11.作詞の始まりとエフェクター


書こう書こうと思っていたその先について書くのになかなか重い腰が上がらず半年以上経ってしまっていた。
申し訳ないなぁという気持ちもあるが、どうしたもんかなぁという悶々とした日々が続いて、
書かなきゃなぁという気持ちが負けてしまっていた。申し訳ない。

さて、前回の記事でいよいよエレキギターを手にした岡本少年であったが、
今回は音楽の部分では無く、作詞の部分について触れたいと思う。

Kさんと出会い、中学2年生時にバンドを組むことになったのだが、やはりバンドをするには詩を書かなくてはいけないと思い、近所の文具屋さんに自転車を走らせた。
詩を綴るにはやはり"良さげ"なノートから始めよう。普通のジャポニカ学習帳ではダメだ。
いつかのテレビで見た、アーティストのレコーディング風景で使ってたような感じのやつだ。
そうして形から入ろうと思った僕は文具屋さんで手のひらサイズの"良さげ"なノートとおまけに万年筆風の"良さげ"なペンを購入した。
やる気は十分。

それから書くとなるとやはり"夜"だろう。
夕方や昼間じゃダメだ。雰囲気が出ない。
みんなが寝静まった夜、11時過ぎくらいに窓を開けて月でも見ながら書くのが乙ってもんだ。

そうして形から入った僕は厨二感を十二分に盛り込んだ詩を一晩で完成させ、
その詩をKさんにメールで送ったのであった。

Kさんの反応はというとそこまで悪いものでは無く、なんならその詩を前略プロフィールによくあったような画像にして送り返してくれた。
(↓こんな感じのやつ)

※ネットより拝借


そうして作詞に味をしめた僕はどんどんと詩を書いていくことになるのだが、ここからは俗にいう黒歴史に他ならない。

学校の違うKさんとはあまり会うタイミングが合わず次第に疎遠になっていったのだが、
バンドを夢見た僕は詩を書き続けた。

そんな僕の被害者になったのが当時教室で隣の席にいた女の子であった。
いろんな曲を聴いてはそれらに影響を受け、似た雰囲気の、詩にもならないただの言葉の羅列の"何か"を、授業中に書いては彼女に見せて感想をもらっていた。
今思うと本当に申し訳ないことをしていたと思うし、そんなんされても苦笑いで
「いいね」としか言えないだろうに、彼女は嫌な顔ひとつせず真剣に読んでくれていた。
あー申し訳ない。
もしあの子に今会えるならその時の謝罪と感謝を伝えたい。

このように詩を書き始めることには成功したのだが、肝心の作曲については前回のノートに書いたように挫折をしていた。
そのためゴミのような詩は溜まる一方で、
もうゴミ箱には入りきらなくなったタイミングで魔法のようなとあるものに出会った。

"エフェクター"である。

エフェクターとは、エレキギターとギターアンプの間に繋いで、
ギターの音に「ギュワーン!」とか、
「ほわん、ほわん、ほわん、、、」とか、
「グシャーーー!!!!!!!」とか、色々な変化をつけてくれる、手のひらサイズの機械のことである。

(↓こんな感じのやつ)

映画とかでヤ○ザがお金入れてそうなアタッシュケースみたいなやつで持ち運ぶよ。




エレキギターから、ぺんぺん!みたいな三味線にも失礼のような音しか出せずにギターを挫折した僕は、愕然としたのであった。
自分の腕が悪いんだと思い込み、必死に弾くも音は歪まず、3日で部屋のオブジェと化していたギターは決して悪くなかったのであった。
1番悪いのはエフェクターの存在を書いてくれなかったペラペラの教則本と初心者セットにつけておきながらゲインのつまみがついてないゴミアンプである。

エフェクターを買えば全てが解決するのである。とにかく歪みエフェクターさえ買ってしまえばこっちのもんだ。
原因がわかれば話が早い。僕は吉祥寺の駅前にあった山野楽器へと向かった。

エレキギター初心者16点セットを買っていた僕は、一応それらで楽器周りの機材を全て揃えてしまっていた為にここまで楽器屋に行く機会がなかった。
と言えば聞こえはいいが、中学生の自分にとっては楽器屋さんは少し怖いイメージがあり、なるべく初心者セットで揃えておけば楽器屋さんに行かなくて済むという理由からの初心者16点セットなのであった。

そんなイメージがある楽器屋さんへ戦々恐々としながら入店。
壁一面に並ぶギターやエフェクターに足がすくむ。
歪みエフェクターを探さなくては。
たった一つの大事なミッションをこなすために我は楽器屋に足を踏み込んだのだ。
そんな固い意志を持って入店した訳だがエフェクターというのは何百、何千とメーカーがあり、どれを買っていいかわからなくなる。
それを避けるために事前に予習をしてきていた。どうやらBOSSという日本のメーカーのエフェクターがいいらしい。僕の好きなアーティストもBOSSのエフェクターを使っているという情報も事前調査済みだ。
「BOSS、BOSS、BOSS、、、」
所狭しと並べられたエフェクターの壁をくまなく探す。
目当てのBOSSはエフェクターコーナーの一角とはまた違う、目立つようなポップが貼られたコーナーに鎮座していた。

BOSSのエフェクターというのは音楽業界でも標準の物で、初心者からプロまで使用しており、価格帯も6000円くらいから15000円程度のものが多くリーズナブルなイメージで、日本製の安心安全のメーカーである。

そんなBOSSエフェクターであるが、歪みエフェクターといっても10種類以上ある。
めちゃくちゃ歪むメタルゾーンや安定のオーバードライブ、田渕ひさ子で有名なブルースドライバーやカートコバーンが使っていたオーバードライブ/ディストーションなどなど。

リーズナブルなイメージのBOSSエフェクターであるが、
当時スポーツ推薦で入部して部活一筋の生活をしていた僕には1万5000円はかなりの大金であった。
アルバイトもしておらず月のお小遣いは¥5000で、それらを満額残して繰り越したとしても3ヶ月はかかる。
そもそも部活のみんなと休みの日にはカラオケに行ったり遊びに行くことが多かった為に毎月残らないことの方が多かった。
その為にお金を工面しなくては。
どうしたらいい。
考えに考え抜いて一つの結論に至った。
そうだ、昼飯を抜こう。

当時、うちではお昼の食事の際、
お弁当を持たせるか、購買(¥500)で好きなものを買うというルールがあり、母親には申し訳ないが購買でお昼を買うと見せかけて、
そのお金で蒲焼屋さんというお菓子を3枚(1枚10円)購入してお昼ご飯とし、
残りの470円をぜんぶ楽器貯金にまわした。
部活が終わった後、部員のみんなと駅前のファミマに寄るのだが、その時も蒲焼屋さんで通した。
その隣の松屋に行くことやサイゼリヤに行くこともあったが我慢して1人帰宅することもしばしば。
そうして数ヶ月をかけてなんとか自分で作れたお金が5000円であった。

そんななけなしのお金を握りしめて入店した高校生がエフェクターを選ぶ基準はただ一つ。
価格である。

ブルースドライバーは7000円か、、、
オーバードライブは5900円だけど、ブルースドライバーの方が好きなアーティスト使ってたしな。。。
こうして壁に並べてあるBOSSエフェクターを20分くらい眺めていると、店員さんが「どれか弾いてみますか?」と声をかけてくる。

でた!!!!
服屋さんで声かけてくるやつの楽器屋バージョン!

楽器屋さんでは試着ならぬ"試奏'というものがあり、気になるギターやエフェクターを試しにアンプから音を出して、
好みのものなのか確認することができるのだが、試奏にはいくつかのハードルがあるのである。

1つ目の壁が、
買う気はないけどどんなエフェクターがあるか気になって品揃えや値段だけ見に来てるパターン。
ただ見てるだけなのでお金も持ってきてないし、買う気もそこまでないので自分なんか構わないで大丈夫ですよ!手間とらせてすいません!という申し訳ない気持ちになる。

二つ目の壁が、
買う気もあるのだが値段が高いので躊躇するパターン。
このパターンはごく稀に店員さんに、
「このギター試奏したいんですけど…」
「試奏はご購入希望の方のみとさせていただいております…」
と言った感じで若くて金がなさそうだし、こんな高いギターどうせ買わんだろ、興味本位で弾くんならギター汚れるし準備するの面倒だからやめて欲しいなぁという気持ちから店員さんに圧をかけられることがあるのである。

三つ目の壁が、
試奏のために店員さんがアンプのセッティングやギターチューニング等の準備をした後に、
店員さんオリジナルの即興フレーズをその場で弾くパターン。
これは本当にやめて欲しい。
楽器屋の店員さん、しかもギター売り場担当となると大体がバンドをやっていたり、ギターに詳しいなどのかなりの玄人であることがほとんどであり、そこらへんのギターリストなんて目ではないことが多い。
そんな店員さんが試奏希望者に楽器を手渡す前に最終チェックとして5秒くらい弾く時間があるのだが、
99%の確率でゲロうまである。
なんなら、楽器屋店員さんの1番の見せ場がここであると言わんばかりにその5秒くらいに全てを詰め込んでくる。
いや、当の本人はかなり余裕ある感じで涼しげにそれらを弾くのであるから厄介である。
音出るかな?じゃねぇんだよ、チューニングの時点で音出てるだろ、弾くな、そのまま渡してくれ、頼む、その後に弾く俺の身になってくれ。
このように弾く前から無様な気持ちになって手渡させることが多い。

4つ目の壁が、
渡されても何弾いていいか分からないパターン。
このパターンの人は非常に多い気がする。
いや、俺"ジャラーン"ってコードしか弾かないよ?
ピロピロ速弾きとか出来ないけど??
何弾けっていうのー!!!!

そうしていると2分後くらいにさっきの店員さんが、
「どうですか?」と声をかけてくる。
どうですか?じゃねーよ!
そんなもん店の商品貶すわけにもいかないし、「いいですね(苦笑)」としか言いようがねぇだろ!
「それ好きならおすすめのやつありますよ」って言って3万くらいのエフェクター持ってくるな!たけぇわ!!こっちはなけなしの1万5000円握りしめてきてるんだわ!
っていうパターンである。

そしてつらいのが3と4のパターンの合わせ技である。
店員さんうめーし、何弾いていいか分からねーし、ジャラーンってCのコード(1番簡単なやつ)を弾こうものなら鼻で笑われて舐められる(妄想)のではないかという恐怖が先行して試奏できずにいるコミュ障ギタリスト達の多さたるや。

そんなイメージから、店員さんから声をかけられても目も合わせず、
「いや、、ちょっと見てるだけです。。。」と適当にお茶を濁すことしか出来なかったのである。

何分眺めていたってお金は増えないし、試奏をしてみようという気にもならない。

お金を貯めて出直そうと思い店を出ようとした瞬間、それは目に飛び込んできた。

"ベリンガー"

そう、ほかのエフェクターとは明らかに雰囲気が違っていたそれは、
安っぽいフィギュアみたいな感じでプラスチックケースに入れられて
他のエフェクターとは群れずにフックで壁に吊るされていたのであった。
なにあれ!安そう!
そう思って値段を確認すると、なんと2000円代から売っているではないか。
オーバードライブはなんと2800円!!
うわ!これじゃん!!!これ買うしかないじゃん!!
自分の心が決まりかけていたその時、オーバードライブの隣にある"デジタルディレイ"というエフェクターが目に飛び込んできた。
(ディレイとは音を歪ませたりする物ではなく、やまびこのように音を繰り返したりする効果が得られるエフェクター。)

(デジタル…???なにそれ、めっちゃ高級そう。、あれ?隣にアナログディレイってやつもある…でも絶対デジタルディレイのほうがいいじゃん。)

そう思い、その場でケータイでBOSSエフェクターを調べる。
どうやらBOSSエフェクターでアナログディレイは¥12000程度、対してデジタルディレイは¥17000程度であった。
そして歪みエフェクターであるオーバードライブは新品で¥7000くらいであったことから"コスパ"という一点に絞りなんとデジタルディレイを購入。
うわー、いい買い物してしまったわー、なんて思いながらルンルン気分で帰宅して、即ギターに繋ぐも初期不良で5秒くらいしか音が出ず。
ドイツ語で書かれた説明書は読めるわけもなく、冷静になり歪みエフェクターを買えばよかったー!と思い落ち込んだのが初めてのエフェクターとの出会いであった。

当時のベリンガーはこんな感じのケースで売られていた。

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