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続・チューリッヒ闘病の記録

10/7
今日も熱がない。熱がないとこんなにも過ごしやすいのかと実感する。でも倦怠感がすごく、ルーシーは半袖なのに私は4枚も長袖を着て外に出る。市内を路面電車で移動し、チューリッヒ美術館に向かった。この美術館がとても不思議で、開いているのか閉まっているのか、ぱっと見た感じ分からないくらい人がいなかった。
やっぱりすぐに疲れてしまう。鼻がすごく詰まっているわけではないのに、食べ物の味や匂いが半分くらいしか感じられないことに気づく。この倦怠感も含めコロナの症状だと思い、ゾッとする。

10/8
朝、生姜を刻んでお湯に入れ沸騰させたものをユエが用意してくれた。この蒸気を顔に浴び、吸い込むと良いらしい。本当に効くかどうかはは分からないけれど、薬を飲むのに疲れたので、こういう方法は何でも試したい。何より外国で体調を崩すのはいつも以上に心許なく、こうして気にかけてくれる人たちがいることが本当にありがたい。
ルーシーの休みが土日だけなので、午後からはハイキングに出かけた。ルーシーいわく、スイス(特にチューリッヒ)は結構退屈な場所らしい。でも自然を感じるにはとても適しているとのこと。私は自然もハイキングも大好きなのでその点は好きになれそうだが、とにかく物価が高すぎる。
ハイキングの途中、たくさんの牛を見た。ルーシーは積極的に牛たちに触れに行って、手を舐められたりもしていたが、私はあまり手を出せなかった。
ユエが疲れている様子だったので、芝生の上で休憩した。ユエが新しいカメラを最近買ったので、ルーシーが私とユエの写真をたくさん撮ってくれた。
その後登ってきたのとは別の道を、時々映像を撮りながら降り、夕方湖のほとりに座ってゆっくりした。持ってきた瓶ビールを開けた頃には、3人ともヘトヘトになっていた。
帰り道、今日は良い日だったとルーシーとユエが何度も言っていて、そのことがなんだかとても嬉しかった。私の体調不良でふたりの時間を壊していないことに安心したのだと思う。

10/9
朝ユエとルーシーとカフェで朝食を取る。スイスは本当に物価が高く、日本円でひとり1000円以上した。今まで住んでいたイタリアだったら同じコーヒーとクロワッサンでおそらく500円にも届かないと思う。ルーシーは仕事があるので先に帰り、ユエと少し残って政治の話をしていた。ふたりとも若干絶望的な気持ちになり家に帰る。
昼食を家でみんなで作り、食べながら相変わらずイギリスのコメディショー「Cunk On Earth」を観た。
午後、今回チューリッヒで撮影する予定だった映画についてユエとルーシーと話した。私が体調を崩さなければ、1週間前にしていたはずの議論だ。4日ほどしか残り時間がないことが本当に申し訳なく、残念だと思う。でも具体的な進め方や内容の話になると、やっぱり自分も熱くなってしまった。ユエとの議論は久しぶりで、ミラノで一緒に脚本の勉強をしていた頃を思い出す。私たちは本当によく反論し合うけれど、それでも結局は仲良くできるから大丈夫だと思う。
夜ユエの思いつきで、中国の麺料理をピザの生地を細く切って作ってみた。結果は成功とは言えず、私は食べきったけれどふたりは残していた。味は美味しかったけれど、たしかに麺が太すぎて、かなり小麦粉味が強く重たかった。
食後には実際にショット撮り始めることができて良かった。チューリッヒでの残り時間は少ないけれど、出来るだけの挑戦をしてみたい。カメラの前とはいえ、ユエとルーシーとミラノ時代の共通の思い出について話すのは楽しかった。寝る頃になってやっぱり疲れを感じ始め、若干寒気を感じていた。

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