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イタリア再始動計画

4月26日、日曜日の夜8時20分すぎ(イタリアのゴールデンタイムです)に、コンテ首相の会見の生中継が始まりました。首相の会見は、TV画面の向こうの視聴者に対して直接話しかけるような形式で行われます。会見場所には司会も記者もいません。画面に映るのは、首相と手話を担当する方(小さな別画面内)のみです。首相の見解発表が終わると、首相自身が質問予定者の記者の所属と名前を読み上げて、記者とネット電話をつなぎます。記者は一回の会見につき4人くらいでしょうか。彼らの顔も生中継されます。首相も記者も顔を出し、その受け答えを視聴者が生中継で判断出来るこの形式は、とてもフェアだと思います。記者がつまらない質問をすると「なんだこの記者?!」と視聴者は思うでしょうし、首相の答えがなってないと、やはり同様につっこまれます。質疑応答部分を含んでも40分ほどの記者会見ですから、最後まで注意して見ることが出来る長さなのも良いと思います。

全土封鎖が始まってから48日めのこの会見で、ようやく”第2段階”、つまりイタリア再始動に関する首相令(私は法令と訳していましたが、日本外務省の訳にならいます)についての説明がなされました。実施は5月4日からで、5月18日、6月1日と、3つの段階を経て元の生活を取り戻そう、というものです。(つまり最終的な全土封鎖期間は55日になる予定です。)ただし、どの段階においても感染者数が増えてくるようであれば「蛇口を閉める」、つまり、すぐに再始動を停止させる、という条件つきであることは、よく理解しておくべき点であると思います。

以下に、会見内容の概要をまとめました。現状と違って新たに追加された項目は太字にしました。情報源は政府公式サイトです。

尚、*印をつけた文章にて私のコメントを付け足してあります。ご了承くださいませ。

どのような方法をもってしても感染症をコントロールすることが不可能と思われる時期があったことを考えれば、感染をおさえることが出来ている現状は大きな結果である。
(国民の)皆さんは強さ、勇気、責任感と共同意識をみせてくれた。これからはウイルスとの共生という段階であるが、この段階において、国の複数の地域で感染が広がるであろうリスクがあることは認識しておかなければらならない。責任ある行動が、さらに重要となってくる。
基本的なことは、少なくとも1mの対人距離をとること。親族との関係でもそれは同じだ。
イタリアを愛しているのであれば、(対人)距離をとってください。
何週間もこのような規則のもとに暮らしているので、これからの段階において、感情が爆発することがあるかもしれない。怒りをだれかにぶつけたくなることもあるだろう。その相手は家族だったり、ヨーロッパだったり、政府、政治家、州、報道機関だったり。いくらでも相手はいるだろう。しかし、別の方法もある。怒りや恨みを横において、私たちの共同体を再出発させるために、それぞれが何をできるかを考える、という方法だ。すべて私たち次第です。
これからの季節は、リフォルマ(改革)の季節となります。この国で、もう長いことうまくいってなかったことを改革する契機です。私と大臣たちのチーム(内閣)は退きません。ヨーロッパに対しても、イタリア国内においても*、このままではダメだということ全てを変えるために戦います。

*もともとイタリアの政治は複数政党が苛烈な政争を繰り広げてきました。現在もそれは変わっていません。連立政権内では与党(民主党と五つ星運動党)間の意見対立があり、野党各党(北部連合、イタリア同胞党、フォルツァ・イタリア党)からの政権に対する批判は日毎に強くなっています。コンテ首相は議員ではなく、どこの政党にも所属していません。弁護士、大学教授をへて、国会によって選ばれた行政裁判協議会の副議長でした。いってみれば連立政権の”都合”で担ぎだされた政治家ではない首相で、彼が現れた時には「これ誰?」というのが人々の反応だったのです。その首相が予想外に大活躍していて、私も驚いています。

マスクの価格について:外科用マスクひとつにつき価格は0.5ユーロと政府が決定。製造者が儲けを得られ、同時に倫理的に正しい価格であると考える。消費税*はつけない。

*イタリアの消費税は22%です。

ヨーロッパの”Recovery Fund(復興基金)”について:イタリアにとって有効な基金であり、この決定を勝ち取れたことには歴史的な意味がある。

< 5月4日より施行 >

・移動については、これまで通り、行き先や目的地等を書いた自己申告書が必要。
・同じ州の内部であれば、これまで許可されていた仕事、健康(病院に行くなど)、生活に必要な買い物のための移動以外に、親戚や家族に会いに行くための移動も許可される。但し対人距離を保ち、大人数が集まることなく、マスクなどで感染予防に勤めること。
・他州への移動は、仕事、健康、緊急事態、帰宅のためにのみ許可される。
37.5度以上の発熱、呼吸困難等の症状がある場合は絶対に家から出ずに、かかりつけ医に連絡すること。
これまで通り、一切の集会は許可されない。
公共機関を利用する場合のマスク着用を義務化。

*ロンバルディア州ではすでに義務化されていました。

公園への出入りが許可される。ただし、対人距離を保つこと。守れない場合は、市長が入場禁止、閉鎖等をする権限を有する。

*健康のために許可されている移動の範疇に、これまでも家の周りでの軽い運動などが含まれていたのですが、公園などへの入場が許可されると、「家から遠い公園にも行っていいのか?」という議論が出てきそうな気がします。

スポーツをするために家から離れてもいいが、激しい運動の場合は2mの対人距離、軽い運動の場合は1mの対人距離を保つこと。
スポーツ選手の個人練習は許可。

葬儀を行うことが許可される。ただし参列者は一親等と二親等の親族のみで、最大15人までに限る。可能な限り屋外で、対人距離を保ち、マスクなどの予防措置をとった上で行う。
近日中に、宗教儀式が安全に行われるための手順についても検討する。
飲食業(バールやレストラン)については、これまで許可されていたデリバリー(宅配)以外に、持ち帰りサービスも許可される。ただし、店鋪の前に人が集まるような状況は厳禁。

*既に行っていた店もあるような気がします。が、デリバリー業務を行うための規則や許可申請というのも存在するらしいので、「持ち帰りも可」となったことで、一般的なレストランも参入しやすくなるのかな、と思います。

製造業、建設業、不動産業、卸売業の再開。業務再開にむけての各種予防対策等についての準備作業を、4月27日より行うことを許可。

*州のチェックが入るようです。

< 5月18日より施行予定? 詳細検討中>
・小売業の再開。
・博物館、図書館、展覧会の再開。
・チームで行うスポーツの練習の再開。
< 6月1日より施行予定? 詳細検討中>
・バール、レストラン、理美容員、エステ等の飲食、接客業の再開。

以上です。
私の生活には、ほとんど変化はありません。でも、未来への目安ができることは、とても良いことだと思います。
ちなみに、4月26日のイタリアにおける感染状況は以下のようになっています。

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現在の陽性者総数   106,103人
 うち 有症入院中    21,372人
    集中治療中    2,009人
    自宅隔離中    82,722人 
治癒者総数       64,928人
死者総数        26,644人

患者の命を救うために尽力されつつ亡くなった医療関係者は、150人を越えました。

日本の皆様には、この数字をよく見ていただき、自分たちが「家にいる」ことで助かる命がたくさんあるのかもしれない、という思いを持っていただければと思います。

どうか皆様、お家にいてください。

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