【循環マテリアル】を構想中。

ものづくりとまちづくりを実践するソイロの松本啓太です。

ここ数週間で「これだ!」と思い至った考えをシェアします。

今はそれを「まちの循環マテリアル」と呼ぼうと思います。

言葉の意味そのままですが「まちの素材を循環させる」のです。
私が特に仕事で触れる素材は、建材、家具など、とりわけ木工が中心です。リノベには解体はつきもので『もったいない。』と思いながら、古材を集めるレスキューもしました。ある時は、カウンター材をベンチに作り替えたり、またある時は、和風建具を洋風に作り替えたり、とタイトルと同じ行為をしてきました。
これ自体、別に新しい事でなく、古き良きものを大切に環境に配慮した活動をしている方も多くいらっしゃいます。

私が思っているのは『リノベや生活において”新品”の建材や家具を買う事が当たり前でなくなる』と言う世界です。逆に言うと『中古建材の再利用が常識になる』と思っています。現在は、指定が無い限り新品の材料が用いられますが中古建材に置き換わっていくことも充分にあり得えます。

それは以下の理由からです。

中古建材が使われる理由①|世界的な脱炭素の流れ

まず世界的な環境への対策を見渡すと、欧州を中心に脱炭素が強く意識されており、そして実際に実行されています。木は育成時~伐採~建材~廃棄までの過程で二酸化炭素量が±0になります。カーボンニュートラルと呼ばれていて、木の存在自体は何ら影響を与えません。ところが、新品の建材を作ろうとすると、伐採~製材~加工~流通などの過程において二酸化炭素を排出します。
では、中古木材はどうでしょうか。一番排出しない方法は、解体現場で出た材料を、そのまま新しい住宅やお店で使う事です。要するに木材自体は移動しません。大工さんなりが加工して再利用するだけです。
二酸化炭素だけの問題を切り取れば中古木材に軍配が上がります。(これとは別の問題で森林の保全の話はもちろんありますが)

中古建材が使われる理由②|古さが価値(価格と質)

中古建材と聞けば、古い家屋の解体材や、建築や家具製作の端材、メーカーの余剰在庫などを思い浮かべます。それらはアウトレットとして販売される場合が多く、一般的に=値段が正規価格よりも安い物として扱われます。
建材だとピンときませんが、「古着」を例に考えると分かりやすくなります。古着は、全てが安価ではありません。ビンテージ品や希少性から値段が高くなることもあります。要は、「古い/新しい」と言う軸ではなく、本来的な「有している価値」が値段に影響を与えます。
建材に置き換えると、江戸時代の家屋から手に入る古材は価値があるでしょうし、もっと言えば国宝級の建物の部品だったら、欲しい方はいくら出しても欲しいという方も居そう。ちょっと極端な話ですが、中には高くなる中古品もある、と言う事です。ただ、一般的に言えば、やや割安なのかもしれません。

仮に、価格が新品と中古が同じ場合、質がどう違うか?です。
「昔の木材の方が質が良い」と良く言われます。木の断面を見ても密度が明らかに違う。また古い建具などは職人さんの仕事ぶりがすこぶる良い。技術が伝承されているし、賃金も今ほど高くなかったから、良質な仕事が広く世間の建物に残っています。要するに今同じ金額を払っても、同じ質の物はまず手に入らない、と言っていいでしょう。

世界の流れ、質、そして価格。3つの観点から近い将来「中古建材を当たり前に使う未来」がもっと身近になると思っています。その流れは既に欧州では活発になってきています。(脱炭素の世界的なリーダー国ですから。)

一般化するためのハードル

今度は消費者の側になって少し考えてみます。日本で中古建材を使う事は上記のような脱炭素的な考えではなく基本的には「スタイル」や「趣味・嗜好」で選ばれている事が多いはずです。古き良き時代の家具が好き、古材や古道具の風合いに惹かれるなど。アンティーク家具もそれなりにキャラクターがある。
でも、それでは一般化していくとは考えにくい。新品と同じくらいに中古建材も多様なスタイルに対応できれば、もっと市場の裾野が広がっていくと思います。

勿論、ハードルは沢山あります。
キレイに解体する方法、再利用する技術、人手がコスト高になりがち、など作り手や業界側の課題から始まり、
一般人に伝えて、理解してもらうこと、社会全体のムーブメントが起こり、常識として定着する時間。かなり遠大で時間のかかる取り組みになりそうです。
先人達が既に取り組んでいますが、現実的にそこまで広がり切らない日本を見ると、色々な壁にぶつかっている証だとも言えます。

恐らく『言っている事は正しいけれど、実現するのは難しい。』類の話です。

でも、だからこそ取り組む意味があると思います。

いつしか、新品とか中古とか言及しない日が日本に訪れるよう少しずつ取り組みを進めていきます。




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