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エッセイ万歳⑥ー『月夜の散歩』

はじめに

このエッセイは、小説家でもお馴染みの、角田光代さんのエッセイだ。角田さんの有名な小説はたくさんあるけれど、エッセイも面白い。角田さんは、私とは年齢や性別など違うところが多いが、多いからこそ、「この人は、そう考えるんだ」と学びになった。(全然わかんないと感じるところも、多かったけれど…)

印象に残ったエピソード1ー「天ぷらの願い」

このエピソードは、端的にいうと、せっかく揚げた天ぷらを、揚げたてのうちに食べて欲しいという話だ。わかる。熱々のうちに、食べてほしい。
その理由として、角田さんは、ただ熱々が美味しいという話だけではなくて、天ぷらは自分以外の誰かのために作る料理であるという考察も見せている。わかる。天ぷらは、自分一人のためには絶対作らない料理だ。誰かのために作っているからこそ、その人には一番おいしい状態で食べて欲しい。
これまで、何も思わずに天ぷらを消費してきた私だが、このように天ぷらを捉えられる角田さんの感性は本当に、瑞々しい。

印象に残ったエピソード2ー「愛された証拠」

このエピソードも、角田さんの鋭い感性が現れている。「愛された証拠」という題名がついているが、実はこの話、「クチャラー」が題材となっている。「クチャラー」とは、何か食べている時に、くちゃくちゃと音を立てる人のことを言う。角田さんは、クチャラーは男性に多いことを指摘し、男性はそれまでの多くの場面で「くちゃくちゃ」が許されてきたからだという。お母さんには許され、男友達からは気にされず、彼女・奥さんからは恋人ということで指摘から免れてきたのだと。
私自身、クチャラーではないし、クチャラーが男性に多いとも思ったことはないが、これまた鋭利な仮説を立てることが出来ているなと感じる。
真実かどうかはさておき、こういう面白い仮説を立てられることが、新しい発見をしたりすることには重要だろう。角田さん、すごい。

おわりに

あとがきを読むと、このエッセイは、雑誌『オレンジページ』に連載されたもので、私は『オレンジページ』の購読層からまるっきり外れているから、読んでもピンとくるものが多くないのはもっともだ。それでも、印象に残るエピソードが多々あり、やはり売れっ子小説家は違いますね。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。


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