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「工数不足」は本当は何が足りないのか〜情シス目線のプロジェクトマネージメントTips#04

世の中にプロジェクトマネジメントに関するコンテンツは非常にたくさんあるのですが、よく見てみるとどうしてもSIer目線のものが多いように思えます。SIer目線の場合だと、どうしても利害が一致しないせいか事業会社というか情報システム部門目線から見るとピンとこないものも多く、ちょっと腹落ちしないことが多くあります。
というわけで無いなら作ろうということで「情シス目線のプロジェクトマネジメント」なるものを書いてみようかと思い不定期だとは思いますがシリーズ的に書いていこうと思います。

遅れたときの「工数不足」

ITシステム構築のプロジェクトの報告の中でよく「工数不足」という言葉を聞くことがあります。

「〇〇さんのチームは今週も遅れが拡大しているけど原因は何なの?」

「慢性的に工数不足の状態が続いています」

しかしながら報告を聞き入れて、応援部隊を投入したところで状況が全く変わらなかったりします。



そして、なぜかこの言葉を連発する領域のリーダーは他のプロジェクトに参加していてもおなじ言葉を使っていることが多いのです。


なぜなら、この「工数不足」という言葉自体に問題が隠されているからです。


「工数不足」は原因ではなく結果

そもそも工数不足ってどんな状態を指すのでしょう。

簡単に言うと「求められた結果を出すために必要な作業時間・人数が足りない」ということになります。

つまりは10人月かかるタスクに対し2人のメンバーしか居ない上、納期が3ヶ月後・・・・という場合のことです。

この場合は4人月の工数が足りていない事になります。

求められた結果に必要な作業時間と人数が足りないというのは、作業中に発生するものではなく、計画時に発生することです。

「そもそもこの計画に無理があります」と報告すればいいのです。

でも計画時の工数見積だって適当に立てたわけではありません。何か想定していなかった別の理由(技術的な難しさや、兼任メンバーの参画不足など)があるはずです。
そこをなんとかしないままでは決して前には進みません。

あと考えられるのは営業的な理由や政治的な思惑ではじめから工数不足がわかっている場合ですが・・・・
それであるならリーダーとしてはスタート時から「割り当てられたメンバーが足りないので、当初より遅れる予定です」と言うべきです。でないとメンバーが可愛そうです。

とにかく「工数不足」というのは結果でしかなく、本当の原因は「計画が甘かった」「技術的な問題が発生した」「兼任メンバーが全然来ない」「仕様がわかりにくい」など何らかのものがあるはずなのです。

そこに踏み込まないから「工数不足」が続くのです。

エンジニアは工数ではない

もうひとつ大事なことはエンジニアは奴隷ではないということです。

足りないのは単なる時間ではなく「◯◯の技術を持った人の時間」「△□の知識がある人の時間」「◯✕部門と交渉できる人の時間」なのです。

能力とか知識とかといった、技術的、人間的な特性が足りないのです。本当に工数だけが足りないのであれば、そのへんの学生アルバイトや、ホームレスでも雇えばいいはずなのですが、そういうわけでは決してないのです。

それがわからない状態だから「工数不足」という報告になるのです。

つまり何が不足しているか、把握していませんというのが「工数不足」なのです。

足りないのはメンバーの数ではなく、リーダーの努力と能力なのです。


実際に「工数不足」と報告された場合に、奥深くまでヒアリングしてみると「こういう技術が特定のメンバーにしかわからない」とか「この作業が想定していた時間よりも多くかかってしまう」といった理由だったりします。対策も特定の人のサポートだったり、工程の見直しだったりするわけです。

むしろ「この部分がユーザーと揉めてしまって遅れている」とか「そもそもこの課題解決にはこの技術では無理」というような工数とはまったく関係だったりすることも珍しくはありません。

だから工数応援をしたとしても多くの場合には効果が発揮できず、むしろ滞留やコストの悪化を招くだけなことが多いのです。

「工数不足」には気をつけましょう


「工数不足」のリトマス試験

さいごに「工数不足」が「本当の工数不足」なのか見分ける方法をお伝えして終わりにしたいと思います。

そのしつもんは

「では、このままだといつ終わる事になるのですか?」

本当に工数が不足しているだけならば、答えられるはずです。
冒頭に上げた場合であれば、

(10人月ー(2人✕3ヶ月))/2人

で2ヶ月になるはずです。

こう答えられるのなら本当に工数不足なのですが、たいていは答えられないと思います。

ためしに聞いてみてください

このときに違う理由を挙げだすようでは、問題はメンバーの人数つまり工数不足ではありません。










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