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【私とお能: No.4 】 日常にちょっとした彩りを

「私とお能」エッセイ

いっきゅみ (2011年度卒)

慶應観世会に入り謡曲と仕舞のお稽古を始めて早15年、もうそんなに経つの?
と思うばかりの今日この頃です。
とはいえ生涯現役という方も多いこの業界、自分はひよっこどころか卵からかえったばかりのような存在でしょう。

さて、そんなそこそこ長いお付き合いにもなってきたお能と私ですが、お能のことを考えるのはお稽古してるときだけではありません。
生活の端々でも、ついつい能楽というフィルターをかけて物事を捉えてしまう瞬間があります。

たとえば旅行の計画を立てるとき。
どうせなら能楽の舞台になった場所にも行ってみようかな、なんて検討材料に入れてみたり。元々史跡や寺社仏閣巡りが好きで、機会があればいつでも旅行に行きたいという人間です。能楽ゆかりの地巡りも加わって、ますます旅行の楽しみが増えました。ちなみに、最近の旅行の思い出は、四天王寺で弱法師のシテが感じ取った風景に思いを馳せたことです。皆さんも西日へ向かってLet's日想観。

たとえば歴史物のドラマやドキュメンタリーを見ているときも、この能楽フィルターがかかってしまいます。
この武将ももしかしたら当時私と同じ舞台を見てたのかもしれないなー、と思うと、何だかちょっとテンション上がる。
能楽好きな人の好感度ちょっと高くなっちゃう。割とチョロいですよこの人。
今年の大河は能の成立以前の時代なので、直接にはそうした描写はありません。それでも源平合戦は定番のネタですし、曽我兄弟も出ているとなれば、一層気になってしまうというものです。

その他にも、季節の移り変わりを感じたとき、人の思いに心を寄せるとき、そんな様々な場面で、能楽という一つのものさしみたいなものがスッと入り込んできます。
何にでもそれを当てはめるわけではないのですが、何かを見つめるときの一つの視点、感性を豊かにしてくれる触媒、私にとっての能楽はそうした側面もあるのだなと思っています。

はじめに述べたようにまだまだ人生道半ば。
これからも楽しみは忘れず、一方でしっかりと、研鑽に励んでいこうと思います。

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