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プルメリア愛を語るのできいてほしい

私は長年、プルメリアという南国の樹を育てている。

このnoteの写真でも使っているのは、私の育てているセラダインという品種。ハワイではレイに使われる花で有名でもある。

このプルメリアは、四季のある日本では暖かい地域以外では育成が難しいと言われている。

サーフィンで訪れたハワイでその美しさと素晴らしい芳香に魅せられて、自分で育て始めたのはもう15年も前のこと。

日本でプルメリアの種を手に入れることはなかなか難しい。そのため30cmくらいのカット苗(棒切れのような枝)から丁寧に根を育成していくことになる。

プルメリアの育成はとても繊細だ。当初育成方法がわからず、多くの失敗を重ね、涙とともに何本も枯らして来た。

プルメリア育成の試行錯誤の記録と、プルメリア愛をどうぞ。

プルメリア育成の試行錯誤

プルメリアの根はとても繊細で、鉢を頻繁に動かしたりすると根が切れて傷んでしまい、枯れる。引越しの際に追加料金をだして丁寧に運んでもらったこともある。運搬そのものを断られてしまう運送屋さんもある。樹が育って大型化していくと引越し費用がかさむ。

南国の樹なので寒さにはもちろん弱い。最低気温が15度を下回る頃になったら部屋の中に移動させる必要がある。根を傷めないように、樹を揺らさないように細心の注意を払う。さらに窓枠を超えるときに幹を傷めないようにも注意が必要だ。ここは運搬する人間側にぎっくり腰のリスクがつきまとう。

プルメリアの育成で最大・細心の注意が必要なのは水遣りだ。夏にはシャワーを浴びせるように大量の水が必要だけれど、真冬には水断ちをして冬越しのため冬眠させる。季節の変わりめで朝晩の気温差が大きい春と秋の水遣り管理はとても難しい。水遣りの頻度と量を間違えると根腐れして枯れる。常に土の状態と樹の状態をチェックしながら、細心の注意を払って水遣りをする必要がある。

冬眠中も注意が必要だ。冬に全て葉を落とすルブラ種はよいのだが、常緑のオブツーサ種は葉をつけたまま家の中に入れる。しかし室内ではプルメリアにとって重要な自然の風が不足するため、ハダニが発生しやすい。ハダニは葉の養分を吸ってしまうのでプルメリアが弱る原因になる。ハダニは水分に弱いため、ハダニが発生しないよう頻繁に葉の裏表を湿ったティッシュで丁寧に拭き取る必要がある。霧吹きでは土に水分が染み込んでしまい、水分過多になるリスクがあるからだ。冬眠中に不用意に水分を与えると根腐れして枯れる。難しくて、手間がかかる作業。

さらに冬眠中だからといって完全に水を絶ってしまっても、エアコンで乾燥しすぎて枯れる。土の状態と幹の状態を丁寧に観察しながら、冬眠中でも時には大さじ数杯程度の水遣りをすることもある。水を与えすぎてはいけない。でも乾燥しすぎもいけない。部屋でどんな暖房器具を使うのかにも影響される。朝方冷え込む地域は気温の下がる窓際からも離して置きたい。冬場の管理は難易度がさらに上がる。

冬眠から明ける春先も要注意だ。新芽が出始めてもそれは幹の養分と暖かさで葉を出しているだけなので、根はまだ動いていないことがほとんどだ。そのため葉が出たからといって安易に水遣りをすると根腐れして枯れる。しかし水を絶ったままだとすぐに幹の養分だけでは不足して、葉が生育不良になる。あくまでも土の状態と幹の状態を観察しながら、霧吹きで微調整をしながら慎重に少しずつ水遣りを開始する。

水切れのよい土を配合して作る必要もある。市販の土だとわけのわからない肥料が混入している可能性があり調子を崩す。また水はけが悪いと土に水が滞留し、根腐れの原因となる。最終的にはプルメリア農園を営んでいる先輩に教わり、現在は自分で配合した水切れのよいプルメリア専用の土を使っている。

肥料も気を配る。なんでもいいわけではなく、与えすぎると栄養過多になり調子を崩し、最終的には枯れる。かといって養分が不足すると花が咲かない。肥料も種類を間違えると葉だけが生育して花が咲かなかったりする。とても悩ましい。

鉢の大きさも重要だ。順調に育成すると成長とともに根が張って来る。生育が鈍くなってきたら鉢を一回り大きなものに変える必要がある。急に大きな鉢にすると、土と根のバランスが悪くなり、水はけが悪くなり枯れる。あくまで一回りだけ大きなものに変えるのだ。この加減も難しい。

夏場は特に鉢植えで育成している場合、鉢や鉢に隣接したバルコニーの床が熱くなりすぎて、土の温度が上がってしまうことも避けねばならない。土が熱くなると根が傷んで枯れる。バルコニーの床には直置きをせずにスノコの上に鉢を置く。鉢受けの皿を置くと水はけが悪くなるので使わない。

風通しもとても重要だ。ハワイではプルメリアはスコールに打たれ、風にさらされて健康を保つ。バルコニーの隅に置いたりすると風があたらないため、ハダニなどの虫がつきやすくなる。特に日本の夏は蒸れやすいこともあるため、常に風のよく通る場所に置く必要がある。

お世話の先にある喜び

このように困難さはあるものの、通年でしっかりとお世話をし、愛でていると、プルメリアは素晴らしい花を咲かせてくれる。

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花が美しく素晴らしい芳香であるだけではなく、プルメリアはその樹形や葉も美しい。

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この美しい葉脈をみてほしい。もはや芸術品である。

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数年をともに過ごし、プルメリアの生きるペースがつかめて信頼関係が築けてくると、数日旅行で家を留守にしたりしても、プルメリアはちゃんと待っていてくれる。プルメリアは自分の生命維持のために自ら葉を落としたり、開花を控えたりする。私が留守にしている数日はプルメリア自身がそんな風に自分で自分をコントロールして過ごし、帰りを待っていてくれるのだ。

思えばプルメリアの育成はまるで人生そのものだと思える。よりよく生きていくために必要な環境を保ち、四季折々の美しさを楽しむ。時には失うものもあるけれど、長い目で見ればそれも学びになり、いずれ実を結ぶ。

現在のプルメリアと私

生活環境の変化に伴い、10年以上をともに過ごした180cm超えのセラダインを育成し続けることが難しくなったため、知人の家に引き取ってもらうことにした。誰よりも長い時間をともに過ごしたプルメリアとの別れは辛かったが、より良い環境でこれからも元気に過ごしてもらうための決断だった。大きな庭があって海のそばにある素敵な知人の家。きっと今も元気にしていることだろう。

引越しの際にその大きなセラダインの枝を少しカットして、小さな枝を手元に残した。その枝とともにいくつかの季節を過ごし、80cmまで育ったそのちびセラダインは、春が来て新芽が出始めている。いま私の手元には小型のプルメリアの鉢が4つほど、残っている。

昨日はこのプルメリアたちをバルコニーに移した。私のプルメリア愛の物語は、こうしてこれからも続いてゆく。

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