Book078『本心』平野啓一郎

生と死がテーマの本。
自由死と呼ばれる死の選択権が認められた近未来の日本が描かれている。

死の寸前の景色を自分で選ぶ権利は人間社会で認められるべきか。愛する人に手を握られたいのか、あるいは仮想空間内の現実そっくりな世界でその人々に囲まれていれば同じ精神的満足を得られるのか。

カズオイシグロの『クララとおひさま』同様、人間存在そのものの価値について考えさせられる小説であった。完全な過去の記憶やデータを持ち、機械学習が可能な存在は、実体はなくても私と呼べるか。または、もしそのデータに加えて完全に見た目も同一の機械が一緒であればそれは何なのか?

逆にもし肉体を完全に他社に委ねた場合、どこまでが自分の行動となり得るのか。人を人たらしめているもの、自分を自分たらしめているものはいかにか曖昧か、今後技術の発展とともに問題となってくるであろう。


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