6勝4敗のススメ
この記事は #Backlogアドベントカレンダー2022 by #JBUG の12月3日分の記事として書いています。今年もアドベントカレンダーの季節がやってきました。年末なので(?)ちょっと過激に攻めたことを書いてみようと思います。
プロジェクトの失敗は許されない?
システムに限らずプロジェクトにおいて「失敗」というものは許されない・・・・と思っている人がほとんどだと思います。
プロジェクトの失敗というと古典的な定義であれば「品質」「納期」「コスト」が計画通りに行かなかった・・・納期が間に合わなかったり、コストが超過したりしないで、バグとかも許容範囲内に収まる・・・そんなプロジェクトになるように多くの人が頑張っていると思います。
・・・・でも本当にそうなのでしょうか?
たしかにSIerが受託開発でシステムを作る場合は「失敗」すると赤字になったり、次の受注がもらえなくなったりしてしまうので大事なのかもしれませんが。これが自社のシステムとかを作る話だったらどうでしょうか?
やっぱり負け・・・プロジェクトの失敗は許されないですか?
負けない戦いかた
世の中の勝負の世界では「勝つための戦いかた」をしている人たちだけではありません。「負け」が許されない状況であるならば「負けない戦いかた」というスタイルというものもある。
たとえば次負けたらリーグ降格になるサッカーチームがガチガチに守りを固めてとにかく失点がないようにして、ワンチャンあればたった1人のフォアードが突進して得点を獲りに行く・・・・
・・・・という戦い方っていろんな世界でもあるはずです。
システム開発においてもこのケースは多いと思います。・・・というか大部分の仕事のやり方がこの「負けない戦い方」になっているような気がします。
無茶な要求はすべて却下する、新しい技術は採用しない、新しい手法にはチャレンジしない、とにかく手堅く手堅く冒険なく固めていって、納期もコストも品質も細かく細かく管理していく・・・・そんな守りの姿勢・・・まさに「負けない戰いかた」になっているプロジェクトや職場は多いのではないでしょうか?
結果は0勝1敗9引き分けの世界
その結果、プロジェクトはどうなるかと言うと「負けてはいけない世界」になってしまいます。とにかく「負けない」事が大事なので「引き分け」みたいな結果、「パッとはしないが、まぁ悪くはない」みたいな結果が続いていくわけです。まぁそれでもめったに負けないので評価としては「まぁまぁじゃない?」という事に落ち着くわけです。
・・・そしてたまに負けるやつが居たら、全員でボコボコに叩く・・・まさに「0勝1敗9引き分け」の世界になっていくわけです。
・・・・・というかすでになってますね。
ボコボコに叩かれないように、とにかく失敗しないように失敗しないようにと細部に注意しながら失敗だけにはならないように日々を過ごしていくわけです・
こんな世界は楽しいですか?
そしてこんな戰い方でビジネスの世界で勝てますか?
すでに勝たなきゃいけない世界に変わった
個々数年で一気に世の中に広まった「DX」という言葉。この言葉が意味しているのは「D:デジタル」ではなくて「X:変革」のほうです。この変革はなぜ必要とされてきたかというと世の中が「勝たないといけない」世界になってしまったからです。
安定した環境の中(競争条件が変わらない)では狙えていた「引き分け」は大きくビジネス環境が変わる中では非常に困難です。そして不確実な顧客の動向を確実に捉えるのも難しくなっています。すなわち毎回毎回、勝負に出ないと成果を出せない世の中になってしまっています。
これをうまく理解ぜずに今までの「負けない戰いかた」のスタンスであり続けか結果は・・・・・よくタクシー業界がUberにホテル業界がAirB&Bに・・・って言われますが。もっとリアルに言えば日本のサーバー業界がAMAZONなどのクラウドに喰われた・・・・みたいになっちゃいます。
これはビジネス全体の大きな話から、身近な仕事という小さな話まで、おおきく関わってきています。
もう世の中は「負けない戰いかた」では生き残れないのです。
アジャイルとは負けを許容する戰い方
「DX」という言葉が普及するとともにシステム開発の世界ではアジャイルというアプローチが普及してきています。しかしながら従来ウォーターフォールのアプローチでやってきた組織がアジャイルを実践するというのはなかなか困難を極めます。なかなかうまく言っていないという話もよく聞きますし、私のまわりでもそうそううまくはいってません(笑)
なぜなのかと言うと、この2つはプロセスの違いではなくて「戰いかた」の違いだからです。ここを理解しないままスプリントだとかスクラムイベントというプロセスだけを導入してもうまくいくわけがありません。
ウォーターフォールは「負けない戰いかた」でありアジャイルは「勝つための戰いかた」だからです。「勝つ」ためにはとうぜん「負け」を許容しないといけません。
サッカーの例えで言ったら積極的に攻め込んでいったら、そのぶん守りは薄くなりますし、カウンター攻撃を食らう可能性も高くなります。
「絶対に負けない」という意識をすてて手戻りを恐れず、新しいものにチャレンジし、価値を生み出すならば、たとえ無理な要求にも答えていいかないといけません。・・・・・つまりかなり負けるのです。
結果として小さく負けていって全体で6勝4敗(2勝勝ち越し)くらいになっていれば良いのです。
でも負けたら袋叩きに合う世界で生きてきた人たちにはなかなか変えられません。だからアジャイルの定着は難しいし、時間がかかるのです。