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国家戦略としての金融教育をどう考えるか

2022年度の金融行政方針では改めて金融教育について国家戦略ととして推進すると提言された。金融教育は中学・高校の授業に盛り込まれたが、大学生以上には金融商品の営業になってしまい、真の国民の資産形成を目指すという金融教育になっているか甚だ疑問だ。金融関連業界から大学教育の場に転じた筆者からすれば、硬直化した現場で、単発的に、大学生に金融リテラシーを植え付けるのは到底無理な話だと思ってしまう。自分が大学生だったときに、誰かが「S&P500を買っておけ」とでも、社会人になりたてのときに誰かが「日経平均はバブルなので買ったら損するぞ」とでも言ってくれていたら、その後の資産形成は変わっていたとも思う。まずは始めることから始まるのだ。どんなにノウハウ本を読んでも、水に入らなければ、永遠に泳げるようにはなれないわけで、まずは水に浸かることから始めることが求められているのではないか。泳いだ経験がなければ、誰だって水に入るのは怖い。水に恐る恐る入って少しづつ泳げるようになる。そう言うと「溺れてしまったらどうする」と言われそうだが、犬かきでもいいから、もがいているうちに段々と水に浮くことが分かり、泳げるようになればいい。但し「泳げることの楽しさ」を感じてこないと長続きしないのも事実だ。金融と聞くと、とかく「損したらどうするんだ」とか「ギャンブルは身を亡ぼす」とか囚われがちなのも理解できるし、得てして金融取引で損した人の悲哀が表に出てくるのもわかる。だからこそ、金融教育も、バラバラと行うのではなく、中学・高校・大学と体系的に展開していく、つまり少しづつ「泳ぎ」を上げていくことで、徐々に国民に浸透していくものではないか。その意味で、ESG(環境・社会・企業統治)教育の一環で金融を捉えるのはどうだろうか。企業経営においてESGの重要性が高まってきている。ESGの観点から企業をみる眼を養うのだ。短期的ではなく長期的な目線で銘柄を選定し10年20年先の未来を見据えた投資を行うのは、プロの機関投資家でも容易ではないが、生徒・学生は10年20年先でも応援していたい企業を選び出して投資することから始める、企業もそのための材料を個人法人を問わず提供し少額でも投資できるようにする、そして教育現場で投資判断のためにその材料をどう読みかを教えることができるとよい。ESG教育の中で金融教育を行っていくことは十分意味あるものだと考えている。
 

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