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競馬新聞の予想通りに買うとどうなるのか?

高校生の頃からすでにパチプロに足を半分ほどツッコんでいた俺。
知らない街で遊びでパチンコを打つのは好きだったが、仕事として打つパチンコはすでに嫌いになり始めていた。


同じ店に通い、釘だけではなく台のクセやバネの状態まで記憶して、いつもと変わらない台を打つ。
これが何気にきつい。
はじめのうちは増えた減ったで一喜一憂もあったが、毎度毎度同じ台を打っているとそれも段々と希薄になってゆく。

こうなると結局は遊びでもギャンブルでもなくただの仕事。単純作業。

昔ビートたけしが漫才ブームの時を振り返り「舞台の袖から出てキャーキャー騒がれて、いくつかあるネタから適当に選んでまた同じことを喋って、いつもと同じように客が笑って次の舞台に向かう。ただその繰り返しだったなぁ」みたいなことを言っていた。

はじめの頃はそれこそ客を笑わせて楽しませようと必死だったと思うし、考えた新しいネタが受けた時には大喜びで充実感もあっただろう。
それがいつしか当たり前になり、単純に繰り返される日々となってしまうと客との勝負ではなく作業となってしまう。

その時の俺はまさにこの状態。
遊びは良いが仕事は駄目。
自分勝手で根性なしだが嫌なものは嫌。
そのまま妙なパチンコ嫌いのままパチプロになっていくんだけれども・・・。

それはともかく。
それでも頑張って同じ店に行って稼いでいたのは週末の競馬のため。
競馬で遊べるならパチンコだってなんだってする。
言ってることと生き方が最低なのはわかってる。が、それでもやめられない。


でも競馬が遊びと言っても金をただ投げつけたいわけではない。
当然俺だって競馬で稼ぎたいのだ。
稼いだ金ですすきのでパーッと酒を飲みたい。

そのためにどれだけ努力をしたことか。
ある時は競馬に関する本を大量に読み、ある時は膨大なデータを競馬予想ソフトに打ち込んでみたり、やけくそで占いで決めてみたりもした。

そして高校生なのにたった一年で100万も負けた(笑)

借金なんかはしていない。
全部バイト代をパチンコで増やした金だ。

ハハハ。もう笑っちゃうほど才能ねーな。
徹夜してまで検討して買ってたんだぜ?(笑)

そして俺は一つの結論にたどり着く。


やっぱり予想はプロに任せよう。


もう丸投げよ(笑)
競馬新聞に載ってるだろう?予想が。
全レースあのまま買ってやれ!と。

だってこの人達プロなんだぜ?
何年も何十年も競馬に携わった人間達が導き出してんだ。
俺なんかが予想するよりずっと良いはずだ。
ここは恥を忍んで全てをお任せしてみよう。


とある日、流石に本当にそのままいきなり金を使うのは怖いから、馬券を買わずに「もしその予想通りに100円ずつ買っていたらどうなるか?」を検証してみた。
するとどうだろう。配当金が掛け金の2倍以上になっていたのだ!

1レースに付き大体予想が3つで計12レース。掛け金の合計3600円。
他の地方の競馬も入れれば24~36レースほど。
確かその時は24レースで検証して掛け金の7200円が15000円以上になっていたと記憶する。

もし1万円ずつ賭けていたなら、78万円勝ちだったのだ!

マジかこれ。
なんだ。予想通りに全部買えば儲かるんじゃん!
大穴の予想は滅多に無いから大きくは当たらないけれど、ほぼ確実に儲かる。
レース数が増えれば増えるほど勝率も上がるはず。こんな単純な方法でまさか・・・。

翌週、実際に買ってみた。
それでもまだ怖いので、検証がてら100円ずつ。計24レース分約8000円(予想が4つのものもあるため。因みに馬単や3連単などはまだない時代。馬連すらなかった)

場外馬券場で馬券を買ってから遊びに行った。
レースは見なくていい。結果はまとめてあとのお楽しみだ。
その日はそのまま家に帰った。前祝いでベロベロに酔っ払ったためだ(笑)

何日か後にパチンコついでに場外馬券場に寄り、ドキドキしながら払い戻し機に全ての馬券を突っ込んだ。
いったいいくらになるのか?
びっくりするような馬券が当たっていたらどうしよう?


忘れもしない。払い戻し額計9600円也。


う、うん・・・あれ?
まあ確かに儲かった。
でもなんか違う気がする(笑)

これなら最初に検証した時に賭けときゃ良かったなーとか、その時1000円ずつ賭けてりゃ8万くらい儲かってたなーとかそりゃ考えちゃうよ。
だが損はしなかった。それはすごい。


まあ賭ける金額が少なかったもんな。
今回も千円ずつ賭けてりゃこれでも16000円儲かっていたわけだし、1万ずつ賭けてりゃ16万円の儲け、10万ずつなら160万円じゃないか。
いやすごいすごい。

じゃあ次はドンと行ってみるか!500円ずつ。

次のレース開催日、合計約4万円弱の金を賭けた。
恐らく前回の配当金はきっと最低レベルだったはず。
最初の検証のように2倍になれば4万儲け、最低レベルでも8000円儲けだ。

そうしてお金を徐々に増やし、掛け金も徐々に上げていけば大金持ち待ったなし!

馬券の束をポケットにしまい、場外馬券場を後にする。
前祝いにカツカレーでも食べようと地下街の店で食べた記憶がある。
パチンコ屋をウロウロ、ゲームセンターでウロウロとしながら時間を潰し、すすきのの夜の店が開くのを待っていた。

馬券を交換したらすぐに行くから待っていろよ。

夕方になり全てのレースが終わる。
心の中でスキップをしながらエスカレーターへ飛び乗る。
床に散らばるハズレ馬券を掃除する清掃員を横目に払い戻し機へ。
余裕の表情で馬券の束を放り込む俺。この瞬間が最高だ。

そして払い戻し機が驚きの金額を叩き出す!!!



3200円



は?

言葉を失うとはこのこと。ア然ボー然。
機械から取り出した金を持つ手が震える。

何を楽しむこともなく、三万数千円が消えてしまった。

世はバブル景気だというのに時給450円で働いていた高校生には酷い仕打ちだ(笑)
残った3000円を財布に押し込んで、夢遊病者のようにいつもの仕事場であるパチンコ屋に向かった。

少しでもダメージを減らさなければならない。
来週また勝負するために。

が、しかし。
そんな日に限って運も悪く、残った金も全部吸い込まれた。

そうして俺は競馬をやめた。


その後マークシート方式での馬券購入が可能になり、適当に塗りつぶして遊びで買った馬券が30万円になる。
でも全く嬉しい気持ちは湧かなかった。
今までの努力を全否定されてしまったような気がしたのだ。

おかげで遊びでも馬券を買うことはなくなった。
競馬は好きだけれど、賭けるのはもういい。
きっぱりと辞める決心がついた。
真面目に働き、そこそこの給料をもらって平凡に暮らそう。


これがパチプロになる6年前の話。
今からは30年以上も前の話だ。



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