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映画「黒い潮」 山村聡監督 1954年を観て

原作は井上靖。題材は1949年の下山事件。下山事件というのは、国鉄が20万人の首切りを発表し、その矢面に立った下山国鉄総裁が発表の翌日轢死体で発見されたという事件である。

主人公は新聞記者のハヤミ(山村聡)。この映画では轢死体で発見された国鉄総裁は秋山と言って、秋山事件と命名されている。この映画の見どころは、記者たちが職場で、飲み会で交わすジャーナリズム論だと思う。

秋山事件は、他殺か自殺かで新聞社各社の論調が異なるが、ハヤミはマスメディアの客観性、真実性、先走りしないこと、世間に同調しないことを肝に銘じて、事実が分かるまでは浮足立った報道をしないことにしていた。競合各社はセンセーショナルに他殺を報じていた。そのことは、売り上げを伸ばしたい営業部からの突き上げもあり、他殺だと決まれば左翼弾圧の絶好の機会となる政府の思惑も絡み新聞社内で多くの敵を作った。

ハヤミが報道の真実性に拘るのにはハヤミの過去のある事件が関係していた。そうこうしているうちに、三鷹で計画的事故で多数の死傷者が出るという大事件が起こり、秋山事件は人員も減らされ霞んでいった。

閑職に追いやられたハヤミは社の屋上で景色を眺めていた。すると部下の記者が駆け寄り、特捜部が自殺の線を固めたと教えてくれた。「勝った!」と祝杯を挙げる予定だった社会部にある緊張が走った。それは、特捜部がなんらかの事情で発表を中止したというのだ。そしてハヤミは責任を取らされて博多に左遷されることになった。特捜部になぜ発表を翻したのかを食い下がっても「知らん」の一点張りで真相は分からなかった。祝杯は一転して送別会へ。

部長は「君が負けたわけじゃない。新聞自体が負けたのだ」と言って辞表を出し、ハヤミは博多へ立ち去った。

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