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"エシカルは完璧でなくていい"に救われた

 エシカルな取り組みをされている沼田暁さんと12年ぶりに話して救われた話です。エシカル(ethical)ってなんぞや、は専門サイトに譲りますが、そこでの定義を引用します。

一般的には、「法的な縛りはないけれども、多くの人たちが正しいと思うことで、人間が本来持つ良心から発生した社会的な規範」であると言えます。-エシカル協会HPより-

沼田さんとは学生時代に知り合ってから、おそらく丸12年はご無沙汰していたわけですが、素敵な活動をされているなぁと遠目で読みながらSNSでは繋がっている、という状態でした。そんな沼田さんとClubhouseで会話している中で、自分の中の苦悩、言行不一致に対する葛藤を吹っ飛ばしてもらったというお話です。

1. 製造業エンジニアとしてエシカルな取り組みを始めた 

僕は製造業、その中でもCO2排出量が全産業平均の7倍という業界でエンジニアをしています。その会社で、サステナブルマニュファクチャリング、と言う活動をしています。生産工程におけるエネルギー投入回数を減らすことで、エネルギー消費量、CO2排出量を減らそうという取り組みです。なんだ省エネの話かと言われれば、まあそうなのですが、エコ→SDGs→エシカルという時代を経るごとの切り口の変遷は取り組みの出口を左右するものでもあるから、念頭に置くべきでしょう。

2. ところが私生活はエシカルに逆行している?

 ここまでで読者の皆さんは「はぁ意識の高い奴だ、さぞかしエシカルな生活を常日頃からしてるんでしょうね」と思ったかもしれません。ところがその実を言えば、常日頃からCO2排出削減のために頭の天辺から爪の先まで努力しているかというとそんなことは無いし、むしろ逆行していることだってやっているのです。

3.正直に言います。酒と車です。

 そう、なにかと言えば酒飲みとスポーツカーです。ウイスキーは200本持っているし、大排気量NAのスポーツカーで踏み込む。酒は生活必需品では無い上に、世の中の全てのプロダクト同様に製造工程で二酸化炭素を排出します。さらに言えばモルトウイスキーは蒸留であって2回の蒸留工程を減るので、加熱にエネルギーを食います。ウイスキーの上流に通常はガス、古風な所は石炭を使います。電気釜もあるのかもしれませんが、今のところ聞いたことがありません。もちろん、酒造業を批判するつもりは全く無いですし、本当にお世話になっている方々ばかりです。もう一つの趣味であるスポーツカーは、排気量は大きい上に自然吸気(Natural Aspiration)なので燃費が悪いのです。一昔と違って今やターボ(過給)はエンジン重量を抑えて酸素供給量を増やせる燃費技術となりました。そんなご時世なのに、スポーツカー好きにはわかると思いますが、やっぱりNAの透き通った排気音がたまらないのです。

4. 口では正義、裏では悪事(?)という葛藤

 端的に言えば言行不一致。サステナブルのためにと言いつつ趣味ではやりたい放題という自分に、当然ながら矛盾を感じるわけです。このもどかしさはいつまで抱えるのだろうか。そんな漠然とした不安がなんとなくエシカルの取り組みに爆進できないブレーキになっているような気がしていました。もちろん酒を飲みスポーツカーに乗ることを悪事というと、ちょっとタイトルを盛りすぎだし、それらを作っている方々に大変失礼です。生命を維持する上で最低限必要なもの以上のもの、という点において若干の後ろめたさを感じていたのです。それを言い始めると、明日食べるご飯が無い方々がいるのにけしからん、という原理主義に繋がるのですが。一方で、健康的で文化的な最低限の生活を保証する我が国の憲法に則れば、最低限かどうかは別として文化的な生活はしても問題が無いわけです。ただそれをエクスキューズにしていいのか、いや、いや、以下∞ループ。

5. "エシカルは完璧じゃなくていい"に救われた

 そんな葛藤を抱えながら、学生時代に知り合った沼田暁さんと12年ぶりにClubhouseでトークをしました。元々エシカルウェディングをされたりエシカルな取り組みを多々取り組んでいらっしゃった沼田さんが登壇されていたのでルームに参加。スピーカーに上げていただいたので、思い切って話してみました。エシカルは完璧じゃなくていいんだよ、できるところからでいいんだよ、という言葉に、心につっかえた何かを取り除いてもらったような気がしました。 もうお一人、スリランカ発のフィットネスブランドkelluna.を立ち上げられた前川裕奈さんにも勇気を頂きました。途上国での雇用を生み出すスタートアップをされている方なので、厳しいお言葉を頂くかもと思っていましたが・・・

私お肉大好きなんです

と。今や肉は贅沢品、CO2排出源、水資源の無駄遣いなどと強烈に批判されることもある食べ物。それを溌剌とした明るい声でお肉大好きと。ああ、それでいいんだ、と解放されたような気持ちになりました。

6.  エシカルはやれることから、ちょっとずつ

 おそらく、”エシカル”は、それをやっていない人を批判するためのワードではないのだと思います。だから、やれていないことを苦悩するのではなくちょっとでもやれていることを誇っていいのかなと思い至りました。やれることから、ちょっとずつ。また一歩前進しようと心に決めた夜でした。

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