沸流東征
「また移るのですか?」
王の決定に側近たちは、ウンザリしていた。
「仕方なかろう、この地は国造りに適さん」
「まぁ、そうですけれど」
沸流王とその民たちは、もともと海の向こうの大陸に暮らしていた。そこでは大乱が起こり沸流の一族は勢力争いに負けてしまい、彼は母親と弟とともに新たなる土地を求め故地を去った。彼らの統治下にいた人々もそれに従った。
ひたすら東に向かって進んだところ海辺に到着した。
沸流は此処に定住することを提案したが、母親と弟は“この地は良くない”と言って別のところへ去ってしまった。
沸流は残った人々と共に国を立てたが、やはり土地が良くなく上手くいかなかった。
一方、別の地に移った母親と弟は良地を見つけ着々と国造りが進んだ。
沸流は新天地を求めて海を渡ることにした。
そして、此処に辿り着いたのだが‥。
「今回は上手くいくと占卜にも出たしな」
こうしてやって来た地で沸流はようやく国を開くことが出来た。
沸流は近郊の集落を次々と自身の支配下に置きその領土を広げていった。
ある日、地元出身の臣下が
「ヤマトの地に出て、大王になりませんか」
と提言した。
「そうだな、この島の全ての統治者になってみようではないか」
彼は多くの兵を率いて東へと発って行った。
百済建国物語に登場する温祚王の兄 沸流について書いてみました。史書には母と弟と別れた後の彼の足跡については記されていませんが、韓国の研究者の説の中に日本に来て大王(オオキミ)になったというのがありましたので、それを利用(?!)しました。
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