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趣深い日本の色彩 #27 桃色

こんばんは。グラフィックデザイナー、カラリストの藤田です。
昨日に引き続き桃のお話。

日本のピンクの代表

バラ属サクラ科の植物である桃は、春先に明るいピンクの花を咲かせます。
その実には不老長寿を与える、邪気を払うなどの力があるとされてきました。
古事記では、伊邪那岐命いざなぎのみことが、黄泉平坂よもつひらさかから逃げ帰る時に、追っ手に桃の実を投げて退散させる描写があり、桃のパワーみたいなのを垣間見ることができます。

「桃色」は、桃の花(あるいは実の皮)の色。
ピンクの代名詞になっていて、
「桃色」を使うと恋愛的なニュアンスが匂ったりします。
歌詞でたまに見ますよね。
あと、戦隊モノのピンクを纏うキャラクターに「桃」という言葉が使われているのもあります。
「ピンク」という言葉の響きに比べて、「桃色」は若さや甘酸っぱさも、大人なニュアンスも出せる言葉という気がします。


古くからの付き合い

桃は中国原産で、紀元前から人の暮らしとともにあったと言います。
日本では弥生時代には伝わっていたそう。

染める時は、桃の花そのものではなく、紅花を用います。
流石に桃の花では、布がしっかり染まるほどの赤を出すのは難しいですよね。
ちなみに染めた桃色は「桃染」と言います。
読み方は「ももぞめ」あるいは「つきぞめ」。

「桃色」という色名は、室町~江戸時代あたりから出てきたみたいですね。

そのせいもあるのか、平安時代の配色である「かさね(襲、重ね)の色目」には、意外と桃を冠したものが少ないです。
梅や桜は数あるのに、ちょっと不思議ですね。花はよく詠まれているのに。
自分が見た中だと「表:薄紅 裏:萌黄」くらいでしょうか。


東西の桃色の違い

冒頭で「桃色」は花の色を指すと言いましたが、欧米だと桃の果肉の色を指します。
「ピーチ」という色名は、黄桃のような柔らかい黄みのオレンジな色彩をしています。
同じ桃を指す色でも、どこを指すかで雰囲気が変わりますね。


色としてはこれくらい

紀元前からの付き合いで昔から好まれているのに、
色名として使われるようになったのは比較的新しいという、不思議な「桃色」のお話でした。

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