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プロフィールとこれまでの経緯

生い立ちからネット通販との出会いまで

1979年大阪生まれ。
小学校時代まで大阪で過ごす。中学校時代は淡路島の進学校で寮生活。高校時代は熊本で過ごす。高校ではまともに勉強せず、バンド活動に精を出す。

高校を卒業して大阪の専門学校に通い、卒業後は20歳からイベントPA(音響さん)の仕事をする。PAは肉体労働で、ベテランにヘルニア患者もチラホラいたため、仕事はとても楽しかったが若いうちに別の仕事も体験してみたいと思い、知人からこれからはインターネットの仕事がいいと言われたのが27歳、2006年。

ネットはおろかPCもまともに触ったことない状態で、ハローワークで未経験歓迎のネット通販の会社を見つけてなんとか入社。ここで初めてのPC購入。かの悪名高きWindows Vista。

その会社は社員20名程度、肉・魚介類を中心に果物・野菜・冷凍食品まで幅広く使う業務用スーパーのような業態で、激安を売りとして楽天やヤフオク、Amazonなど複数店舗を展開していた。

入社したネット通販会社の内情

コードの知識などをイチから教えてもらい、仕事を徐々に覚えてきた入社6カ月後、ちゃんとした会社の業績を教えてもらったら、3億円前後の売上に対して6~7期連続で1,500~2,000万円の赤字。

社長がバブル期に株で儲けたお金を補填してなんとか運営できている状態だったものの、その資金も枯渇しだし、仕入も掛取引ができず現金決済でしか取引してくれないところも出てきていた。

その時、経営者から言われていたのが「もっと売上をあげろ」。ただ、売上をあげることが本当に解決策なのか疑問に思い、ざっくり計算してみたところ、売上を1.5倍にしても赤字は解消されず、むしろ赤字を拡大させる可能性さえあると感じた。

ネット通販で無理に売上をあげようとすると、どうしてもセールに頼ることになり利益率もさがる。数を売るために広告費はかかるし、増加した出荷に対応するのに人件費も増える。利益率はさがって固定費は増えるという悪循環しか待っていないと経営者に伝えたが、「それでも目の前の売上をなんとかしないといけない」との反応だった。

いま思えば、会計知識はもちろんゼロなのでどう頑張っても信じてもらえるはずなんかない。

新入社員が1人で勝手にはじめた改革

でも社内を見渡すと、特に女性社員が疲弊し残業続き。会社も儲からず、雰囲気も悪い。経営者の指示に従っていたら誰も幸せでない状況は変わらないと思い、独断で改革を決心する。27歳、ネットも小売も経験のない、社内で一番下っ端の新入社員だった。

最初に手を付けたのは価格。どれだけ売上をあげても利益率をなんとかしないと意味がないと、販売データを見ながら価格変更で利益効果が高そうな商品を選定し、こっそり価格を変更。経営者に「値段が高くなってないか?」と詰め寄られるもとぼけて誤魔化す。

価格だけあげてもダメだと思い、ページをきれいに作り直し、美味しさが伝わるようにストーリーを見せ、安心感がもてるように心がける。同時に、儲からない商品の露出を勝手に減らしていく。

さらに、店舗の格式をあげて客層のレイヤーを変えるために、カスタマーチームの接客改革をする。電話の対応の仕方やメール(クラウド化して送信前添削を可能に)の文章など、担当の女性社員と喧嘩をしながらクオリティをあげていく。

ちなみにこの客層のレイヤーを変えるという考えは、その後にクレームの激減と女性社員の残業、ストレス削減にも大いに役立ち、その女性社員たちを味方に引き込むことができた。

数値にこだわったマネジメント

また、徹底的に数字に基づいたマネジメントも学ぶことができた。売上アップではなく、利益率の改善こそが赤字を解消する方法だと考え、客単価・利益率・売上構成比などを、x,y,zのような代数にあてはめ、複雑な連立方程式を使ってすべての値の最適解を導き出した。

中学で習った数学が実社会で役に立ったと感動したが、のちに会計を勉強するともっと簡単な計算方法もあったと知る。まあ結果オーライ。

導き出したその各KPIに沿って、徹底的にマネジメントを行ったのは現在でも役に立っている。マネジメントと言っても、その時は一番下っ端なので上司や先輩社員に対しての指示というより「低姿勢なお願い」である。

ただ、その指示はかなり細分化された単純指示。どんな数字に基づいて、なぜそのお願い(指示)を出しているかは詳しく知らせない。ただ、「あなたの担当商品の中のこのあたりを使って、利益率〇〇%の売上を〇〇円作ってほしい」というようなもの。

こういうお願い(指示)を各所に出し、それぞれの結果を組み合わせて、自分が最適解として計画した全体の数字を作っていった。だからこの時の数字構成の全容は社内で他に誰も知らない。ただ、みんなお願い(指示)した通りのことをしていただけで、責任は全て下っ端の自分になる(笑)

ここで、人に対しての指示は抽象的なものではなく、具体的であればあるほどいいと理解した。いかに思考範囲を絞って行動してもらうかは非常に重要。

そしてこのマネジメント(お願い)で、目標達成の確率がかなり高くなる。誤差が目標粗利益の±5%以内という、その会社でかつてない精度をたたき出すことができた。目の前の目標達成に必要なのは、精神論による頑張りやモチベーションではなく、合理的な計画と細分化された指示だとわかった。

改革中に怒られまくって得たもの

その他、細々とした改善を続けながら社内でただ1人、売上アップではなく利益率の上昇を狙う。ただしこの期間、特に初期段階では上司や先輩から「そんなことしてないで、もっと目の前の売上をあげることをしろ!!」と、日常的に怒られ続ける。まあ、一番下っ端のくせに言うこと聞かないのだから当たり前。

が、そこで折れると負けだと思って叱責を聞き流しながら、改革を続ける。毎週月曜になると「もうそろそろクビかな…」と思いながら出社していたが、これはポジティブに考えれば、経営者が自分を試していたのではないかと思う。どれだけ素晴らしい計画を掲げても、実行できなければただの絵に描いた餅、たわごとに過ぎない。

組織を変えるために必要な、周囲の圧力に負けないタフさ・味方をしてくれる社員を増やしていくためのリーダーシップ・人を精度高く動かすマネジメント・合理的な計画を立てるための計算能力。そして、それらの根底にあるべき「なんのため、誰のためにやるか」という信念が一番大事であることを体感できた。

自分の信念は、「なぜみんなこんな頑張っているのに報われないのか、経営者から社員まで疲弊し、誰も幸せではないこの状況はおかしい、誰も変えることができないなら自分が変えるしかない」というものだった。なぜそんな大変でしかない挑戦に対してスイッチが入ったのかは分からないが、ここで自分に負けたらせっかく異業種に飛び込んだ意味がない、と思ったのもある。

新入社員が1人で勝手にはじめた改革、その結果

利益率を上昇させつつ、怒られないように昨年売上の3億円だけはマネジメントの精度をあげて維持し、なんとか1年。

広告や人件費などは増やさず、平均利益率を10%ほど上昇させた。単純計算で2,500~3,000万円ほど残るお金が増えたということ。以前は1,500~2,000万円の赤字だったので、そこに増えたお金を足して、1,000~1,500万円の黒字になるスキムをその会社で作ることができた。黒字に必要な利益率の指標が再設定される。

自分は一番下っ端から3番手となる統括マネージャーに抜擢される。それまで毎日のように聞こえてきた周囲からの圧力も一瞬にして消え、組織というものがどういうものか、結果を出すことが全てであると知った。

そのあと

会社に新たな指標も再設定され、客層レイヤーも変わって接客品質も改善、それらにどのような理由があってなのか、店舗のコンセプトをどう考えるか、計画の立て方など基本ルールが作られた。

ただ、そのきっかけを作った人間が、経営者の言うことを聞かずに勝手に動いたのも事実。たまたまいい結果が出たものの、社員20名そこそこの中小企業にとって、経営者の言うことを聞かない社員など危険分子でしかない。

いつか必ず経営者と大きく衝突することは目に見えていたし、新しく作られた路線を実務面で当面、継承してくれそうな部下もできた。

この会社での自分の役目は終わったということで、統括マネージャーに抜擢されて間もなかったけど、入社から1年半ほどで退職。

20代ではなかなか経験できないようなことを経験させてくれ、いまの仕事の原体験にもなったこの会社には感謝しかない。なんだかんだ好き勝手にやらせてくれた経営者も、今となってはその器を大きく感じる。

独立

その会社で勤務中、同業のネット通販企業を見渡すと、同じような状況の会社はたくさんあった。当時まだネット通販業界は超成長市場とあって、売上至上主義。経常利益がどれくらいかよりも、売上高のある店舗がもてはやされ、ネット通販のコンサルタントも売上アップを目的にしたものばかり。

きっちり経常利益が出て、キャッシュも潤沢な企業なら売上アップが成長に必要になってくることも多いが、そうではなく、利益の出ていない原因が売上不足なのではなく構造的な問題の企業の場合、既存のコンサルタントではサポートできない。

ということで、売上ではなく利益を増やすために、1年半仕事した会社でやったことと同じことをやる、独自路線のコンサルタントとして開業。正直、こういうことをやらせてくれる会社が他にあれば就職も考えたのだけど、残念ながら見つからなかったので開業したというのが本音。

初期のクライアントはネット通販企業を中心としていたが、業種業態は変わっても、利益を出すためにすべきことはどの事業も同じなのが分かり、いまでは業種業態を問わず依頼があればどこでも飛び込んでテコ入れを行っている。


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