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四十九日日の奇跡
6月17日は愛犬ジャスミンの四十九日だった。
四十九日と言えば家族や親戚で集まって故人への追善供養を行い、故人を偲ぶ日だ。けれど私には亡き愛犬のジャスミンを忍んで語らう相手が誰一人いなかった。
そんな私はジャスミンのダディ(お父さん)であるSに連絡を取った。私がアメリカに住んでいた頃にお付き合いしていた人だ。16年以上前、彼と一緒に犬の譲渡会へ行きリモコンと同じくらいのサイズの小さなジャスミンを迎えた。
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彼は本当のお父さんのように振る舞ってくれた。ジャスミンを可愛がり色々な場所へ連れて行ってくれた。やがて私は留学を終えジャスミンと共に日本に帰国した。彼とはそれきりになってしまった。
彼の職場の連絡先を知っていたので連絡してみると、彼は日本に居るという。ジャスミンの四十九日にアメリカに居るはずの彼が日本に居る
ことに驚いた。しかも私が住む街に彼が滞在しているというから驚くなんてものじゃなかった。
「お茶でも飲もう」
彼から返信が来た。そして十数年ぶりに私たちは再会した。私は瞬時にこう思った。
「これはきっとジャスミンの采配に違いない」と。
Sとランチしながらジャスミンの思い出話に花が咲いた。時が戻ったようなジャスミンがその場に居るわけじゃないのに、まるでそこに存在しているのような不思議な感覚があった。
Sはジャスミンの子供の歯が抜け落ちた際に、その歯を大切に保管してくれていたそうだ。ジャスミンという存在が自分以外の人の心の中にジャスミンの死後も生き続けていることが嬉しかった。
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実は四十九日を迎える二週間ほど前にも不思議な事があった。私はジャスミンとの暮らしの模様を動画にしてYouTubeにアップしていた。3年程続ける間にチャンネルのファンになってくれた人がいた。
その中の一人に、ニュージーランド人男性のGが居た。聞くと彼も一年前に愛犬を亡くしたそうだ。彼から私のインスタグラムにメッセージが届いた。奥さんと一緒に来日するそうで、京都観光に行くと言う。
彼は私がジャスミンの死後、酷く落ち込んでいることを知っていたが
「良かったら出て来ませんか」と誘ってくれた。
所用で京都の近くまで来ていた私は思い切ってGと奥さんに会うことにした。
京都河原町で待ち合わせをし私のお気に入りのうどん屋「おめん」で食事をした。初めて会う二人なのに、なんだか何年も前から知っているような気がした。特にGはジャスミンのことを本当によく気にかけてくれていた。彼の温かい気持ちに触れて、帰宅すると涙が溢れた。日本の反対の南半球に位置する国に住む人の心の中にも、ジャスミンが生き続けているのだと感じた。
ジャスミンの存在が消え、1ヶ月間毎日泣いていた。今でも時々、嗚咽するほど泣いてしまうことがある。けれど、いつもジャスミンの大きな「愛」に包まれている感覚がある。朝起きてから眠りにつくまでジャスミンと心の中で会話している。
ジャスミンが居なくなった今も、二人で歩いた散歩道を一人で歩き心の中で彼女と会話している。ジャスミンは返事をしてくれない、けれどジャスミンからのメッセージは、さまざまな場所に隠されている。
それはランダムに選んで観た映画の中に、何気なく開いた本の中に、再会したジャスミンのダディSとの会話の中に、ニュージーランドから来たG夫妻との会話の中に。
心に響く言葉を見つけると私はいつもこう思う。
「ジャスミン、これはあなたからのメッセージだね。ママを見守ってくれて、導いてくれてありがとう。あなたは可愛くて賢くて心の優しい女の子。ママの特別な女の子」と。
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Keilani
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