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『夏の砂の上』4回目

2022.11.16、4回目の観劇。
今回は体感的にセンターのD列と同じ位置だったから肉眼でもよく観えた。
そんな素晴らしい位置で観た『夏の砂の上』。
今までの中で一番衝撃を受けたかも知れない。

私の胸を打ったのは、持田の就職祝いの帰り、治さんの家に寄った時のあるシーン。

持田が寝てしまい陣野が帰ろうとするところで治さんは泊まっていくようにすすめる。
頑なに断る陣野。

それに対する治さんの、「なんでや」と、声を荒らげるシーン。

ここで私の心臓がドクンと鳴った。
ズシンと心に響いた。

この言葉がまるで治さんの悲鳴のように聞こえたから。

治さんは恵子との仲を疑っている。
だからここで泊まっていけば潔白だとわかる。
でも陣野は気まずくて泊まることなんてできない。

治さんは泊まってくれ!
恵子とはなんでもないと言ってくれ!
という思いだったんだろうと思えて、この言葉を吐く治さんに心打たれた。
響いた。

そしてもう一つ。
今日の治さんには絶望感を強く感じた。これまでも感じてきた絶望感。それをいっそう強く感じた。

まずは持田のお葬式に行くシーン。
治さんは着替えてから行くと言う恵子を置いて先に行くが、戻ってくる。
少し早足で。
そして恵子がいる鏡台のある部屋へ行き、その鏡台を割る。
先の考察noteでもこのシーンのことを書いたが、ここは実際観たら少し違ったかもしれないな、と思った。

お葬式に行けば見たくない恵子と陣野が受付で二人一緒にいる姿を見てしまう。
一番見たくない光景。
だが、受付は必ず通らなければならない場であり、治さんにとっては最大の苦痛。だから治さんは先に行った。まだ陣野が一人の時に。
二人で受付をする姿を思い浮かべたのだろうと思った。だから昂る気持ちは抑えられなかったのだろう、と。
ずっと耐えてきた治さんが自分を抑えきれなくなるほどの衝動をここに感じた。

鏡台を、あえて結婚の時に恵子が持ってきた鏡台を割った治さん。恵子と過ごした年月を自ら壊すかのように割ったんだろう。それで気が晴れたのだろうか。
また足早に葬儀場へ向かう。その途上、治さんは何を思うのかを考えると、私の胸は傷んだ。

せめて葬儀場が近ければいいな、と思った。
持田を偲ぶことで、少しでも荒んだ心が浄化されればいいな、と。

更にシーンは飛び、福山に旅立つ恵子が治さんに最後の挨拶に来た時のこと。
ずっと治さんは斜めに座り恵子を見ない。どんなに恵子が治さんの顔を覗き込んでも。
恵子をシャットアウトしてるかのような頑なな丸まった背中。
そっと撫でて抱きしめたくなるような丸い背中だった。

腰をかがめはしているものの、同じように背中を丸めた人物がいる。
儀藤さんだ。
だがあの場にいたのは紛れもなく小浦治であって、儀藤のギの字もなかった。
こういうところが、また役者 田中圭の凄いところだと思う。
あんなにも多くの人生を生きてきたのに、誰も同じ人がいない。

話を戻そう。

ここで恵子が治さんの新しい職場のことを聞く。
すると治さんはくるっと恵子の方を向き、今の仕事の話をする。
質問するという行為は関心がないとできない。
だからきっとこの時の治さんは嬉しかったのかな、と思う。去りゆく人が自分を気にかけていると思って。
恵子にとっては話を繋ぐ糸口だったとしても。

だからこそ、恵子はこの後治さんと別れることになんの躊躇いも無いことを告げる。

更にそこに立山から優子宛に電話がかかってくる。優子が居留守を使ったため、いると確信して粘る立山に対し、しつこいと言う治さん。

電話から戻ると恵子はいない。
そこで治さんは窓の外を見る。錆びついている街を。
この時の田中圭の顔、立ち姿、秀逸だった。

ここの治さんは本当に際立っていた。

立山に対ししつこいと言った言葉。
これは去る恵子に対しどこかまだ未練を残している自分にも当てはまる言葉だ。
自分が発した言葉がブーメランになって戻ってきている。
もう、この街が、錆びついた街が以前の様に戻らないように、恵子も自分の元へとは戻ることは無い。
錆びついた街は自分の写し鏡。
そんなことを考えてるかのように思えた。

だから明雄がいたことも恵子との生活も無にしたかった。
私にはそう思えた。

ここで違う感想の方のnoteも読んだ。
なるほど、そういう捉え方もあるのかと、舞台の捉え方は千差万別だと面白くもあった。

恵子が去った後、恵子に優しく話していた仕事の話を優子には、優子が思わずビクッとするほど大きな音を立てちゃぶ台を叩きながら自分の仕事の様を機械の如くと言う。
機械は無機質だ。この瞬間とうとう治さんの心がなくなってしまったと思った。

そして降る雨。
雨水。
望んでいた水。乾いている心。
雨水こそ、もう治さんと優子にとってのオアシスのようなものだ。
躊躇いながら飲んだ治さんに宿る笑顔。
あー、治さんがまた心を持つ人に戻った、と、安心した。

その数週間後だ。
まさかのことが起こるのは。

明雄がいとこだと言った優子。
血の繋がりと慣れによってどんどん近くなる治さんの存在。
ここじゃないところに治さんと行こう、治さんとならどこでもいいよ、と言った優子。
孤独を常に感じているもの同士、心に空いた穴を埋める如く、慰め合うごとく、この地から逃げようと提案した優子。

伯父とはいえ、ほとんど会っていない。
優子は思春期だ。
甘えてもいる。これは思慕にも似ている。

だが優子がここを出る時に一緒に行く相手は治さんではなかった。
迎えに来た母、阿佐子だった。
優子が旅立つ。
どこともしれず遠い所へ。

それを告げられた時の治さんの顔は今日も何とも言えない絶妙な顔をしていた。
全てを見透かしたような。
ここにも絶望を私は見た。

温かく抱きしめた優子の麦わら帽子。
もう治さんには明雄はいない。
恵子もいない。
優子もいなくなってしまった。

残るのは失くした指三本を持つ左手。
お父さん(親指)と子供(小指)が残っている。
今この家には治さん(父)と明雄(子供)の位牌がある。
なんという偶然なのだろうかと私は考えてしまう。

そこに差し込む光。
治さんは今日も眩しそうに、顔をしかめ、陽射しをその残された2つの指を持つ手で遮っていた。
残る親指と小指、治さんと明雄の位牌。
孤独な治さんに眩しい陽光が射し込む。
暗転。

この後カーテンコールがある。
初日以外私が行った回は全て3回。
そして今日、初めてちゃんと圭くんの―もうこの時点では圭くんになった―笑顔を見た。
最後のいつもの如く深いお辞儀をした時に思わずこぼれる笑み。
その後はけるときに笑う顔。

あの思わず出てしまったかのような笑みに、今日の出来は満足いくものだったんだろうなと思った。
私が観た中でも一番好きな回だった。

あと残すところ私の観劇も東京楽のみ。
最後にまた笑った姿が見たい。


タナカーのコーナーwww
今日の圭くん。
はんこ注射みた!🫣🫣
前々回ゴミだと思ってたのが足のホクロだと翌日判明した!!!🤣🤣ってのがやっぱゴミだと判明した🤣🤣え、もうなに?🤣🤣とうとうのり弁の海苔説爆誕🤣🤣
おパンツシーン、今日はアソコを隠しながら後ろにチョコチョコ後ずさり。かわいいーー💕💕💕
そういえばこのシーンは初回と2回目に観た時は1回目の登場シーンはおパンツ、2回目の登場シーンも半分おパンツが見える状態でズボンを履いて出てきていた。3回目からおパンツを2回目の登場で見せることはなくなっていた!
以上、タナカーとしての業務報告でした。

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