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06.船音【沖家室】思い出備忘録


朝、外からは漁に出かける船のエンジン音が聞こえる。
その音を聞きながら目が覚めると、
沖家室に帰ってきているという実感が強くなる。

外で誰かが祖父と話している声が聞こえる。
私はまだ布団の中だ。

州崎の湾には、ロープで繋がれた漁船が
ゆらゆらと静かな海面に浮かんでいる。

祖父が漁師ではなかった為、
エンジンのない舟に乗った経験はあっても、
漁船に乗った経験は無い。
私にとって漁船はちょっと遠い存在だ。

お昼時になり、島に正午のサイレンが鳴り響くころ、
いくつかの船が湾に戻ってくる。
近くで漁をしていたのだろうか、
お昼を食べに帰ってくるのかもしれない。

戻ってくる船は、湾の入り口に姿を見せると、
エンジンを落としながらゆっくりと湾へ入り込み、
ぐぅっと切り返して船尾を岸に向け、停められる。
漁師さんは、慣れた手つきでロープを岸に括り付けると、
グイッと足を蹴って、船から岸にあがってくる。
足元では驚いたフナムシが散り散りに逃げ出している。

夕方になると、多くの船が湾に戻る。
船底にある蓋を開けている漁師さんがいる。
筏のついた生簀に魚を入れている漁師さんもいる。

行き交う漁師さんで、海岸沿いの道路が少し騒がしくなる。

私は岸に設けられた観覧席のような階段に腰掛けて、
ただただその様子を眺めている。

臆病なくせに好奇心旺盛なフナムシたちが、
ビーチサンダルを履いて置物と化した私の足を
長い触覚でくすぐっているのを感じる。

Tシャツの下の日焼けがヒリヒリと痛い。

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