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「死神」のカードとBORDER:CARNIVAL~メメント・モリ~米津玄師の「死神」を添えて

タロットからの考察第2弾。

ギリシャ神話&タロット考察第1弾はこちら↓
なぜタロットから考察しようと思ったのか、HYBEとタロットの親和性の高さなどは第1弾に書いています。

タロットの絵には「寓意」が多く含まれています。
たとえば、「骸骨」は「死」、「剣や天秤」は「正義」など、カードの持つ意味が様々なモチーフを使って暗喩的に表現されているのです。

ENHYPENの世界観でもそのような寓意はあちこちに隠されていそうで。
1番目立つものとすれば「熊」でしょうか?

「熊」は手を替え品を替え、あちらこちらに登場します。その時その時で違う意味合いで使われていそうではありますが、こんなにもあちこちに登場するのは「熊=夢」という寓意が隠されているからだと考えています。

他にも繰り返し使われているモチーフはいろいろとありますが、「塔」や「月」「星」、「死神」や「悪魔」などタロットに使われているモチーフも多く見られます。
その寓意を読みといていきながら、ENHYPENのストーリーの鍵を見つけていけたらと思うのです。

さて。
予告していた「月」「星」を飛ばして、先に「死神」からいきます。

なぜかというと。


米津玄師の「死神」MVが

6月24日 22時13分

に公開されたから!


巷ではこの「22」という数字がタロットの大アルカナのカードの枚数。
そして「13」という数字は「死神」のカード番号では?との考察が飛び交っている。
という記事を見まして。


米津玄師までタロット!!!


でもって、MVは落語の「死神」がモチーフ。

私、「昭和元禄落語心中」の原作もアニメもドラマも全部大好きなのです。


この「死神」はその中でも重要なモチーフとなっていた作品なのです。
これは「月」「星」よりも優先させなければということで、こちらを先にいきます。

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こんな感じでずっと米津さんと落語の話を続けそうな勢いですが、大丈夫です。
ここからENHYPENにもちゃんと繋がります、たぶん。

米津さんお好きな方でENHYPENをまったく知らなくてもきっと楽しめる…はずです。


落語「死神」の話は、初代三遊亭圓朝がグリム童話「死神の名付け親」を元に作成したそう。

このグリム童話のあらすじは

ある貧乏な男のもとに子が生まれる。男は名付け親のなり手を捜し街道に出た。神、悪魔、死神と順に出会い、死神に息子の名付け親になってもらう。死神は男に、息子が将来金銭的に成功を収めることを約束する。(Wikipediaより)

というもの。

この時、男は「神は貧富の差を産む」「悪魔は人をそそのかし、道を誤らせる」という理由で名付け親には選ばなかった。

その代わりに「死神はみんなに平等だ」として、死神を選ぶ。

「死は誰にでも平等に訪れる」

という考え。
これは、この物語の原型がペスト(黒死病)が猛威を振るっていた中世に書かれたという時代背景からきています。

ヨーロッパでは、このパンデミックにより人口の3分の1が亡くなったと言われています。

何度か書いているように、私はENHYPENの世界観は今回のコロナウイルスによるパンデミックによって壊れてしまった世界について描かれていると思っています。

つまり、落語「死神」とENHYPEN、パンデミック繋がり。

運命は変えられるのか?
生死の運命を変える対価とは?
みたいなところもちょっと似てるところかもしれません。

この時に生まれた死生観は、グリム童話だけでなく、音楽や美術作品、文学などあらゆる芸術にも影響を与えています。

この時代背景から生まれた芸術様式として、

「死の舞踏」
「死の凱旋」
「メメント・モリ(死を想え、今を楽しめ)」
「ヴァニタス」

があげられます。


メメント・モリはミスチルの「花」の副題だったりして、聞いたことある方も多いかもしれません。

死の舞踏の絵画では、主に擬人化された「死」が、様々な職業に属する踊る人影の行列を墓場まで導く風景が描かれている。
行列は教皇、皇帝、君主、子供、作業員で構成され、すべて骸骨の姿で描かれるのが代表的な例である。(Wikipediaより)

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(ミヒャエル・ヴォルゲムート/死の舞踏/1493年/版画)

イタリア地方ではペトラルカの歌集『凱旋』の影響を受け、踊る骸骨ではなく、鎌などを振りかざした典型的な死神の図像が描かれるのが特徴的である。

累々と続く死体の列の上を進む戦車上で死神が誇らしげに鎌を振りかざしている絵や、人々が集まる酒場に突然鎌を持った死神がやって来る絵などもある。

これらは「死の舞踏」に対して「死の凱旋」、または死の勝利と呼ばれる。(Wikipediaより)

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(ピーテル・ブリューゲル/死の勝利/1562年/油彩)

ヴァニタスとは「人生の空しさの寓意」を表す静物画であり、豊かさなどを意味するさまざまな静物の中に、人間の死すべき定めの隠喩である頭蓋骨や、あるいは時計やパイプや腐ってゆく果物などを置き、観る者に対して虚栄のはかなさを喚起する意図をもっていた。(Wikipediaより)

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(ピーテル・クラース/ヴァニタス/1630年)

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(フィリップ・ド・シャンパーニュ画)


ここでようやくENHYPEN。

頭蓋骨が特徴的な「ヴァニタス」画。
ちょっとBORDER:CARNIVALのコンセプトフォトを彷彿とさせませんか?

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そして、ようやくタロットも登場。

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死神が持ってるものは鎌ではなくて旗だけども、まさに典型的な「死の凱旋」を描いた絵。

実は、このタロットの図柄もこの時代の影響を強く受けていて、先に説明したペトラルカの「死の凱旋」 がタロットカードの絵柄のルーツになっているのではと言われています。

そう、だからタロットもパンデミック繋がり。

BORDER:CARNIVALのINTROでは馬に乗った構図も出てきます。

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「死神」の図柄はデッキによって異なっていて、ENHYPENに関係しそうだなと思うのは下のトートタロット。

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絵だけ見たら、え?どこが?と思うかもしれません。

私も初見では、え?釣りしてるの?と思いました。

持ってるの釣竿じゃなくて鎌だった。

でも、ここで注目してもらいたいポイントは回転、螺旋です。

回転、即ち「螺旋」は“死の本質は螺旋を描きながら変容していく”と同時に“死は変化であると同時に静止である”という暗示を与え、アレイスター・クロウリーがデザイン監修を行ったトート・タロットなどの一部のデッキにおいては、大鎌を振り回しながらクルクルと「死の舞踏」を舞う死神の姿が描かれている。(Wikipediaより)

なぜ関係しているのかというと…

Drunk-Dazedの振り付け、めちゃくちゃ回転してませんか?

ターンだけではなく、手を回したり、足を回したり…
フォーメーションが変わる時にもクルクルと。
私はあれは「螺旋」をイメージした振り付けではないかなと考えているのです。

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床に寝そべってクルクルするのは螺旋というより「時計」っぽいですね。
ジョンウォンだけが指でクルクルしながら「抜け出せない Replay play play」と歌っていて、時計の逆回転やタイムループを表してるように見えます。

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間にはさまるソンフンのワルツ部分も入れていいんだったら、かなりクルクル回っております。

ワルツの語源はドイツ語の「回転する」なので、クルクル回って当然です。

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さらに言えば、ソンフンが好きだと言っていたねじりドーナツだって螺旋だし、私たちENGENE🔀の由来である「GENE(遺伝子)」だって螺旋です。

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この回転や螺旋は、タロットだけではなく、多くの美術作品の中で「生と死の象徴」「時間の循環の象徴」として表現されています。

タロットの意味もまさにそこが関係してきます。

正位置であれば、見てそのままの不吉な「」の意味でも、逆位置だとまるで正反対の「」の意味に。

正位置の意味:停止、終末、破滅、離散、終局、清算、決着、死の予兆、終焉、消滅、全滅、満身創痍、ゲームオーバー、バッドエンディング、死屍累々、風前の灯。
逆位置の意味:再スタート、新展開、上昇、挫折から立ち直る、再生、起死回生、覚醒、転生、輪廻転生、コンティニュー。


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BORDER:CARNIVALでは、全て逆さまの世界だと繰り返し出てきます。

つまりここでは逆位置の意味

再スタート、再生

として使われているのでは?

ここでもう一度、馬に乗った死神のカードをみてみると、奥にある二本の柱の向こう、境界線の向こう側の森にのぼってくる太陽=夜明け(Dawn)も見えます。

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BORDERシリーズには、パンデミックで1度崩壊してしまった世界の「夜明け」「再生、再スタート」への願いが込められていると思うのです。


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印象的なこの部分の歌詞。

느껴져 내 머린 Daze Daze Daze

韓国語で「頭=머리(モリ)」。
ラテン語では、「mori(モリ)=死」。

先ほど出てきたメメント・モリの「モリ」です。

この2つの意味が掛詞になっているとしたら??

この部分の意味は「感じられる、僕の死が」となります。

そう考えてもう一度歌詞を見てみると…

Drunk-Dazedは、死を想い不安や恐れを感じながらも、カーニバル、パーティーという今を楽しんでいるという歌にも思えるのです。

メメント・モリの「死を想え、今を楽しめ」という意味、まさにその通りの意味合いの歌なのかもしれません。



⚠ここからは余談になります⚠

落語「死神」の内容を知らない方はこちら🔗

米津玄師の「死神」は、ドラマ・リコカツの主題歌だった「Pale Blue」のカップリング曲(どちらも作詞作曲/米津玄師)。


最後の歌詞「ああ 面白くなるところだったのに

面=顔。
顔が白くなる=死。

Pale=顔の血の気がない、青白い

これ落語「死神」のオチだけでなくて、タイトル曲の「Pale Blue」にも掛けてあるんだとしたら最高に面白い。


その前の歌詞「香り立つおしまいのフレグランス

オチの部分でろうそくが消えたあとの匂いのことかと思うんだけども、ここからCDの特典が「フレグランス」だとか!
どんな香りなんだろう??
そういえば、ろうそくの火もENHYPENとの共通点でもありますね。


出だしの「いつになりゃ終わる?

という歌詞から、こちらもパンデミックの世界を表してそうな気もする。MVや歌詞には何度も死神を追い払う仕草(手拍子2回)や呪文が出てくる。
最終的には夜明けを待たずに消えてしまう火…
男はコロナ感染者の死神を何度も追い払っていたのだとしたら?
それが結果的に男の寿命を縮めることになってしまったことになる。

だとすると、特典のフレグランスはまさに「メメント・モリ(死を想え)」を意味するように感じる。

そして、落語「死神」でも「逆さま」はキーワードでもある。
タロットから解釈するとすれば、この曲のテーマも逆位置の意味からとって「再生、再スタート」なのではないだろうか?

米津さんだったら、タロットの「死神」の意味は、ただ単にMV公開時間だけに留まらない気がしているのです。
米津玄師「STRAY SHEEP」インタビュー │3年かけて磨き上げた傷だらけの宝石🔗

米津玄師「Pale Blue」インタビュー|ポップソングの面白さを追い求めたどり着いた、究極のラブソング🔗

どちらも音楽ナタリーの記事。

「HYPE」
「混沌」
「世の中の光を映し出すミラーボール」
「原石は傷をつけられることで光を反射する宝石になる」
「音楽はナルシシズムやセンチメンタリズムを助長する」
「陶酔状態」
「サイケデリック」
などなど、ENHYPENでも見聞きしたことのある、気になる言葉やモチーフたちが米津さんの言葉で語られていて、大変興味深かったです。


ここまで読んでいただけてありがとうございます。

スキ❤を押していただけたら、個人的に好きなEN'OCLOCKの字幕シリーズ出てきます!









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