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パラアスリートに夢を語ってもらう「ゆめすぽ☆彡」 ~第2弾 小貫怜央さん(車椅子ソフトボール選手)~【後編】

昨日の前編に引き続き、本日は小貫怜央さんインタビューの後編をお届けします!

「バリアフリー」が逆にバリアになることもある

——次に、一旦競技の話から離れて日常生活について伺いたいのですが…

日常生活の中で、大変に感じる事や障がいを通して新たに気づいたことなどはありますか?
まず僕の障がいについて話すと、走れないけど歩くことは出来るし、少し痛みはあるけどしゃがむこともできるんです。走る必要のないノックやキャッチボールももちろんできます(笑) だから日常生活を送る上での不便はそこまでないというのが正直なところですね。
ただ、自分が障がいを持つ立場になっての発見というのはあります。僕の家と駅の間には盲学校があるんですが、そこに通う人のために駅の周りには点字ブロックがたくさん置かれているんです。でもそれは足に障がいを持つ僕からしてみると、足首のことを気にかけながら歩くことになるので少し大変に感じることもあるんですね。
確かに点字ブロックは「障がい者」のために作られたものだけど、一方で他の「障がい者」が苦労することもある。つまり、「バリアフリー」が逆にバリアになってしまうこともある。こういう視点は、以前の僕だったらきっと気づけなかったと思います。

コーチという立場から見る学生スポーツの輝き

——様々なことに精力的に挑戦している印象の小貫さんですが、どんな人から普段刺激を受けていますか?

難しいですね。でも、今僕は慶應の中等部と大学女子部のソフトボールのコーチをしているんですけど、そこにいる選手たちから学ぶことは多いかもしれません。
最近で印象に残っているのは、大学の秋のリーグ戦の時かな。もう大学3年生で引退間近の子なんだけど、ソフトは大好きで真面目に頑張ってるのに、不器用で今までなかなか成果が出せていなかったんですよね。でもその選手が最後の最後の試合で初めてヒットを打ったんです。その姿をみた時、「あ~こんなことってあるんだ」と思いました。やっぱりスポーツの世界には、苦労して苦労して、最後の最後に花が咲くことがあるんだなと。こういう姿を見ると、自分も本当に刺激を受けます。学生スポーツの、その瞬間にしか得られない輝きみたいなものをコーチという近い場所から見ることができるのは、自分にとっても良い経験になっています。

(提供:小貫さん)

車椅子ソフトの裾野を広げていくことが自分の使命だと思う

——小貫さんが今抱いている夢はありますか?

まず、車椅子ソフトボールに関わる者としてはやはり、『車椅子ソフトの2028年ロサンゼルス五輪での正式種目化』というのは大きな目標で、そこに向けて働きかけていきたいと思っています。それに加えて、自分自身も選手としてそこに出場したいという思いももちろんあります。
あともう一つ、今ほぼ叶いかけている夢の話をすると…
実は次の3月から、日本とアメリカを通しておそらく初めての、をさせてもらえることになったんです。急に話が舞い込んできて、なかなか現実感はまだ無いんですが、これをきっかけに今まで以上に競技の発展に寄与していきたいなと思っています。車椅子ソフトのプロ契約をさせてもらえることになったんです。急に話が舞い込んできて、なかなか現実感はまだ無いんですが、これをきっかけに今まで以上に競技の発展に寄与していきたいなと思っています。

——すごいですね!!どのような経緯でプロ契約に至ったんですか?

茨城アストロプラネッツという、野球の独立リーグのチームが、何年か前に車椅子ソフトチームを作ったんです。そこが本格的に車椅子ソフトに力を入れていきたいという話になってきて。その流れの中で、初のプロ契約をしたいということで「選手兼監督」ができる人材を探していて、そこで声をかけてもらった感じですね。
自分自身、「プロ契約が車椅子ソフトボールの世界でも生まれたら良いな」とは前々から漠然と考えてはいたんですが、まさかこんなに早く実現すると思っていなくて(笑) いざ自分が声をかけてもらった時も、「そんなこと本当に実現するんだ」ってかなり驚きました。

——プロ契約となると、生活はどのように変わってくるんでしょうか?

でも、そこまで大きく生活が変わるという感じにはならないと思います。週一で茨城に行って練習と指導をして、東京では来年以降も大学院生として勉強しつつソフトボールの練習も今まで通りしていく形になりますね。

——パラスポーツの世界にも、小貫さんのようなプロ選手が増えていったら、今後どんどん夢が広がっていきますよね!

そうですね。ただプロ選手というだけで、生活していけるわけではないというのが難しいところだとは思います。まだまだ業界として、お金ががんがん回っている状態ではないので、個人的にはプロ契約という選択肢があるのはいいことだけれど、今すぐどんどん増えればいいとは思っていません。
プロ契約の拡大というより、競技自体の知名度を拡大していくことの方が、直近で達成されるべき課題だろうと考えていますね。

地道なコミュニケーションの積み重ねで愛着を生み出したい

——今後車椅子ソフトボールの普及活動に取り組む上で、現段階で感じている課題はありますか?

まず日本での課題で一番大きいのは、練習場所がないことだと思います。車椅子ソフトは、堅い地面の広い場所がないといけなくて、グラウンドや芝生の上ではできないんですね。
あとは、世界的にもっと普及していかないとパラリンピックの正式種目化が難しいという状況の中で、そもそも野球・ソフトボール自体が世界的に人気の低いスポーツだというのが悩みどころです。ただ、広く普及していないとはいえ、少なからず需要があるのは確かなので、そこを切り口にどう拡大させていくかが大事だと思います。

——こういった課題に対して、小貫さん自身はどのようなアプローチをしていきたいですか?

やはり最初から世界での普及を目指すよりも、国内で普及させていく方が現実的だと思っています。普及にどれだけ直結するかはわからないけれど、日本国内の車椅子ソフトをやっている人たちとできるだけコンタクトをとるようにしたいですね。相互に活動を応援している姿勢を見せあうことで、結束力や愛着が生まれると思うんです。大きな大会が開催されるタイミングで、会場の近くにある車椅子ソフトのチームの練習に顔を出して交流するとかね。
車椅子ソフトを好きになってもらえる人を増やしてその人たちにさらに競技を広めてもらうのが、今最大限できるアプローチだと思います。

点と点はいつか必ず繋がっていく

——最後に、今小貫さんと同じように夢を追いかけている学生にメッセージがあればお願いします。

メッセージって難しいですね(笑)
僕自身について言うと、自分が今までやってきたことで自分のことを評価してくれる人がいるのはありがたいことなんですが、自分としてはまだ何もやり遂げられてはいないなという感じがしているんです。ただその一方で最近は、今まで自分が「面白そう」という興味だけを頼りに手を出してきた活動(車椅子ソフト・車椅子バスケ・コーチなど)が少しずつ繋がってきているという実感があります。
一見全部別の方向に手を出しているようなことでも、意外とそれってお互いにリンクする部分があって、双方向に良い影響を与えあうことがあるっていうか。
だから、自分が楽しいと思えることをとりあえず始めてみて、やり抜けばきっといいことあるよと伝えたいですね。

小貫さんありがとうございました!最後に記念撮影📷


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