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趣深い日本の色彩 #24 滅紫

こんばんは。グラフィックデザイナー、カラリストの藤田です。
今日は紫から色々消し去った色のお話。

正しく読むのが難しい

滅紫って、日本の伝統色として読むとちょっと難読だったりします。
「めっし」で間違いではないのですが、
正しくは「けしむらさき」と読みます。

滅を「けす」と読むのは、言われれば「なるほど!」と納得できますが、普段思いつきませんよね。

滅の意味

滅の意味は「色みを消す」こと。
いわば「くすんだ、鈍い」などの色みを指します。

言葉の通り、紫の華やかさを消した、グレイッシュな紫を指します。
紫を象徴するような「華やかさ」「艶やかさ」。
そんな匂い立つような特色を抑えた色です。

染め方

紫は紫根を灰汁媒染で染めます。
この時使う紫根は8斤で、深紫を染めるのに必要な30斤と比較しても、ずいぶん少ないのが分かります。
一旦紫を染めた後の染液を一昼夜放置することで、色みを分解した灰色っぽい染液を作り、それを使って染めた色とされています。
紫根の染液を無駄にしないという意味もあったのでしょうか。

文献によっては、高温で灰汁媒染すると鈍く、低温なら鮮やかになるというのも見受けられますね。
ただ逆で紹介されている本もあったので、個人的には吉岡さんの『日本の色辞典』に記載のある「一昼夜放置して色みが消えた液で染める」形で記したいと思います。

滅したとは言っても

そこは流石に紫。
くすんだ色みと言っても、平安時代において「本紫に次ぐ高位な色彩」として扱われていました。
滅紫の中でも「深・中・浅」に分けられているのも面白いですね。
深滅紫こきけしむらさき浅滅紫あさけしむらさきと、密度の高い字面に圧倒されます。画数多すぎ。

グレイッシュになることで、威厳のある色彩へ姿を変える紫のお話でした。

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