は一門会を退会した。

私は今でも「林業そば」が好きだ。そば屋で普通に出てくるメニュー、そばに使う具材や出汁を応用できて、そばとの間にシナジーがあるメニューを出すことに反対はしない。けれども、世相に迎合した奇想天外なメニューを出すのには違和感がある。
いや、別にいいのだ、ちゃんと説明ができて、私たちの世代が飲食店を継ぐ時代に「林業そば」がちゃんと続いていれば。私が大好きな看板メニュー「林業そば」が未来まで続いてくれれば。そうならないことが、心配でならない。そのために、「林業そば」は一門挙げて歴史を振り返り、将来を展望し、異分野の人に門を開いて、一門会を盛り上げる必要があると思う。

※写真はたまにお世話になる西陣ゑびやさんのメニュー。食べログさんからお借りしました。

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