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イングランド対フランスの激闘

序文

僕自身、2008年から、ずっと思っている事がある。
ペップ・グアルディオラが動くが如く、フットボールは動く」だ。
だって、本当にそうでしょう?
2008年ユーロはペップ・バルサをスペイン代表に移植して優勝。
2010年ワールカップはペップ・バルサをスペイン代表に移植して優勝。
2012年ユーロはペップ・バルサをスペイン代表に移植して優勝。
2014年ワールカップはペップ・バイエルンをドイツ代表に移植して優勝。
2016年ユーロもそのままドイツは3位。
2018年ワールカップはペップ・シティをイングランド代表に移植してベスト4。
2020年ユーロはイングランドは決勝をPKで負けて準優勝。
結果、ペップがリーグで活躍する国の代表が躍進して来た歴史がある。
理由は正しいフットボール感覚が選手も指導者も応援者も得られるから。

皆、サッカーには自分の正義がある。
自分のサッカーの価値観を人は捨てない。
他のサッカーを受け入れない。
ところがペップが圧倒的に合理的に成果を出せば、
そして試合中も常にボールを保持して内容を圧倒していれば、
「世界最高の監督はペップ・グアルディオラ」とあちこちで言われる。
そういう評価を得たペップ・グラルディオラのサッカーならば受け入れる。
皆、話を聞き、フットボールを学び、感覚を磨く。
選手はポゼッションの本当の意味を知ってプレーする。
実際にそういう事が起きていると思う。

ちなみに、まだ日本では起きていない事象だ。
リーグが活性化して、代表が強くなる。
何故ならクラブの綿密なサッカーを代表に移植出来る。
そして、それは日々ペップが錬成している。
つまり、今大会もイングランドが優勝候補なのだ。
実際には心の中で「イングランドが優勝候補」と本気で思っていた。
実際にはCBが足りないんだろう。
そして結果的に言えば、運が足らなかった。
運が良ければ、勝っていても間違いはなかった。

サッカーの試合。
特にビッグゲームのトーナメントは、
ちょっとした運や判定で歴史が変わる。

そして、その優勝候補のイングランドの決勝トーナメント。
1回戦はアフリカの雄のセネガル。
試合前にはディウプの話が出ていたね。
彼のゴールと勝利は驚いたね。
もう亡くなってしまったそう。残念だね。

そのセネガル戦は、
序盤から膠着状態の続く中、
ベリンガムが抜け出してヘンダーソンがゴール、
そしてカウンターから抜け出してゴールと、
後半はサカの追加点と、3対0の完勝。

そして臨むはベスト8の優勝候補筆頭のフランス。

それではイングランドを中心にマッチレビューして行きましょう。

開始

僕は試合開始直後に、こう呟いている。
いや、ただ、Twitterの投稿を埋め込みたかっただけ。
初めてやってみたけど、簡単やん。なんやねん。
凄いと思っていたのに。

普通に並べたらば

そして陣形は上記の様です。

つまりイングランドはスペイン式な2-3-2-3。
ウォーカーが中に入れるし、3バックにもなれる。
ここはペップに仕込まれているので、
ビルドアップの際に非常に有効な手立てになる。
ただし、ライス・ヘンダーソン・ベリンガムの並びは、
僕にとってはスキルが足りない。
ベルナルド・シウバ的な存在。
つまりイニエスタ的な存在がいないのが唯一の欠点の様に見えた。
ただし、イングランドは、このサッカーが今は主流。
ポゼッションを主体にゲームをコントロールする。
まさにペップのいるイングランドらしいという形。

フランスは彼等の代名詞の4-2-3-1。
エンバペとデンベレとグリーズマンと、
カウンターフットボールの具現者達を二列目に置き、
1トップにはそれを生み出す為に収められるジルー。
カウンター組織の地球代表を選んでも、
そのまま行けるというぐらいのピッタリの戦術。
まさにフランスの良さを活かしたスピーディーフットボール。

戦術・陣形は勿論、
後ろからじっくり繋ぐフットボールのイングランド、
低めのライン設定で少し引き込んでからのカウンターのフランスと、
まさに自分達の色を押し出した『らしい』戦い方だなと。

それ故に「イングランドはイングランドらしい。フランスはフランスらしい」
という発言をすることになりました。

経過

おそらく開始直後に、
イングランドのCBの前進を阻害する為に、
エンバペを前に出して2FWに変化したと思う。
ラビオが外もケアしつつ、グリーズマンがラインに並び、
4-4-2の並びになる様にも見えた。

ということで、イングランド。
試合開始は間違いなく2-3系のビルドアップだったけれど、
フランスの2FW対応を見て、3CBに変えたんだと思う。
ウォーカーを右CBに見立て、
ストーンズが真ん中のCB、
左のCBがマグワイアで、ACにライスのビルドアップ。

試合の進行はこんな感じ

保持はイングランド。しかし貫通力に欠けるイングランド。
じっくり待つフランスはカウンターはスピードで迫る展開。
基本的にこの展開。

ポゼッションに関しては、
試合前から取材に応えていたフィリップ・トルシエが
「フランスはポゼッションに関しては譲るだろう」と、
そう言っていたのですが、まさにその通りの展開。

イングランドはじっくり保持をするのですが、
フランスの守備のブロックもかなり固い。
ポグバも、カンテも、ベンゼマもいないのに、これ。

イングランドは若手は躍動するけれど、ベリンガムは若過ぎると思う。
フォーデンやサカもかなり若い。
「本当に全盛期なのか?」という疑問はある。

本当のことを言えば、
次回がイングランドの最盛期になるのではないかと思う。
ま、日本みたいに年齢で決まる文化じゃないからなぁ。

ちなみにイングランドは守備時は4-5-1の様相。
ケインを残し、残りは中盤のライン。
勿論、IHが前線に出て4-4-2の形にもなる。
それをする為にヘンダーソンを使っているのかなとも思う。

変化する前提で言えば「4-5-1」のブロックに、
僕自身は魅力を感じている。
68mを5人で守れんばそれぞれの感覚が狭い。
それを守備ラインに置くか、中盤のラインに置くか。
高い保持率を目指すならば、後者かと。
そして、相手が1FWを活かして、CBが前進して来るならば、
1人を押し出して、4-4-2になれば良いのかな、とも。

途中

実際には前半の内容は互角。
保持するイングランド。
ブロックからのカウンターを目指すフランス。
どちらも良さを出し、どちらも相手の良さを消した。

何に差があったかと言えばフランスのチュアメニの決定打だけ。
イングランドの対応が少しマズくて真ん中を空けた感じはあったけど、
そこから刺して来るかという距離から物凄いミドルを決めた。

お前、それ、決めるのかい。
カンテ、ポグバの代わりに出る重圧もあるだろうけれど、
こんな一撃を刺せるんならば、そりゃ、凄えってもんだぜ。

後半

後半に入り、イングランドは攻勢に出ます。
ギアを上げて、より踏み込んで行く展開。

後半の立ち上がりにイングランドはPKを獲得。
フランスのカウンターを止め、
逆襲を仕掛けた所でサカが仕掛けて、
チュアメニが足を引っ掛けました。

ズドンと左上にきっちりと決めたハリー・ケイン。
代表通算ゴールを歴代最多のルーニーに並ぶ。
代表通算53ゴールだって。凄いなぁ。本当に。

観ていた側からすれば、
これで流れはイングランドかなと思ったけれど、
そうはさせないのも流石にフランス。

直後に、ロングパス一本でチャンスメイク。
ラビオのミドルシュートでイングランドを脅かします。

そして、後半も始まって、そこそこの辺り。
この試合、最も印象的な場面が訪れます。
個人的にはこの試合、最大のハイライト。
自陣の左サイドでボールを受けるエンバペ。
マッチアップするウォーカー。
僕自身、今季のマンチェスター・シティをずっと追い掛けていますが、
とにかくサイドでこのウォーカーの対人が速くて強い。
カウンターを受けても、ウォーカーが何とかしちゃう。
誰かにスピードでぶっちぎられることも無ければ、
誰かにフィジカルで吹っ飛ばされる事も無い。
やられるとしたらスキルやタイミングやグループワークという男。
このウォーカーに対して、エンバペはドリブルで縦突破を狙います。
フェイントを入れながら、スピードで勝負!!
同体で身体を合わせたヨーイドンで、まさかのエンバペが抜け出します。
そこから入れたクロスは中で合わずに得点には繋がりません!
しかし、あのウォーカーがスピードで千切られるとは。
超一級品対超一級品の対決。高速対神速。
それでもキリアン・エンバペが1枚上手。

恐らくマッチアップした選手がカイル・ウォーカーで無ければ、
エンバペはもっと中に切り込んで、得点に繋げたかも知れません。
このワンシーンだけでも、彼が世界最高の評価を受ける理由が分かります。
そういう意味では、ウォーカーもよく着いて行きました。

近年ではSBは最も進化したポジションで、
様々な味付けがされて、
ウイング然として振る舞うこと、
ボランチ然として振る舞うこと、
インサイドハーフとして振る舞うこと、
あるいは仲間のスペースを作る為に裏抜けする役割など、
とにかくタスクも増えていて、
役割は大きく変わっていますが、
「大外をスピードで守り切る」という点は、
今だに変わっていない気がします。
この適性はあったまま、次の要素で上記の物が存在するのかと。

終盤

互角の展開は今だに変わらず。
双方の足が少し止まり、中盤はお互いにオープンに。
しかし、その分、どちらもゴール前にじっくりと構え、
膠着状態が長く続きます。

セットプレーからマグワイアのヘディングでチャンスを見せました。
彼の武器はこれでしょうか。
批判に晒される状態は多いのですが。

イングランドにチャンスがあれば、
フランスにチャンスがある。

そして、いよいよ終盤。
フランスの時間帯がやって来て、攻撃。
耐えるイングランド。

グリーズマンから中へクロス。
ヘディングを合わせたのはオリビエ・ジルー。

その失点後、イングランドはメンバーを交代。
サカとヘンダーソンに代えて、マウントとスターリングを投入。

そこで交代直後のスターリングから、
交代直後のマウントへ裏抜けのボール。
マウントが倒されて、VARが入ってPK獲得。

するとマウントはまだ不満顔。
「倒したエルナンデスにカードを出せ」とのこと。
結局はカードは提示されたのですが、
余りにもアピールが過ぎたかと。
勝利の女神様は微笑むのかどうか。

そして、PKのキックは・・・
ハリー・ケインがつんのめった形になってPKを失敗。

VARは勿論、審判への抗議も含めて、
キックまでに時間が掛かり過ぎたのが、
影響したのかなと思えなくもないというか。

いずれにせよ、イングランドは同点に追い付くチャンスを逸脱。
そしてラッシュフォードも投入し、追い掛けるイングランド。

ロスタイムは8分の提示で。
まだまだ時間はある中でイングランドはやや雑な攻撃が目立つ。
勿論、パワープレーなので仕方がないのですが、
配球がどうにも甘い。フランスも堅牢に対応する。
大きなチャンスを生み出せず。
PK失敗で精神的に追い込まれたのも痛い所か。
全力で追い掛けて、パワーを出しますが、上手く機能せず。
最終盤のフリーキックをラッシュフォードが外して、試合終了。

優勝候補同士の対決は、フランスに軍配。
大きなチャンスは生み出せず。

決着

イングランドがフランスに勝てたかと言えば、
勝つ実力は十分にあったと思う。

試合展開はフランスが先手を取った為に、
スタッツもイングランドが優勢に感じるものだった。

チームスタッツはこんな感じ

それでも審判へのアピールも含めて、
フランスの方が大人の雰囲気があった。
貫禄というのかな。

とは言え、ハリー・ケインがゴールを決めていれば、
普通に勝つ展開もあり得たと思う。

今回はたまたまフランスが勝ったということ。
どちらが上で、どちらが正しく、どちらが良いという訳ではない。
今回はたまたまフランスが勝ったということ。

それでもイングランドは、
以前のキック&ラッシュから脱却し、
見違えるほど魅力的なフットボールをする国になった。

そして、サカ・フォーデン・ベリンガムに象徴される様に、
まだまだ超若手過ぎるのも甘さに繋がっただろう。

そして、プレミアリーグは今が全盛期。
イングランドに多大な影響を与え、
イングランド自体が強くなるのは、
まだまだ先の話の気がしてならない。

魅惑のポゼッションフットボールに、
圧倒的な個の質を更に追求して行って欲しい。
これかもイングランドの躍進を楽しみにしています!!

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