ウリセンの少年
忘れられない出会いも、ある。
二人きりになった途端、彼はこう言った。
「おれ・・ウリやってるんです・・」
「ウリ・・・?」
「おっさん相手に体売ってるんです」
「・・・・・・」
・・・・人は生き方を選べない。
ほとんどの場合「選んでる」と思い込まされているだけだ。
・・・・・その日、端正な顔立ちをした少年が入社してきた。
ド派手な緑色の髪。愛想がよくニコニコとよく笑う子だった。
研修に連れていくため新人の彼を車に乗せた・・・
・・・で・・・途端にこれだ。
『唐突な罪の告白』
・・・実は珍しいことじゃない。
これはむしろよくあることだ。
ほとんどの人にとっては・・・きっと理解し難い話だろう。
自分の犯罪歴を他人に言いたがる人間がいるのか?
しかもいきなり?職場の先輩に?初対面で?
「ありえない」そう思うはずだ。
理屈で考えると私もそう思うのだが。
現実は違う・・・・私は何度もそういう経験をしてきた。
まず自分の罪を告白したがる人間は多い。
普通の人には言えない。家族にも友人にも。
たまっているのだフラストレーションというやつが。
誰かに言いたい。自分のことをわかってほしい。
自分を特別な人間だと思わせたい・・なんて奴もいる。
そしてウチの会社は特別も特別。
なにせ元犯罪者がゴロゴロいる。
人殺しもいる。薬の売人もいる。強盗。暴行。なんでもありだ。
そんな奴らが・・・・みんな仲良くやっている。
学歴。経歴。服装。髪型。何も気にしない。採用率100%。
私たちは徹底したマニュアルと監視・管理体制を敷いていた。
少しでもトラブル、ネガティブな発言があれば即呼び出し即注意。
「雨が降ってますね」の一言でも許さなかった。
すると・・・・人間関係が驚くほど・・
いや・・異常なほど円滑になる。みんなニコニコフレンドリー。
違和感。不自然。気味が悪いと思う人も多いようだった。
しかし「ここでは誰も絶対に自分を傷つけない」と理解すると。
ワケあり社員の誰もが生き生きする。それも事実だ。
まぁ・・・洗脳ってやつなんですけどね。
あとこれは憶測だけど・・・・
裏の住人たちは仲間を敏感にかぎわけるらしい。
「あっ・・ここはみんな同じなんだ・・・」
そういう安心感もあるようだ。
・・・・・二人きりになった瞬間。
自分の犯罪歴を喜々として自分から告白してくる。
「実は・・・」ってね。いつものパターンだ。
・・・・・・・・・・・・
さて・・・・話を戻そうか。
・・・・・・・・・・・・・・
「おれウリやってるんですよ」
「・・・ウリ?」
「オッサンたちに体売ってるんです・・・」
「あー・・・」
まだ幼い彼はほほえみながら、少し不安そうに。
流し目で私の顔を表情をまじまじと見つめてくる。
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