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オンライン茶会に参加してみた ~茶空会~

オンライン茶会に初めて参加してみました。茶席 x バーチャル空間の試みです。今回は重陽の節句をタイトルに、催されました。お菓子は半田松華堂、お茶は山政小山園・小倉山。画面の向こうの床はニコライバーグマンの創作、茶碗は・・・メモ忘れました。泉田之也さんの水指がとても素敵でした。オンラインで会記が出るといいですね^^

1.茶空会(さくえ)とは

世界茶会の岡田宗凱先生が主催するオンライン茶会。

2.きっかけ

厚木・滴月庵の大日本茶道学会・大竹鶴仙先生が声かけしてくださり参加することにしました。大竹先生は気さくでオープンでゆるふわで(規律が無いという意味ではなく)、大好きな先生です。大竹先生とは他流派交流会で出会ったご縁です。

3.実際に参加してみて

 今回参加したのは、お菓子・抹茶が事前に送られてきて、質疑応答が可能なコース¥4,500-でした。視聴のみは¥1,500-でした。他にもVRコースが有りました。
 まず大前提として、face to face、実(じつ)、場、気、というものを基軸としてきた、in situとしての"茶会"をオンライン化してみる、という試み自体に敬意を表します。その上での所感を述べます。基本的なスタンスは、"金額によってはオンライン茶会はアリかも"です。
(1)オンラインのメリット
生まれて初めてのオンライン茶会でしたが、このメリットに感激しました
・どこに居ても参加できる(移動時間を節約できる)
 いま滋賀の彦根と言う田舎に住んでいる事も有り、都会に出なくても良いと言うメリットは非常に大きいです。これは田舎の人ほど享受できると思います。時間も、交通費も節約できます。
・普段着で良い(白足袋持っていかなくて良い)
 茶席と言うとちょっとかしこまった格好をしたり、白足袋を持って言って履き替えたり、などちょっとした準備が必要なのですが、その辺りが不要、と言うのは楽に感じます。
・そしてもちろんコロナ
 言うまでもなく、誰とも濃厚接触せずにお茶席を体験できるということは昨今とても価値のあることです。完全にノーリスクです。

一方で課題も感じました・・・

(2)オンライン独特の課題(主催側)
a)画面のコントラストがわからない
  これはある意味で人間の目が逆に凄いということを再認識する出来事でもありました。人間の目は、今見えている景色の中で明るいものは暗く、暗いものは明るく補正することができます。いや、目というよりもその情報を処理する脳のフォトショ効果と言った方が性格でしょう。 逆光の景色をカメラで撮るとひどい絵面になるけれど実際に目で見ると結構風景がわかる、というのがいい例です。
 今回、オンライン茶会ということで一旦カメラを通して茶室を拝見したわけですが、黒と黒のコントラストが非常にわかりにくく”つぶれて”見えました。これは画面を通してみている限り、永久に解決しないことだと思います。しかしコントラストをわからせるために道具の取り合わせを極彩色にする、というようなことではいけないと思います。”微かな”感じを嗅ぎとる、という感性を磨くのは21世紀初頭の今般ではやはりin situに限られるのだと思いました。

b)場の香りがわからない
きっと焚いていたであろう香や、床の花の香りがわからない。これも前述の通り、今の技術ではリモートで再現できないことです。お茶は全身の感覚を研ぎ澄ませて感じ取るものですから、フィルターされた資格・聴覚だけで席を感じることは不可能と言って過言では有りません。いつの日にか、人間が脳に感覚を流し込む日が来たら、茶席を完全に脳内再生することができるでしょう。あるいは、脳に感覚を流し込むような未来では、人間は現実世界で生きている必要すら無いのかもしれません。

c)横の繋がりが無い
 茶席では、横に座った客同士の繋がりも一つの醍醐味で有ります。それは大寄せでも同じことで有りますが、着物や根付だったり、模様の入った懐紙であったり、そう言ったアイテムを手がかりに話が弾む、というのも楽しみの一つです。オンラインでは、そうした”とっかかり”が無いというのに一抹の寂しさを感じました。足を運ばなくていい、というメリットの裏には足を運ばないことのデメリットが表裏一体で結合されているということを再認識した次第です。
 これはもしかしたら、同じ日のVR茶席では違ったかもしれません。より少人数ではよりコアな会話が成り立つだろう、ということは容易に想像がつきます。主客・客客の繋がりを解決できそうな方法を思いついたので記しておきます。
①参加者全員がモニターを大量に用意し、マルチスクリーンで各個人を写す
②広角カメラで全身が映るようにする
うーん、コスト次第と言ったところでしょうか。


(3)オンライン独特の課題(参加者側)
 これはもう完全に私の課題ではありますが、勉強モード、もてなされモードを意識して参加する必要があるなと。オンラインのせいにしている場合ではありません。オンラインでのもてなし方、教え方。オンラインでのもてなされ方、学び方。これをすぐにでも身に付けたいものです。今現状では聴覚・視覚でしか伝えられないぶん、全ての感覚をそこだけに注ぎこめるような工夫が要ると思います。では具体的に何か、というところは・・・おそらくセンサーの使い方に帰結するのでは無いかと考えます。例えば、松風に耳をすます、という時にはリアルでは松風が聞こえてくるけれどオンラインではノイズで全く聞こえてこないのです。それを、釜の近くにマイクを仕込んでおいて、そこのゲインを上げる、と言った工夫が考えられます。視覚(カメラ)も同様です。茶器をとる時には茶器を、水を汲む時には水指をクローズアップしてフォーカスする。まぁ、言うは易し行うは難しですね。モノの費用も工数もかかります。

(4)進行の課題
 今回、お菓子と二服ぶんの抹茶が事前に送られてくるコースを申し込みました。お茶を点てるタイミングを指示して頂いた方がいいのかな、と思いました。正客役(兼司会)の方が現場でお菓子を食べているタイミングで私自身のお茶の準備をはじめましたが、そこで夢中になってしまい、岡田先生の手前を見逃してしまいました(^^;; いや茶道を習っていてこの顛末では本当に学習意欲が低い、と言われればそれまでなのですが。
 その点では、点前が見たい人(私)向けの茶席は、普段の茶席通りの進行とは変えた方がいいのかもしれません。つまり、全ての点前が終わってから、「モニターの向こうのお客様、自服ください」と促すというタイムラインです。自分がやるときも、この点は工夫してみようと思います。

4.まとめ

 オンライン茶会に参加して、多くの気づきを得られました。それはほとんど、"むしろリアル茶会ってありがたいな"と言う気づきでした。そしてオンライン"勉強会"なら積極的に参加したいなとも思いました。
 しかし改めて、茶室をバーチャル空間へ拡張する、と言う令和の試みに敬意を表します。いつの時代も、挑戦には課題がつきもので有り、それを克服することで伝統になっていくものだと確信しています。 おそらく、22世紀(人間の感覚が接続*される日)まで、virtualがin situ を超えることは無いけれど、それぞれ別モノとしてその長所を活かせば良いと思います。
  *攻殻機動隊、マトリックス、AC3 (エースコンバット3 )エレクトロスフィア、inception、etc...

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