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ワークショップを活用した変革プロジェクトを設計する際の3つのポイント

都市部の緊急事態宣言の1ヶ月目処の延長が発表されました。今は、医療の第一線に立ち続けられる方に感謝しながら、多くの人が「自粛」など間接的に貢献出来ることに向き合っているのではないでしょうか。

一方、生命に関わる社会的な危機を乗り越えたあとは、これからの社会や自組織のあり方を再構築するタイミングが訪れることを、私たちは震災などから学んできました。

やがて訪れる「次のフェーズ」を構想する一つの技術として、私たちが専門としている「ワークショップとファシリテーション」があります。

今日は、そうした「次のフェーズ」を構想される皆様に、ワークショップを活用した変革プロジェクトを設計する際のポイントを事例を交えながら、ご紹介します。

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ワークショップは、参加する一人一人の創造性を起点に学習や変化を起こすことを意図して行いますが、その根底にはボトムアップを大切にする文化が流れています。

一方、闇雲に関係者を集めてボトムアップにアイデアを生み出しても、ワークショップを繰り返すだけで、得たい結果を得られない可能性が高いのは想像に難くありません。

「ワークショップを繰り返したけど結局なんだったんだろう・・」

とならないように!まずは、プロジェクトの全体を設計し、成果やプロセスを定める必要があります。

このnoteでは、ワークショップを活用してボトムアップに変革プロジェクトを設計する際のポイントと難しさを3つの観点から述べていきます。

4000字以上の文章になってしまいました。妻にも「硬いw」と言われているので、ご興味のあるところからご覧下さい。


1."目に見えない"成果を定義する

設計の際まず考えるのが、プロジェクトのゴールだが、ゴールはその性質によって大きくアウトプットアウトカムの2つに分けられる。

ここでは、アウトプットを目にみえる成果と定義する。例えば「CIをリニューアルする」「新しい酎ハイのコンセプトを考える」など。

また、アウトカムを目に見えないが起こしたい変化や実現したい状態と定義する。例えば「イノベーティブな文化に変容させるたびに、役職を超えたフラットな関係性を作る」などだ。

前者を議論で扱うのはそこまで難しくない。ある程度経験を積んだビジネスパーソンなら、成果を定義しそこに向けてプロジェクトを走らせるのが仕事の基本動作だと思う。

一方、後者のアウトカムの議論になると途端に進行が難しくなる。「フラットな関係性」「イノベーティブ」「斬新な発想」など、一見それらしいが、何を指すのか分からない言葉が乱立してしまう。

これには色々な要因があると思うが、ファシリテーターとして様々なプロジェクトに伴走していて感じるのは、そもそもこの「目に見えない」領域を扱う言葉が組織内に圧倒的に少ないことだ。

その要因について、関係性や文化など目に見えない課題の指摘は、その関係性を生み出す一員となっている誰かを傷つける可能性が高いことがあるという仮説を持っている。例えば自分の部署は風通しがいいと感じている部長に対して、「フラットな関係性を作りたい」と課題提起するのはハードルが高いのではないだろうか?(本当にフラットな関係性なら、それを伝えられるとは思いますが!)

人の気持ちを慮る文化が根底に流れている企業の場合、その優しさが関係性の問題を扱うハードルになることも多い。結果、この領域の言葉が組織内で育たない。

それ故に、気がつくとビジネス組織は、扱いやすいアウトプットのみで語る言語のみ獲得していくシステムになりやすいのではないだろうか。

(私たちがプロジェクトを設計する際に、「目に見えない課題を扱う共通言語作り」からはじめることも多い)

アウトカムを設定する際は「どのような変化を生み出したいのか?」と言う問いを立てる(例えば「CI(アウトプット)をつくることによって、どのような変化を生み出したいのか?」など)

ここではその詳細のプロセスは割愛するが、この辺りの想いについては、以前の記事に記載してるのでよろしければご覧下さい。


この次は、定義されたゴールに到達するためにプロセスをどのように設計するか考えていきたい。

プロジェクトのマネジメントについては、様々な知見が既に広く紹介されているので、このnote記事では「目に見えないプロセス」を扱う切り口を紹介していく。

2.トップダウンとボトムアップを戦略的に扱う

ミミクリにご相談をいただく場合は、ワークショップの持つボトムアップの力に期待いただいているケースが多いので、プロジェクトの力点もボトムアップに置かれる。

一方、冒頭で述べたようにボトムアップの力だけでは、得たい成果に至らない可能性が高いので、トップダウン-既に答えや枠組みがあるものとして、経営陣やPJオーナーから提示する方針についても積極的に織り交ぜていく。

何故だろうか?いくつか理由をあげてみる。

① プロジェクト成果の合意形成を考えると、トップマネジメントが考えてきたビジョンや戦略を無視できないという事情

② 現場の創造性を刺激するための制約としてトップダウンを戦略的に活用する

③ WSの文化である「民主制」を大切にするならば、トップの考えもボトムの考えも隔てなく民主的に扱いたい

イメージが掴みづらいと思うので、事例を一つ紹介したい。

A社がB社を吸収合併した後に、両者のカルチャーを統合するための行動指針の策定を目指したプロジェクトがあった。A社のトップは、自社の行動指針を一度壊して、B社メンバーの想いを反映しゼロベースで考え直したいとプロジェクトスタート時に言い切り、それがコアな要件の一つとなった。

ただ、A社側に「B社に対する遠慮」のようなものを感じ、ファシリテーターの違和感となっていた。対話を重ねる中で、B社の「行動指針の使われ方」に引っかかりがあることが浮かび上がってきた。具体的には、行動指針自体はゼロから作り直したいが、その指針がワークしている姿は、A社の文化を引き継ぎたいと潜在的に考えていることが分かってきた。

そこで、ワークショップ実施時に「行動指針がワークしている姿」について、A社の事例を紹介してもらいB社メンバーの反応を探った。その感覚をチームで共有しながら行動指針の言語化を行うとともに、WSの即興性を生かし「このWSの場で、行動指針がワークしているか」をお互いがフィードバックするセッションを行い、生まれつつある行動指針が理想的にワークするか確かめ合いながら、プロジェクトを推進した。

このケースでは、ボトムアップにB社メンバーの想いをベースに組み立てながらも、 トップの想いを引き出し、トップとボトムの緊張関係を生かしながらプロジェクトを設計した。このように、トップダウンとボトムアップのバランスを取りながら両者の緊張関係を戦略的に扱うのが、プロセスを設計する上のポイントとなる。


3.発散と収束のダイナミクスをプロジェクト全体でハンドリングする

発散と収束という言葉自体は、ミーティングやブレストの進め方の「基本のキ」なので、多くの方が使いこなしていると思う。

一方、数ヶ月〜一年間に渡るプロジェクト全体の発散と収束のプロセスとなると、扱う難易度が上がる。

その理由の一つが、発散と収束の入れ子構造のハンドリングの難しさがある。

例えば、あるメーカーさんと、新しいプロダクトアイデアを生み出すことを意図して、ファシリテーターとして伴走したプロジェクト。Phase1で、自分たちが創り出したい世界観を描き、Phase2で描いた世界観の中で、自分たちの技術がどう使われたいのか検討を進めた。そのプロセスを簡易的に記載したのが次の図になる。

それぞれのフェーズの中に発散と収束があり、さらに発散フェーズの中にも小さな発散と収束があり、マクロ、ミクロ両面からハンドリングしている様子が分かると思う。

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これを更に複雑にするのが、発散と収束それぞれについて、ポイント②でのべた、トップダウンとボトムアップのバランスが必要になることだ。図に書き加えると次のようなイメージだろうか。

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それぞれのフェーズごとに、何をトップダウンで決めて、何をボトムアップで生成するのか?という問いに一つ一つに向き合う必要がある。


発散と収束をハンドリングすることを難しくする要因には、この他にもファシリテーターの個性の問題もある。

「発散」のフェーズでは、一人一人の個性を大事にし、場に出される意見に共感することでアイデアを膨らませていく。そのため、共感的な態度や、傾聴的な態度が得意なファシリテーターがワークするかもしれない。

一方、収束のフェーズでは批判的にアイデアを検討しながら、考えをまとめていく必要があり、傾聴的な態度だけではプロジェクトを前に進める力に欠ける。

熟達したファシリテーターは自分の強み弱みを使いこなす印象があるし、ファシリテーターがチームを組んで役割分担しながら、進めるのも一つの方法だろう。

ファシリテーターの個性については、うちのボスのこちらの記事も是非ご参考ください!


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以上、4000字強のnoteになってしまいましたが苦笑、ワークショップを活用した変革プロジェクトの設計をテーマに、

1."目に見えない"成果を定義する

2.トップダウンとボトムアップを戦略的に扱う

3.発散と収束のダイナミクスをプロジェクト全体でハンドリングする

の3つについて、述べてきました。

個人の衝動からボトムアップにスタートする、事業開発や組織開発などのプロジェクトに取り組まれるみ方の参考になればと思い記載してきました。僕も日々様々な現場で試行錯誤しているので、ご意見やコメントなどいただけると嬉しいです!

このような情勢下ですが、連休明けの皆様の変化へに向けた働きかけが、気づきと発見に満ちたプロセスになりますように!


P.S. 最後に宣伝

5/23(土)、このnoteでも述べてきた、様々な矛盾や緊張を扱う鍵となるミドルマネジメントをテーマにミミクリデザインでセミナーを開催予定です。是非ご予定ください!


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