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#新大久保

岡本綺堂の大久保①

岡本綺堂の大久保①

 「その年の春はかなりに余寒が強くて、二月から三月にかけても天からたび/\白いものを降らせた。わたしは軽い風邪をひいて二日ほど寝たこともあった。なにしろ大久保に無沙汰をしていることが気にかゝるので、三月の中頃にわたしは三浦老人にあてゝ無沙汰の詫言を書いた郵便を出すと、老人からすぐに返事が来て、自分も正月の末から持病のリュウマチスで寝たり起きたりしていたが、此頃はよほど快くなったとのことであった。そ

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岡本綺堂の大久保②

岡本綺堂の大久保②

 大正12年。
 その頃でもまだ大久保は東京の郊外だった。淀橋区大久保として、東京市に編入されるのは、昭和7年のことだ。大久保に住んだときのことを、綺堂は「郊外生活の一年」という随筆にまとめている。

 「省線電車や貨物列車のひびきも愉快ではなかった。(中略)湯屋の遠いことや、買物の不便なことや、一々かぞえ立てたら色々あるので、わたしもここまで引込んで来たのを悔むような気にもなったが、馴れたらどう

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