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夜のスターバックス

スターバックスといえば、1996年に日本初上陸し、
今に至るまで何年も人気不動のオシャカフェである。

私のスタバ(愛着を持ってここではこう呼ぶことにする)歴は初上陸から共に歩んでいたので
すでに30年近くである。
最初は中学から高校へ上がるくらいで、姉と共にハマり飲み歩いた。
当時からのお気に入りはカフェモカ。
コーヒー+チョコは食べ合わせでよく聞くが、一緒にするなんて…当時の小娘にはだいぶ衝撃だったはずで
狂ったようにスタバへ行けば飲み続けた。
またスタバのホイップにも衝撃を受けている。
甘くないホイップクリームって失敗した以外にこの世に存在するとは…しかもあえて甘くないとか言うんでしょ…コワ…
甘くないから太らないなんて軽い気持ちで乗せたものを飲みまくってたせいか、
そもそも太っていたのに拍車がかかった気がする。

スタバへ行くのがオシャステータスになるのはこの後だと思う。
当時は個人的にオシャだから行くというより「飲みたい」が勝って金さえあれば行くという、
強欲な気持ちだけで行っていた。
我が両親も何かと新しもの好きだし、こういうことには結構お金を出してくれていたと思う。
(だから子供の頃から太っているのだけども!)

高校を卒業し、社会へ出て長く続けたバイトを辞め、新しいバイトになったと思ったら
業務縮小で職を追われ、また仕事が決まり、また無職、などという無職の期間が増えた。
就職活動をしても、なかなか採用には至らず、悶々とした日々を過ごし、そんな中でもスタバには助けられていたと思う。

なにも上手くいかず、昼夜逆転していた生活。
今までスタバといえば大きなショッピングモールの一角にあったのだが、郊外向けに独立店ができ始めた頃だった。
暇さえあればネットサーフィン(死語)をしていた、時間ばかり余っていた私だったので、すぐにそれがあることに気づいた。
夜になる動き出す生活で、ただ夜はギラギラした店が多く、どこへ行っても自分の居場所を感じなかった。
とはいえ、夜なんだからそんなお店に行くことで時間を潰すこともあったが、
一番ホッとできたのは郊外にあったスタバへ行くことだった。

当時23時くらいまではやっていたかと思う。
20時ごろにひょっこり家を出てきて、車で少しドライブがてら1時間くらいかけて郊外のスタバを目指す。
途中の道はいつも知ってる道ではないので、新鮮な気持ちもあった。
当時は貧乏真っ只中、燃費の悪くなるエアコンなんて入れる気はさらさらなかった。
夏は夜風を車内に入れて、寒くなってもヒーターは燃費に関係ないのでガンガンに温めて
それでも風を感じたくて、窓を開ける。
夜の匂いがとても良かった。草の匂い、どこかの家畜の匂い、たまに花の匂いもした。
まあ、全体的に排気ガス臭いのだけども。

夜にスタバへ着くと、日中は賑わっているだろう周辺はしんと静まり返り、
ただただ煌々とスタバだけが蛍光灯や電球の淡い光を放つのだった。
その姿に吸い寄せられるように私は入店し、
当時はカフェミストにハマっていたのでそれを頼んで店内で過ごすことにする。

持参したゲーム機でのんびりプレイしながら、周りの様子を見る訳ではないが感じる。
周りのお客さんは、カップルや仕事帰りの人など、割と限られた人々であった。
それぞれ誰に干渉することもなく、想い想いの過ごし方をしている。
小一時間ほど過ごして店を後にすると、訪れた時よりも暗く、空気が沈み冷たくなっていた。
空を見え上げると、目が悪い自分でも確認できるほどの星が点々として
ありきたりな表現になるが、「自分はちっぽけだな」とか「これからどうなるんだろう」と不安な気持ちに苛まれた。

この歳になれば、どうにかなるのはわかっているし、もしその当時の自分に声をかけてあげられるなら大丈夫だよと背中をさすってあげられるのに。
とにかく、当時は本当に心細かったのを今もまだ憶えているのである。

今が幸せなのに、昔に感じたことがその情景に遭遇するとフラッシュバックしてくることが度々あって、
例えばオットとお付き合いしていて一度別れた時間帯が明るい夕方の日だったせいか
その情景を見ると意味もなく悲しくなり、泣けてくることがあったり…
そしてこの夜のスタバは、私にとってグッとくるシチュエーションなのだと先日気づいた。

場所は違うが今住んでいるところから数キロのスタバへ、なんの気無しにワンモアコーヒーを買いに行く下心を持った時のことである。

その日はオットが仕事で、私だけ朝に車の集まりがあり早朝にスタバへ寄ったのだ。
カフェミストだったのでオットが帰る前にワンモア行けるな?と確信し、
夕飯を作った後で暗くなってから出発。
独立店のその店舗を見た瞬間、あの当時の心細さを思い出したのだった。

その気持ちは忘れては行けない感情なのかもしれないね。
いつ職を追われるかもわからないし、ひとりぼっちになるかもしれない。
その時の覚悟を常々心に潜ませておくべきだという潜在的な自分の気持ちなんだろう。

少し違ったのは当時の夜に行っていたスタバよりも、今回出向いたスタバは
ただただオシャカフェな様相で素敵だと思ったのは心の余裕があったせいなのか。

家の中が暑く、絶対アイスを頼む!と心に誓って家を出たのに
外は肌寒くなっていて意志が揺らぎそうだったのは言うまでもない。
結果初志貫徹、アイスを買って家路をのんびり戻って、オットを迎えたのだった。

私にとってのスタバは、ただの流行ではなくどんな時にでもそばにあってほしいスペースなのだ。
どれだけスタバが自分と違う方向に行ったとしても、ずっと通い続けようと思う。

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