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余剰工数は有効に利用されない〜情シス目線のプロジェクトマネージメントTips#45

世の中にプロジェクトマネジメントに関するコンテンツは非常にたくさんあるのですが、よく見てみるとどうしてもSIer目線のものが多いように思えます。SIer目線の場合だと、どうしても利害が一致しないせいか事業会社というか情報システム部門目線から見るとピンとこないものも多く、ちょっと腹落ちしないことが多くあります。
というわけで無いなら作ろうということで「情シス目線のプロジェクトマネジメント」なるものを書いてみようかと思い不定期だとは思いますがシリーズ的に書いていこうと思います。

今回は工数削減を目的にしたプロジェクトの話で必ず出てくる「余剰工数」の話です。

余剰工数は有効に使われている?

RPA導入みたいな自動化・省力化のITプロジェクトの目指すところの多くは「自動化によって生まれた余剰工数を新規事業などの創造的な業務に当てる」などのような目標を挙げている事が多いです。

つまりは省力化の目指す先は、暇ができた人達に今までやっていなかった新しい仕事をやってもらうということです。

たしかに「余剰工数分の人員はリストラします」とは言えないし、実際に人員整理なんかできないのでそういった建前になるんだろうと思います。

でも実際に省力化によって創出できた余剰工数が新しい事業や業務に生かされているケースってどれくらいあるのでしょうか?

おそらくは省力化を目指したプロジェクトの何%も、そうはなっていないと感じます。

削減された工数は溶けてしまう

経験上、人間というものは余った工数を埋める仕事を見つけてしまうという習性があります。もし毎日1時間余った時間があったら、今の仕事の中でやり足りないとか、かつて品質の問題を指摘された仕事を新たにやり始めます。または過去から「やんなきゃなぁ」と思っていた仕事で埋まってしまいます。

優秀な人ならまぁまぁそうなりますが、そうでない人の場合はなんとなく8時間かかっていた仕事が、7時間に省力化されたとしても、いつのまにか8時間に戻っている・・・なんていうこともよくあると思います。

改善とかシステム化で苦労したところで、結果的には以前のまんまでなんの生産性も上がっていないということも相当ありそうです。

削減された工数はそのまま放置すると「溶けて」しまうのです。

人には向き不向きがある

そして人には向き不向きというものがあります。

定型的な繰り返し業務が適していてストレスも感じず成果を上げ、毎回違う仕事の場合、なにか自分で考えないといけない仕事の場合にはうまく行かず激しいストレスを感じる人もいるのです。

誰もが創造的でクリエィティブな仕事が得意で好きというわけでは無いのです。むしろストレスに感じて成果を出せない人のほうが多いでしょう。

しかも省力化で違う仕事につかされる人は現時点でのIT技術ごときで自動化・省力化される業務を今まで毎日毎日繰り返していた人達なのです。その状態で自ら創造的な力を発揮して改善してきた人では決して無いのです。

ストレートに言うと他の創造的な仕事をするために省力化するというのは余計なお世話というか迷惑以外の何者でもありません。

その対策はどうすればいいのか?

じゃぁどうすればいいのか?

考えられる対策は2つです。
ひとつは「省力化の前に新しい仕事に着手」してもらう。もうひとつは自ら改善を行い「クリエィティブな仕事の訓練」をするか・・・です。

省力化の前に新しい仕事に着手」のほうは、若干ブラック企業っぽいのですが、無理でもいったん新しい仕事をノルマとして与えてしまうことです。少なくとも新しい仕事の方で工数割当や成果を与えることで、以前やっていた仕事を「このままでは無理」という状況にすることです。そうすることで強制的に「省力化をせざるを得ない状況」にしてしまうという乱暴な方法です。そうすれば省力化された結果が溶けてしまうことはなくなるはずです。

そして「クリエィティブな仕事の訓練」については省力化そのものの活動の主体を本人たち主体で進めさせることです。当然クリエィティブな仕事は苦手なので、はじめはうまく行かなくて「我々がやれば簡単に解決するのに」とイライラする事間違いなしですが、我慢強く彼らのスキルの向上や文化の変化を促していくという方法です。こちらがうまく行けば要員のチェンジは確実なものとなるはずです。

考えないと怖ろしい結果に

教科書どおりに言えば、省力化のプロジェクトと並行してリスキリングの教育をするという離れ業が求められると思いますが、それはそれで無理があるし、タイミングがチョットズレてしまえば、かけた改革コストがきれいに溶けてしまうので、もうちょっと過激な方法を取るしかなくなると思います。

もっとも怖ろしいのは「追い出し部屋」送りです。漫画に出てくるような「社史編纂室」や「ショムニ」みたいなところにいって「やんわりと退職勧告」にならないように・・・というかそこに加担しなくていいように考えておきたいものです。



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