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心の穴

私の心には穴が空いている。
ぽっかりと、大きくて真っ暗で
何をしても埋まらない穴が。

その穴は私から愛情を奪っていく。
どんなに愛をもらっても
どんなに優しくしてもらっても
どんなに好きだと言ってくれても
心に空いたその穴からサラサラとこぼれ落ちていく。

どうせいつか離れていく
どうせいつか壊れる
私は結局いつだって一人だ、もう誰も信じない信じたくない
だって傷付くから。
もう傷付きたくない、傷付けられたくない。
だからずっと一人で良い、期待して裏切られて死ぬほど傷付いて泣くくらいなら誰にも執着せずに
皆に平等に優しく皆に分け隔てない愛を持って生きていけば良い
人に期待してはいけない。

いつからこんな風になってしまったのか。
きっと、心の穴を持ってない人たちは私のこの思いを伝えても『悲劇の主人公気取りのメンヘラ女』などと言うと思う。
私は、仲の良い家族が羨ましい。
両親揃っていて、いつも味方で肯定してくれて、叱ったとしても深い愛があるような夢のような家族。

休みの日はお父さんがドライブや釣りや遊園地に連れてってくれたり
家に帰れば必ず電気がついていて、お母さんがおかえりと言ってくれて夕ごはんを作っていてくれて
そんなのは私にはファンタジーだ。

大人になった私は知っている。
外から見たら幸せそうに見えたとしても色んな事情がある事を。

それぞれの家の見えない何かがあって、今だって一人で戦っている子供がいるということ。

でもどうしても、羨んでしまう
どうしても望んでしまう
抱きしめてくれる腕を、頭を撫でてくれる手を。

どうして私は普通に愛されて育たなかったんだろう。

物心ついた頃にはもう、育ての母と私の二人ぐらしだった
楽しいエピソードも沢山あったがよく暴力をふるわれていた

子供は母親が好きなものだとよく言うが、私も彼女の事が大好きだった。
だけどやはり幼い子供にとって、殴る蹴るの暴力は辛かった。

何かがある度に『元の家に戻す』『もう育てられないから出ていけ』と脅され
育ての母の脚に泣いて縋って母の機嫌が治るまで床に頭をこすりつけて謝り続けた

『良い子にするから、お願いだから捨てないで』何度も何度も過呼吸になりながら頼んだ


それでも育ての母は金切り声をあげ、私を蹴飛ばして出てけーーっ!と叫ぶ
玄関まで引き摺って外に出されそうになるからだんご虫のように丸まって抵抗して、テーブルの足にしがみつく。

『お前は私を苦しめる為に生まれてきたのか!!』
鬼の形相で叫びながら叩いて剥がそうとするその人のどこかに私に対する一欠片の愛が残ってないか必死で確認するが般若のようなその顔には何も見えなかった

母の激高が少しおさまると私は自分の部屋に泣きながら駆け込んで布団に包まって泣いた。
声を押し殺して泣いて泣いて泣き疲れて眠る
数時間後には母は何事もなかったかのように『ご飯できたから食べなさい』と声をかけてくる

それが救いだった。
まだ捨てられない、家に置いてもらえる
そう思って安心する日々。

ある日、母が猫なで声で私に言った
お父さんが出来るかもよ、紹介するわね

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