冷蔵庫は5分くらい開けっ放しにするくらいは特に問題ない。サーモグラフィで検証する開けたら閉めろ問題。

開けたら閉めろ。扉を開けっ放しにすることは、よくない印象の場合が多いかと思います。以前、ドアの例を紹介したので、今度は冷蔵庫で試しましょう。サーモグラフィを使って、冷蔵庫の扉を閉めた場合、開けっ放しにした場合を比べてみましょう。

条件
3月中旬。冷蔵庫の扉を、締めた状態と、開けっ放しにした状態で部屋と冷蔵庫をサーモグラフィで測定する。扉が閉まっている状態からスタートして、扉を開けてすぐに、最長5分くらい待って、どれくらい差がでるか可視化してみよう。(扉を開けっぱなしにしてしばらく経ったらどうなるかについては、比較していない。) カメラはFLIR C3使用。

冷蔵庫の扉が閉まっている状態

写真A。冷蔵庫の扉が閉まっている状態のサーモグラフィ。冷蔵庫の扉と室内には大きな温度差はない。着目するべきは冷蔵庫の横側。内部の温度を下げるため、冷蔵庫は側面から熱を放出している。部屋の温度が15℃前後に対して、冷蔵庫の側面は20℃前後と明らかに高い。現時点では、冷蔵庫の扉の温度は上下に偏りはない。

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冷蔵庫の扉を開いた状態

写真B。開いた直後の冷蔵庫の内部。冷蔵庫の内部の温度は、だいたい4℃前後なので、内部が黒くみえているのは、理にかなっているといえる。冷蔵庫の扉の内側は、開いた直後でもおおむね10℃以下である。内部の食品、上の段等の温度は、おおむね7℃前後だと推定できる。

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写真C。写真Bの状態で冷蔵庫から離れてとった写真。扉の外側の温度は、写真Aの温度とほぼ変わらず。すなわち、扉を開けてすぐ (数秒後) は外側の温度には大きな変化はない。一方、冷蔵庫の内側の食品の温度は写真Bとほぼ変わらず。

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写真D。写真Cの状態で冷蔵庫からさらに離れてとった写真。冷蔵庫の扉の下側の温度が写真Aに比べると下がっている。また、冷蔵庫の中の温度は依然と10℃以下の状態を保っている。冷蔵庫の内部については、下側より上側のほうが温度の上昇が顕著である。こうしてみると、冷蔵庫の扉の断熱効果は凄い。

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写真E。写真Dの状態から5分程度放置した写真。内部には写真Dと比較すると一見大きな変化はない。扉側の調味料等の温度がやや上昇している印象。食品の温度は、10℃程度となっている印象。

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写真F。写真Eを撮影した後、冷蔵庫を正面から撮影した写真。明らかに、冷蔵庫の扉の上側と下側で1℃以上温度に差がある。冷蔵庫周りの温度が均一に低下するわけではなく、下側の扉の温度が最も顕著に低下した一方、冷蔵庫の周りには写真Aと比べて大きな温度の低下はない。この結果は、冷たい空気は暖かい空気に比べると密度が大きく、下に移動しやすい傾向があることに起因しているのではないかと考えられる。

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考察

冷蔵庫の扉が開いている状態と閉じている状態で、サーモグラフィで測定し、温度を比較した。扉を開けてから5分程度では、冷蔵庫の中の温度はそこまで変化していなかった。すなわち、この程度ではさほど影響が出ていないことがわかる。一般的な冷蔵庫の場合、冷蔵庫の扉が閉まっている状態のときに、コンプレッサが稼働し、内部の冷却を行う。すなわち、冷蔵庫を開けている状態では冷却は行われず、扉を閉めた時点で冷却が開始される。このとき、冷蔵庫を長時間開けているほど冷却に時間がかかり、電気代が余分に生じることを示唆している。しかしながら、この程度では電気代への影響は小さいようである。引用文献によると、一般的な冷蔵庫の消費電力は150~600 Wといわれる。その最大値を使って計算 (消費電力=コンプレッサーの稼働時間と仮定) すると、電気代の変化は以下のようになる。したがって、1時間程度の開けっ放しは電気代的にはさほど問題ないといえる。

1時間 600W÷1000×1時間×27円=16.2円
24時間 600W÷1000×24時間×27円=388.8円


今回、開けたその時点では内部の食品の温度は5℃程度だったのに対して、5分程度経過すると、7℃前後から10℃程度に若干上昇した。冷蔵庫の扉を開けっ放しにすると、内部の食品等の温度は明らかに上昇し、元に戻るには、時間を要する。Panasonicによると、新しく設置した冷蔵庫が充分に冷えるには、冬等では4時間程度、夏場では1日程度の時間を要する。事前に稼働していたとはいえ、それなりに時間を置くと中に入っていた食品などの温度は室温に近づく。すなわち、カビ等の雑菌が増えやすくなり、食物が腐ったりしやすくなる (食品を低温に保つのは、低温に置くことによって食品、もしくは食品中の微生物等の、化学反応を遅らせるためである。化学反応は一般に、低温ほど遅くなる)。食品的には、1時間程度常温におくのは、食品の劣化を早めることを意味している。とはいえ、5分程度では、大きな影響はなさそうである。

冷蔵庫の外側に着目すると、開いた扉の下側の温度の低下が顕著であった。空気の密度は0℃のとき1.251 g/m3、20℃のとき 1.166と、低温の空気は高温の空気より密度が大きい。したがって、下方向のほうが冷却されやすく、今回のような結果になったと考えられる。

まとめ

冷蔵庫の扉を5分程度開けっ放しにしたとき、扉を閉じている状態から、どれくらい温度が上がるかを調べた。その結果、冷蔵庫内部の温度は概ね10℃以下を保っており (といっても、5分程度で3℃程度上昇した)、意外にも大きな問題はなさそうである。冷蔵庫の扉を開けっ放しにしたとき、温度が特に下がっている部分は冷蔵庫の扉の下側であり、この結果は冷たい空気の密度が暖かい空気の密度より大きいことに起因すると考えられる。故に、冷蔵庫のドアの開けっ放しは5分くらい開けっ放しにした程度ではそこまで問題ないから、発見しても怒りすぎないであげてね笑。1時間以内なら気づいた人が閉めてあげよう笑。

前回の検証結果、ドア編


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