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【イベントメモ】SIerだからこそDevRel活動をしよう〜DevRel/Japan CONFERENCE 2022から

2022年8月5日(金)〜6(土)にDevRel/Japan CONFERENCE 2022がオンライン/オフライン並行で開催されました。昨年もコミュニティやマーケティングに関する多くの知見をを与えていただいたこのイベント。今年もまた個人的に気になったセッションについて紹介してみたいと思います。

DevRelとは?

本題に入る前に少しDevRelというものについて説明します。

DevRelとはDeveloper Relations(デベロッパーリレーションズ)の略で、IT製品やサービスのマーケティング活動の一環として、製品やサービスの情報をそれらを使用する開発者に届けるための活動で、ブログやSNSの発信やコミュニティの形成など様々な活動を行っていくことです。
これらDevRelに関わるマーケター、エバンジェリスト、エンジニアなどのコミュニティのひとつがDevRel Japanであり、その大規模なカンファレンスがDevRel/Japan CONFERENCEです。

<カンファレンスの動画です>

パネラー紹介

モデレーター
小田 祥平(おだしょー)さん
・商社系SIerにて10年程システム開発を経験
・現在は開発者向けマーケティングを担当。
・エバンジェリストとしてコミュニティの運営やそのサポート、技術文書の寄稿、YouTuber、学校での講義など様々な活動

小島 優介さん
株式会社デンソークリエイト(IT子会社)
・自社製品の開発プロジェクトのプレイングマネージャー
・自社製品の社内外に対するDevRel的な活動を実施
デブサミ2020関西ベストスピーカー賞
Microsoft Bulld 2022登壇
・ITエンジニア向け月刊誌「Software Design」で連載執筆
・「Serverless LT初心者向け」というコミュニティを運営

木澤 朋隆さん
SCSK株式会社 
・プロモーション活動(ウェビナーの企画・運営・登壇など)
・社内の技術者支援活動
・社内コミュニティ「TrchHarmony」主催
SORACOM User Group運営

片野 潤一さん
伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)
・ローコードプラットフォーム「OutSystems」の推進
・プリセールス、技術支援、トレーニング講師、講師育成
・社内OutSystems Developer向け勉強会の開催、発表
OutSystems User Groupe

活動のきっかけと内容、継続のモチベーションは?

小島さん:活動のきっかけはDevRelではなく個人の活動。自分の人生を見直したときに「成長して自分の市場価値を高めることが必要」と情報発信を始めました。
おだしょーさん:「アウトプットはその人の名刺代わりになる」と言われますが、アウトプットで自分を高めようという活動をした結果、やってることがDevRelっぽくなったという感じですかね。それを出し続けることが持ちメーションにもなっているということですか
小島さん:自分のためにやっていることなので・・・

木澤さん:永年、事業としてクラウドをやっているのに界隈で知名度が低いのはエンジニアの発信が少ないのが原因と感じたこと、クラウドサービスを担当している部署が受け身になりがちという現状からエンジニアの目を外に向けさせ、アウトプットするマインドをつけさせたいということで活動をはじめました。
クラウドの利用が増えていること、アウトプットすることによって社内外で表彰をされたり新しいビジネスにつながっている社員が現れていることがモチベーションになっています。他社の物まねかもしれませんがSIerで推進できていることが新しい何かを作り出せるのではと思っているので継続できていると思います。
おだしょーさん:ここにいる皆さんや、参加されている方はコミュニティに参加することの重要性を理解していると思いますが、会社の中に入ると全然違いますよね。与えられた仕事をやるスタイルの方が多いのかなと感じます。そこで社外に目を向けることの重要性を社内でDevRelしているという感じですかね
木澤さん:そうですね、そんな感じのことで活動しています。

片野さん:デブサミとかコミュニティに参加してみたら、そこにいる人たちがみんなキラキラしていると感じたのが一番最初のきっかけです。社内にそのキラキラした空気を持ち込みたくて、勉強家とかLT、技術書の読書会とかを開催しました。それを4年くらいやって今はローコード製品の担当になったので、その時に得られたノウハウを利用して勉強会とかナレッジ公開を行っています。
製品の広がりへの貢献とか会社のブランディング、自分のスキル向上を目的として、今まで自分がコミュニティやほかの人に与えられてきたものを恩返しをしていきたいなという思いで活動しています。
モチベーションは2つあって、根底にあるのは個人の楽しさで、そのうえでブランディングやスキル、技術の話で仕事のしやすさが進化していくという軸があると思います。楽しくなる未来が見えていないと個人的にはきついかなと思っていて、卑しい言い方をすると「利害が一致している」です。
もう一つは製品に対する正しい期待値や認識を持っていただくことです。「ローコードは常に誇大広告が付きまとう」なので正しい認識を広めたいなと思います。
おだしょーさん:近しい経験はしています。キラキラした空気を会社の中に持ち込みたくなったというのは感じたんですよね。「あれ?俺空気清浄機かな」wwと・・・
片野さん:フィルターみたいな感じですかねwww
おだしょーさん:めちゃくちゃ共感しました。利害が一致しているというのは素晴らしいですね。やった内容が仕事人かせるというのはSIだとなかなかないですよね。そんな中で担当製品とコミュニティの方向性が一緒になるというのはうらやましいなと思いました。
みなさん、案件だけやっていてそれ以外のことは全く分からない状態よりは自分の興味のある技術を楽しそうに話をしている場所に行って、自分もそこに染まっていきたいという思いが強いのかなぁと思ったのですが、そのへんいかがでしょうか?
木澤さん:自分が染まった経験とかそんなところですかね。
片野さん:諸先輩ですごく仕事のできる方で情報を外に出さない方がいるのですが、そういう人を見て「欲しい」し、自分もそういうのを与えられたらと思い・・やりたいなぁと・・・
おだしょーさん:ナレッジのシェアみたいのが狭い範囲にとどまりがちですよね。NDAとかで外に出せなかったりとか・・・SIerはその辺厳しかったりとか・・・かなり苦しめられましたし・・・虎の巻持っていても開示してくれないみたいな・・・
片野さん:聞くと出てくるのですが、聞かないと一生出てこないだろうな・・というのはあります。
おだしょーさん:その辺皆さん共感する感じですか?実際虎の巻は持っているんだけど所持していることは言っていないのだけど、「実はあいつ持っているぜ」みたいになると出してくれるみたいな。高い寿司屋みたいですね。
木澤さん:自分の業務時間を割いて、他人に協力することについて否定的な人が多いな・・と感じますね。
おだしょーさん:小島さんは虎の巻を保持してこかれれば答えるという感じですか?
小島さん:私のチームは虎の巻を見つけたら記事に書いてシェアしたほうが誰かの為ではなく自分の為になるというモチベーションをみんなで共有している感じです。
誰かの為になるという考え方では何年も続けていくとしんどいです。
虎の巻の技術ポイントを記事にすると、わかっていなかったことにも気づき、自分の身にもつく・・・だから自分の成長の為になる・・・ということで社内のブログや社外のQiitaにマルチポストしてシェアしています。
おだしょーさん:かなり大事ですよね、そういうシェアって。皆さんの心掛けが素晴らしいです。

苦労話や克服したポイントは?

片野さん:最初の勉強会は解体というか自然消滅になったのですが、組織変更や環境の変化で体制が崩れるのはあると思うので、3月前後は要注意です。私は単一のお客様向けのサービスから、横断的な製品の担当になったことで所属組織の目的が変わり、業務時間の中で費やす時間が確保でき、KPIとして評価と連動するようになったのですが、それがなかったら活動しにくかったかなと思います。
もうひとつ社内でやるときに苦労したのは発表者を集めることでした。やったことは自分で必ず一つは話すようにして、プレゼンの仕方などがキャッチーでなるべくすぐに役に立つ話をしてました。もう一つは役職者に依頼しました。役職者の普段やっている勉強や気になっている技術などを話してもらいました。役職者が話すとなると普段勉強会に興味を示さない層が参加してくれたりしました。そういう風に巻き込むというのもよかったかなと思います。
おだしょーさん:なるほど役職を持っている方を巻き込むのはいいですね。重要性を理解してもらって防波堤にはなってくれるかもしれませんね。
片野さん:部長が話すときは参加者数が跳ね上がっていました
おだしょーさん:技術の話をしてくれる部長っていいですよね

木澤さん:始めた当初は孤軍奮闘でものすごく大変でモチベーションが下がった時期もあります。克服できたのはそこで仲間と助け合う関係ができて、仲間に協力してもらえたというのがすごくよかったと思っています。
今の悩みは社内コミュニティーの自走化です。自走化はものすごく難しくて、現在は私のパッションに依存している状況です。若手を巻き込みたいのですがSIerの中でDevRelやエバンジェリストのキャリアパスやロールが確立していないので躊躇しているところがあり育成というところではまだ悩んでいます。
自走化を目指す策として運営や企画の状況を説明するミーティングを開催して参加を呼び掛けたりして運営や教育している方を増やす試みを開始しています。
おだしょーさん:SIerの中でDevRelやエバンジェリストをやった時に収益に貢献できるかというのは道筋が見えにくいというのはありますよね
木澤さん:イベントをやることが案件獲得にどうつながって、どう収益につながるのかは、なかなか因果関係が説明しずらいんですよね

小島さん:苦労話という意味では私の会社というのは製造業が親会社というのもあって堅いため個人レベルで会社の名前を出して活動するというのにハードルがあります。業務としてプロジェクトの活動をカンファレンスで発表するというのはあるのですが、それはあくまで業務として業務時間の中で上司のレビューを受けて、その作った資料を発表するというのはあるのですが個人レベルで会社の名前を出して情報発信している人は誰もいなかったと思います。
最初は本名も会社名も全部隠してQiitaに記事を書いていました。私が会社名を出して活動するメリットを示すために推敲を重ねてバズることを狙った記事を書いて、狙い通りにバズりはじめたときに上司とミーティングをやって記事に自社製品のリンクを貼ったら宣伝になりますと説明して相談しました。会社側にメリットがあり、早く判断しないといけないという状況を作り活動を認めてもらいました。実際に評価版のダウンロードが増えました。その時に注意されたのは「炎上だけはしないでくれ」とのことでした。
注意しているとともに予防線に「発言は個人の見解です」とつけています。
バズる記事を書いて会社の宣伝をするメリットを提示すればイケるということです。
おだしょーさん:なるほどなぁ、めたくちゃしたたかじゃないですか。狙ってバズる記事を書くのはめちゃくちゃ難しくないですか?
小島さん:ネタのなかの一番いいというベスト3を推敲に推敲を重ねました。
おだしゅーさん:自信をもって寿司を「へいお待ち!」とだしたんですね。「すぐ食べないと鮮度落ちちゃうぞ!」と上司を追い込んだんですね。・・・その作戦は目からうろこですね。
でも会社名を出して個人名でというのはいまだにハードルがあるんですね。
木澤さん:個人名出して会社のブログに記事を書くのはちょっと・・・というような話は聞くんですけど、私の場合は個人のキャリアにつなげてもらいたいという思いから、あえて個人名を出すようにしています。
おだしょーさん:少しずつ変わってきているんですね。起こってもいないことを心配する風潮は一昔前にはもっと強かった気がするんですけど・・・
片野さん:会社名、個人名を出す場合は広報のチェックが事前に必要ですね。発信するときはちょっとぼかしたりとかしています。今日のようなイベントは所属長がOK出せばいいです。
おだしょーさん:少し緩くなった感じですかね、過去はハンコラリーした記憶があったので、だいぶんよくなってきたのかなぁと感じます。
会社名出すといってもやっている個人のモチベーションに依存している部分もあるので個人名出したいし、どこの企業に所属しているかくらいは出さないと・・・2017年のDevRelカンファレンスではハンドルネームだけで会社も明かせないとか・・・そういう形で登壇されていた人がいて・・・それに比べたらだいぶんましになってきた感じはしますが、まだちょっとハードルがありそうですね。


社内で社外発信する仲間を増やすには

木澤さん:エンジニアブログを始めたのですが、まずは生地を揃えたいということで社内のアーリーアダプターやコミュニティの仲間、知人など、まずはアウトプットに抵抗がないメンバーで立ち上げました。今は軌道に乗ってきたのでマジョリティと言うかライン(部門)を通じた働きかけだったりとか、社内ブログへの投稿者への声掛け、社内セミナーの開催などで徐々に増やしていっています。
おだしょーさん:今まさに仕掛り中と行ったところですね。このへんは難しいですよね。お前社外発信しろ!と言ってするんなら苦労しないですよね。そういう話ではなく内なるモチベーションをどう引き出すかということにかかっているのかなと思います。
片野さん:遠く離れた部署では社外発信を精力的にやっているという部署はあるんですが、身近には居ない状況です。
真っ当なやり方としては社内の勉強会とかコミュニティに出て楽しいという感覚を得てからだと思います。
無理やりなやり方は「やったら評価する」ですね。
おだしょーさん:「お仕事」みたいな感じだったらきっとやるんでしょうけどね。遠い他部署という話がありましたが、お仕事というよりギルドっぽい、違う土地に仲間を探しに行く感覚が強いかなーと感じたのですが・・普段一緒に仕事をしない人とコミュニティで・・という感覚は皆さんお持ちでしょうか?
片野さん:半々ですね。そういう仲間も作りたいと思ってますし、やることのメリット、楽しさもあるのでどっちも目指したいと思っています。
小島さん:私も途中のところではあるんですが、まず全体としてプロジェクトの仕事でカンファレンスで発表するとかはやっているんですけど、私が増やしたいと思っているのは個人の責任で個人の学んだことを発信するする人たちです。YUMEMIさんとかサイバーエージェントさんとかクラスメソッドさんなんかのように各個人が社外発信している文化を作りたいなぁと思っています。大事なのは自分が社外発信することによってどれだけメリットがあったか、幸せになれたかを伝えることだと思います。なぜなら発信することが会社への貢献になると言われてもそれだけじゃダメで、それよりも今後の自分の人生にメリットがあったほうがやる気になるんじゃないかなぁと思います。自分が幸せになった話を社内ブログとかで何回も話しています。いつも伝えているチームメンバーは社外発信をやるようになってます。ただ身近な人以外はなかなかそうはならないのが現実です。身近じゃない人に対しては長期計画で行けばいいと思います。社外発信が身についた若手のメンバーが成長してリーダーになって、そこで更に広めていけばいいと思っています。
おだしょーさん:お仕事としてだと仕事から離れたときに参加するモチベーションがなくなりますが、自分がハッピーになるために個人の成長を促す・・・そういう訴え方ですね。
自分軸をしっかり持つという感じですね。こういう活動はボランタリーだったりもするので
自分軸のほうが色々ハッピーな感じですね

これから始めたい人へのアドバイスは?

おだしょーさん:日本のIT企業の6〜7割はSIerと言われてますが、こういうカルチャーをそこに根付かせていこうとしている方はたくさんいると思いますが、ぜひアドバイスを。
片野さん:外部に発信する方がここ2〜3年で増えてきたとはいえまだまだ珍しいと思っています。そこで育ってきた人が成長して組織帳とかになってからなんじゃないかなと推測しています。実施者は個人のブランディングだったり転職活動の有利性などのいい事につながると思います。外部の人のリソースは膨大なのでプレゼンテーションスキルを学ぶのにはかなりプラスになっています。個人の幸せにすごくメリットがある活動だと思います。社外はハードルが高いと思っている人は居ますが、社内ならそんなにハードルは高くないので少人数からはじめて、形になってからどんどんまきこんで、SIerだからこそ差別化を測ってDevREl活動いかがですか?みたいな形になります。
おだしょーさん:差別化に使うのはめちゃめちゃいいですね。外の知見だったりを有効活用するというのはすごくいいと思います。
小島さん:会社のためのDevRelと言う前に個人のは新活動を始めるのがハードルも低いし、今日からできるのでいいと思います。DevRelの対象のサービスを自分の会社のサービスだけと捉えるのではなくて自分自身をひとつのサービスと捉えてDevRelをしようという考え方のほうがモチベーションが上がりやすいのでいいんじゃないかと思います。
私が交流しているフリーランスの方はそのへんがうまくて、記事を書いたりライブラリを公開することで自分の持っているスキルを見える化して、自分というサービスが多くの会社に貢献していますよというのを示して次々に仕事をもらうというのに生かしています。そうやって、自分自身をひとつのサービスとして捉えて外部の開発者と相互に交流しながら多くの人たちに役立つ情報を発信し続けていけば今の会社だけに依存することなく今後の人生にずっと役に立つ資産になるんじゃないかなと思うんですよ。だから発信活動を続けて発信スキルも高まるので結果的に会社の製品のDevRelをやるときにも貢献できると思います。まずは個人で学んだスキルを発信するところから始めたらいいのではと思います。
ちなみに私は「ハピネス・チームビルディング」という考え方を広めたいと思っていて、そのために記事を書いたりイベント参加したりして多くの開発者と交流を深めることで考え方を広められると思っています。
おだしょーさん:それってSIerとかでなく誰しも持っていていい考え方ですよね。
木澤さん:私からは3点言いたいことがあって、まず社外でのコミュニティ活動には積極的に参加してほしい。社外で評価してもらったりリレーションを作って交流を深めるというのは良い情報が得られるようになりますし本当にいいことだと思います。
ふたつめは社内の仲間を作って一緒に進める仲間を作って欲しいです。心が折れないように同志は必要と思います。
3つ目は自分で積極的にチャレンジするということが大事かなと思います。当社だけかもしれませんが、あまり目立ったことをしても叩かれないかなと私の感覚値としては思っています。会社の不満を言う方も居ますが、であれば自分で改善活動を立ち上げて仲間を巻き込んで積極的にチャレンジするのが大事なんじゃないかなと思っています。

感想

SIerのお話は自分の身近なところでもあるのですごくわかります。そういった中で勉強会やコミュニティを自分の意志で立ち上げていっている皆さんには勇気づけられました。たしかになかなか理解されませんが頑張っていこうと思います。



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