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「くすみ色」を考える

こんばんは。グラフィックデザイナー、カラリストの藤田です。
今日は「くすみ色」について。

もてはやされる「くすみ色」

ファッションや文房具などでよく聞く「くすみ色」。
「ニュアンスカラー」などとも呼ばれます。
柔らかくて、大人っぽい素敵な色たちです。

そして、ふわっとした印象の響きですよね。
レアチーズケーキのような、不思議な歯ごたえの食べ物のよう。

自分も好きな色たちです。

色名ではなく、トーン

まず「くすみ色」について定義してみましょう。
くすみ色は「具体的な色名」ではなく、トーンに関する色彩です。

やや高明度で、低~中彩度のトーン帯。
ライトグレイッシュ、ソフトトーンあたりですね。
やや色味が入るので、基本的に無彩色(明るいグレー)は「くすみ色」に該当しないと思っています。

明度を80~90%、彩度を20%程度にすると、近い色が作りやすい

明るくて、ややグレーがかった、それこそ「くすんだ」色。
霧が立ち込めた日は視界が白っぽくなるように、「くすんだ」は「霞んだ」に近い感覚かなと思います。

言葉の隙間をかいくぐる色たち

この「くすんだ」が重要で、「澄んだ」「濁った」とはまたちょっと違うんですよね。
この言葉の隙間、というか雰囲気をかいくぐるようなところが、また「くすみ色」らしいなと感じます。

澄んだ色との比較

同じように明るく薄くても「澄んだ色」は「くすみ色」と言えるか、曖昧な感じがします。もうこれは個人の感覚に依りそう。

たぶん、上図の色の中には「くすみ色」とは言いづらい色が何色かあるのではと思います。
柔らかい色だけど、明瞭感が強い感じ。元気な印象。

続いて、この辺りはどうでしょう?

個人的には、「くすみ色」と言うには、もうちょっとだけ「どっしり感」が欲しい印象ではあります。
くすみ色は「ちょっと大人っぽい」印象が魅力なので、この色たちは少しふわっと浮いていて、幼さが残る感じですね。

濁った色との比較

続きましては、少し明度を下げた濁った色。ダルトーン付近。

オレンジや黄色は明度が高いので、まだ気持ち「くすみ色」と言っても通じそうですね。
でも軽さがなくなって、秋を感じさせる様相になってきます。

さらに明度を落とすと。

ここまでくると、かなり重厚感漂うので、くすみ色とは言えないですね。

ちょっとの差、大きな差と色々比較してみましたが、
かなり絞った領域の色を指す言葉だなというのがよく分かりました。

流行りの色と取るか否か

いまはいろんな場所で使われているので、流行っている色という感覚だと思います。使ってると、なんだかオシャレになるというか。

でも「今だから使える色」ではなくて、
時代の流れに関係なく、いつでも扱いやすい色だと思います。

色の流行というのは、単純に
「どのトーン(領域)を切り取るか」と「面積の問題」かなと考えています。
※商業的に決められた流行色という定義は置いといて。

今は主役として、この「くすんだ色と言われる領域」を、「広い面積で使う」ことが美しいとされていますが、
その時代が過ぎ去っても、
白や黒に優しく色を添える差し色として、
強い配色を和らげる役割として、
また今後も活躍していくはずです。

流行っているうちに自分になじませて、
いつでも使えるようになるといいですね!

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