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白い光の朝に。

白い光の朝だった。
普段よりも少し遅く起きて、植物に水をやり、コーヒーを淹れる。
なんてことのない、いつも通りの休日の朝。
かまってほしさに騒ぐ愛犬を横目に、ソファに寝転んで微睡んでいると、手にかかるブラインド越しの光がいつもより白く感じた。

そういえば、こんなに写真をたくさん撮ってきたのに、太陽光の色について深く考えたことはなかったかもしれない。

もちろん科学的な見解では光の色についてはしっかりと理論が展開されているが、時には夕日の暖色のグラデーションに少し緑がのったり、時には曇りの寒色の青をいつもより強く感じたりする。

きっと自分の心理的な部分と、写真に撮ってみるとこうなるかなっていう推測が作用してのことだと思うが、自然が織りなすカラーパレットは無限の色彩を魅せてくれて、僕の感情をあちこちへと誘う。

今朝見た白い光は、またひとつこの世界の美しさを教えてくれた。
平然を装っていた朝に漠然と考えていた未来への期待と不安や、間柄が変わることへの緊張。自分も気がついていなかった、心の薄黒い膜を光がサーっと浄化してくれたのかもしれない。

都内は桜が例年より早く咲き、春風が枝を揺らしている。
舞い散る花びらが、朝の光に重なった。

今日、僕らは入籍をした。

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白い光はたくさんの顔を思い浮かばせてくれました。
自分にとって大事な出来事だったので、記録してみました。
いつも支えてくださっている皆さま、本当にありがとうございます。
そしてこれからも末長く、夫婦共々どうぞよろしくお願いいたします。
感謝を込めて。
2021年3月26日 小穴 啓介


写真は昨年、婚約をした時。
五島列島をまわって、その足で向かった嬉野の桜も満開だった。
忘れられない大きな桜の木。

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追記2021年5月9日

ポパイからフイルムが戻ってきたので、あの日のことをもう少しだけ。
何度も何度もカメラを向けてきた相手なのに、緊張で67が重く感じたのを思い出す。「この写真が終わりで、始まり」そんなことを二人とも無言で感じていた気がする。ファインダーを覗いて一声かけると、彼女がスーッと涙を流した。僕はシャッターをきった。

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視界が滲んでピントが合わない、けど撮る。撮る。撮った。
それが自分で、それが相手なのだと。

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白い光の朝に。
雲ひとつない真っ青の空が広がり、満開の桜が春風で揺れ、暮れには鮮やかな夕陽が街を照らし、丸い月がちょこんと出ていた。
そんな日だった。

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もしこれから先家族が増えたとしたら、入籍の日のことを問われたとしたら、僕はそんなことを伝えてあげたい。僕らの入籍の日は、世界が美しく飾ってくれたと。

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(セルフタイマーが機能せず、見ず知らずの通りがかりの方が67できってくれた思い出の1枚。)

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妻 , 2021年3月26日



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