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パチンコ遠隔操作の実態調査で・・・

確かに噂はあった。
現在もやたらとハマった時に悪態をつくように「店の陰謀だな」とか「若い女だけ当たるようにしてんだよきっと」とか、冗談半分に言うこともあるだろう。

そう言いつつも「いくらなんでもそんな事があるわけがない」と思っていたし、皆もそう思っていたはず。


そのまさかが実際に起ってしまった。
発覚してしまったのだ。本当に遠隔操作をしていたことが。

1993年頃、札幌市豊平区内にあったU店・・・いや、もう伏せ字にする必要もないか。
パチンコUSA月寒店においてパチンコ台の遠隔操作が初めて発覚し摘発された。

業界内やパチンコファンの間で激震が走った。

まさかそんな!冗談だろ?と。
いつも疑いをかけつつも、本当にそんなことをやってはおしまいだってことはみんながわかってるから、絶対にあるワケがないと思っていた。
宝くじで実際に1等を当てた人になかなか会えないというのをいいことに、当たりくじなしの宝くじを売り続けていたようなもの。
そして身内にだけ1等くじを与えて賞金を懐に入れていたようなものだ。

事がバレた日には全てが終わる。
今まで負けて失った金は運の悪さではなく、詐欺で巻き上げられていたんだと知った客によって、全てのパチンコ店で暴動が起きてもおかしくはない。

そんなはずはない。あってたまるか。
だからこそ客達は悪態をつけたんだ。
「ダメだ。今日は店長機嫌悪いな」とか「お前今日はミニスカートだから出たんだぞ」と冗談言えた。

それが起きてしまった。
唖然ボーゼン。
俺達は当たりのないくじを買わされていた。

パチンコUSA月寒店はこうして消えた。

この激震のニュースがあった後、業界全体的に一瞬客は飛んだものの、それこそそれは一瞬で、逆に今営業している店は健全だろうと客は戻っていった。
もし遠隔操作をやっていた店があったとしても今はすぐに戻していたはずだ。
そしてなぜだか皆確率通りに当たるので「まともな台を打つとまともに出るんだなぁ」なんて呑気なことを言っていたのを覚えている。(俺を含め)馬鹿な奴らだ。


さて噂の渦中であるUSAが閉店になった数カ月後、なんと店は復活した。
別の店名になって再開したはず。何せ昔のことでこの辺の記憶は曖昧。

店の前を通って中の様子を見たが、客は全く入っていない様子。文字通りゼロ。
当然だ。誰が金を落とすものか。
むしろ今まで使った金返せと言われてもしょうがないくらいの話なのだ。
ざまあみろと店の前を通り過ぎながら悪態をついていたけれども、ふと閃く。

今なら釘開いてるんじゃないか?
もし遠隔操作が続いてたとしても、客が俺一人なら俺の台を出すしかないんじゃないか?と。

下手にハマればまた遠隔操作の噂が飛ぶ。
ならば誰かを出さざるを得ない。
その誰かに俺がなってやろう。

もし出なけりゃ出ないで終わるなら、ついでにパチンコ必勝ガイドの記事のネタとして投稿でもしてやろう(笑)
遠隔操作してた店で打った奴の記事なんて今までいないんだから面白いだろう(摘発第一号だったため)

そうして1993年7月12日、店に向かった。
こんなに昔のことなのに詳しい日時をなぜ記憶しているのかは後ほどわかる。

客は本当に俺一人。
入店するなり少し小太りの、恐らく店長と思われる人物がこちらを不安そうに見ていた。
心を入れ替えたんです!信じて下さい!という目なのか、誰からも信頼されることなく冷たい視線を浴びせられるのを恐れている目なのかは、今となってはわからない。それとも単に客が来た!と驚いていたのか?
ただただ寂しげな視線だったことだけは覚えている。
もしかすると遠隔操作とは全く関係のない人がここに飛ばされてきたのか・・・?

そう考えると少し気の毒な気持ちにもなった。
いやいや!いけないいけない!情に流されてはいけない。
これは金を賭けた勝負なのだ。ボランティアではない。
そもそも奴らは不当に奪い続けていたのだ。

打つ台は決まっている。今日は釘なんか見ない。
入り口から入ってすぐの角台。フィーバーキング。
ここが外から一番見える位置だ。今この店が出すならこの台しかない。
閉店までこの台と心中してやる。

さあ遠隔操作をしてるなら出すなら出せ。
そう思いながら玉を打ち出すと・・・

びっくりするほど回らない(笑)

何これ?
もしかしてこの店って遠隔操作発覚で客が飛んだんじゃなく、回らなくて客飛んだの?(笑)
最初に借りた玉はなんと一回転もさせることなく台の中に消えて無くなった。
これはあんまりだ。

でもこの台と心中すると最初に決めた限りは約束を守らねばならない。
結局最初の1000円で10回転もしなかったと思う。
ただでさえ静かな店内にパチンコ玉がガラスに当たる音だけが響く。
たまにスタートチャッカーに玉が入ると台が発する音楽にびっくりして「しーっ!」と言いたくなってくる。
静かなエレベーターの中でオナラをしてしまったような気分。

気の毒そうな視線をこちらに送る店長。
馬鹿野郎!お前のせいだろうが!
怒りに震えながら財布から金を出し、またハンドルを握る。
そしてぼーっと盤面を見ているとあることに気がついた。

スタートチャッカーに入ってる玉は全て、盤面の右側に跳ねていった玉だったのだ。

天釘で跳ねて右側に行った玉は、10発中2~3発ほど盤面中央のレールの上に流れ、そのコースでレールの上に乗った玉は十中八九の確率でヘソに収まる。

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そんなバカなと思いつつ、半信半疑でハンドルを右にひねった。
するとどうだろう。

徐々に玉が増え始めたではないか!

クセがいいってレベルじゃない。
もちろん寄り釘が完璧なわけでもないから、なかなかレールに乗らずに玉が減る場合もある。
それでもヘソの真上の右側のレールにさえ乗れば、まず間違いなく1回転して7発戻ってくる。

試しに1000円このまま打って何回転するか数えてやろうとした結果、なんと350回転近く回ってしまった。
一時的に小箱が一箱満タン近くまで増えたこともあったくらい。

4000発定量、1000円で連続開放であったため、ボーダーラインは1000円30回転以上して計算上はトントンというところだけれど、本当に遠隔操作をしていないならば勝利確定と言っていい。

しかし当たらない。
上に書いたとおり、350回転以上回してもまだ当たらなかったが、このくらいは誤差の範囲。遠隔操作を疑うにはまだ早い。
何しろこっちはまだ2000円しか使っていないのだ。
いくらでもドンと来い!

それから程なくしてついに待望の大当たりがきた。
程なくと言っても600回転あたりであっただろうか?
当然ながら追加金は1000円も使っていない。

単発だったか連チャンしたのかは覚えていないが、なんとか一度目の定量打ち止めを迎えた。
この時点ですでに勝利ほぼ確定。
もちろん1000円を支払い連続開放だ。


そのまま5~6回ほど打ち止めにしただろうか?
故にもう2万発以上は出ているということだ。ハマっても玉を減らすこともなく。
一人ドル箱の山を築き、少しずつ閉店の時間が近づいてきた。午後10時過ぎ。
店長も心なしかホッとした様子でドル箱を積み上げながら、何やら話しかけてきた。
そんな店長に「客・・戻ればいいな」と声を掛けると、照れたような苦笑いをしながら去っていった。

その時であった。
盤面のレールに乗った玉が左右に揺れ始め、落ちてこなくなったのだ。
いや揺れているのはレールの上の玉だけじゃない。何かおかしい。

気がついた時には積んだドル箱、そして店全体が揺れていた!
7月12日午後10時17分12秒、北海道南西沖地震、通称「奥尻島地震」である。

ハンドルを握り右打ちをしながら「うおっ!」と叫びつつ、5段に重ねた大箱のドル箱を必死になって片手で抑えていた。
大慌てで様子を見に来た店長。なにせ客は俺一人。 

「大丈夫ですか?!」
「なんとか大丈夫そうだよ。玉入らないけど」
「ハンドルから手を離せばいいのに(笑)」
「ハハハ・・・」

こんな呑気なやり取りをしてる間に、あんな津波が来ていたなんて・・・

地震の揺れも収まり、最後に出して打ち止めになったところで終了。
連続開放で使ったお金を差し引いても3~4万近く浮いたと思う。
それより何より、かなりカチカチの釘でも右打ちするだけで回ってしまう台を見つけてしまったのだ。

毎日は流石にまずいかな?
3日に一度・・・いや週に一度だけお金を貰いに行こうか。
そんな事を考えながら、パチンコ必勝ガイドの方へ送る記事ネタを書いていた。
客の入りのこと、右打ちのこと、きちんと出たこと、そして地震のこと・・・

その記事が載るにしろ載らないにしろ、どうせその頃にはあの台も撤去されているだろう。
それまで短い付き合いになるが、よろしく頼むぞフィーバーキングの角台。

・・・と思いきや、後日行った時にはもうコテンパンに釘を閉められてしまっていた。カッチカチどころじゃない。
ただでさえ狭かったヘソが毎回玉が挟まるくらい閉められ、盤面右側の釘ももう滅茶苦茶。
それでも千円で20回転以上回ったのはもう奇跡と言える。打たないけれど。
で、結局すぐに外されてしまった。残念。


それからしばらく経った後、店はあっさりと潰れてしまった。
その後はスーパーとなり、店には皮肉にも違う形で客足は戻った。

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この店のお惣菜を売っていた辺りだろうか?
俺が揺れるドル箱を抑えながらハンドルを握っていたのは。



そんな店すらも建物の権利の関係かなにかで今はなくなってしまった。(現在は更に違うスーパーが建った)

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二十数年の間に何もかも消えた。
今ではあれが夢だったんじゃないかと思うこともある。

でも机の中にしまってある、パチンコ必勝ガイドから届いた謝礼金が入ってた封筒を見るたびに、確かにそれはそこにあったんだと思い出すんだ。



ちなみにこの事件の後も遠隔操作などのパチンコ店の不正は何度も発生・発覚している。
怪しいと思ったらスパッと止めといた方が身のため。
ギャンブルは絶対に相手を信じないことがコツ。

あと「USA月寒店 遠隔操作」等で検索すると出てくる記事に、2003年に遠隔操作の不正で摘発といったような記事が出てくるけど、それは間違ってると100%断言できる。申し訳ないけども。
あの地震は忘れないよ、流石に。


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