わが心の敵＝アベシンゾー。あなたは本当に偉大だった

　アベシンゾー。あなたが電撃ともいえる辞意を表明してから、早5ヶ月が過ぎました。それまでの7年8ヶ月、私はどれほどその日が来ることを熱望していたことでしょうか。あなたの築いてきた時代の長さに、私は時としてあなたが死ぬまでその手にした権力を手放さないのではないかと危惧したこともあったほどです。

あまりに長かった7年8ヶ月

　政治にとりわけ関心の深い私にとって、あなたほど目障りでストレスを与える存在はありませんでした。あなたの時代に、私は新聞購読をやめ、テレビも手放しましたが、それでもネットニュースを見れば嫌でもあなたの姿が、あなたに関する記事が目に入ります。寝ているときさえあなたが現われて、悪夢にうなされたことも2度や3度ではありません。

　この7年8ヶ月の間に、あなたはこの国が戦後築き上げてきた曲がりなりにも民主的な政治システムをとことん破壊し尽くし、国民に政治不信を植えつけて独裁的権力をほしいままにしてきました。そして、特定秘密保護法を手始めに、安保法制、共謀罪……と、違憲性の疑われる法案をことごとく強行採決して日本国憲法を骨抜きにしました。

　それでも、外祖父譲りの薄っぺらな極右思想に基づき、改憲のみを唯一のポリシーにしてきたあなたのことだから、そこまでは想定内のことでした。しかし、森友事件のみならず、加計事件、それらに絡む公文書偽造事件、さらには桜事件……と、政治の私物化と腐敗の数々の事例が露呈し始めたとき、私は異世界、異次元に迷い込んだ気持ちになりました。そして、それでもあなたは倒れず、国民が冷めたままでいることに、あれほどの絶望感に打ちひしがれたことがかつてあったことでしょうか。

完璧なサイコパス

　犯罪心理学者のロバート・D・ヘア（1934～）は「サイコパス」を以下のように定義しています。

・良心が異常に欠如している
・他者に冷淡で共感しない
・慢性的に平然と嘘をつく
・行動に対する責任が全く取れない
・罪悪感が皆無
・自尊心が過大で自己中心的
・口が達者で表面は魅力的

（以上、Wikipediaより）

　この定義にしたがうなら、アベシンゾー、あなたは完璧なサイコパスだ。見事なほど非の打ち所のないサイコパスだ。成功するサイコパスには政治家や経営者が多いというが、スティーブ・ジョブズのように経営者の場合は単に成功するだけでなく、社会の発展に貢献する革新的人物も少なくないのに対して、政治家、とりわけ政治的指導者のサイコパスは、ヒトラーを持ち出すまでもなく、例外なく国民を不幸に陥れ国を破滅に導く。何故なら、上の定義が、本来政治家・政治的指導者に求められる資質にことごとく反しているからです。

　あなたも、その持ち前の人なつこい性格で周囲の人々を虜にし、あるいは官僚たちに畏怖心を抱かせて忖度させ、そして何より何の良心の呵責も罪悪感もなく平気で口を衝いて出るウソの数々で大多数の国民を惑わし続けてきました。

歴史に残る一時代を築く

　この7年8ヶ月の間にあなたがなした政治的「業績」や政治的私物化と腐敗・堕落の数々は、国民の間に差別と分断を持ち込み、理性や知性を容赦なく貶め、フェイクとヘイトを社会に蔓延させることに貢献してきました。単に民主的な政治システムを破壊しただけでなく、日本社会そのものを根底から破滅へと導いたのです。

　その実績は実に偉大なものです。日本の政治史、いや、日本の歴史そのものに、子々孫々語り継がれ、この国が存在し続ける限り、特筆されるに違いない一時代を築いたのです。

　だから私は、どんなに不快でストレスを受けようとも、その同時代を見極め、最後まで見届けようと心に決めました。そして、その時代にピリオドが打たれたときには、家族にフレンチ料理のフルコースを奢る約束までしたのです。

ポチタマ以下が後任に就いて

　しかし、その約束は残念ながら果たさずに終わりました。何故なら、あなたの在任中には「安倍さんしかいない」という国民やマスコミの声に対して、私は「アベ以外なら誰でもいい。ポチやタマの方がまだましだ」とさえ思っていたものの、後任に収まったのがなんとポチタマ以下の木偶だったからです。

　私は当初、あなたの時代に番頭役を務めたジジイが、内調を操るマスコミ・言論の統制・弾圧実行部隊長であることは重々承知していたものの、それ以外の実体を測りかねていました。ところが、就任２、３週間もしないうちに、「叩き上げの苦労人のパンケーキ」ジジイは、単に金儲けのいちばんの近道として政治の世界を選び、運命のいたずらか、いつの間にやらトップにまで上りつめてしまっただけの、金に呆けた頑固なだけが「取り柄」の中味空っぽの糞ジジイであることが知れてしまいました。そして、こいつは１年と持ちはしまいと確信するに至りました。

（平時ならこのまま次期総裁選までの中継ぎとして見過ごすこともでようが、このコロナの非常時にあっては、国民のこれ以上の犠牲をひとりでも防ぐために、コロナより先に一刻も早く終息させるべき存在だ。）

超大作映画「実録・安倍晋三」に期待

　この無能を絵に描いたような存在を日々見せつけられるたびに、アベシンゾーの偉大さを思い知らされます。

　あなたの長い長い時代を過ごすうちに、私はポストアベ時代を迎えたら、「実録・安倍晋三」というような、それこそ2部作、3部作の超大作になるに違いない映画が制作されることを期待するようになりました。ヒーロー、アベシンゾー！　あなたは存在そのものが時代の主役でした。あなた自身が時代の主演者でした。閣僚の誰ひとりとしてそれを着用していない中、あの小っちゃなアベノマスクをして国会でウソ八百の答弁を平然と言い放つ姿、星野源を勝手にパクってコラボした動画の仕種ひとつひとつが、まさに名演でした。

　一方で、あなたにはトランプとのゴルフでバンカーに転げ落ちたように、喜劇役者としての才能も併せ持っていました。今後、すべての罪を償いシャバに出てきた暁には、懇意の吉本興業に雇われて、トランプのそっくりさんとでもコンビを組みボケ役を演じるのもいいでしょう。何もせず、何も言わずに立っているだけで絵になる、笑いを誘う。

さようなら、アベシンゾー！

　アベシンゾー！　あなたが表舞台から消え去るとともに、あの7年8ヶ月の間、あなたのことを思わない日が1日としてなかったことがうそのように、あなたへの怒りや憎しみ、嫌悪感等々の悪感情が日々薄れていくのをどうすることもできません。あなたへのそれらの感情が、決して私怨から発したものでなく、公憤に根ざすものであったからには、仕方のないこととはいえ……。

　愛憎は表裏の関係といいます。あれほど憎悪したあなたに、今ではある種の愛着に似た感情さえ覚えることがあるのは、その憎悪の深さがなせる業かもしれません。それほど私は、あなたのことを深く深く思っていた。いや、呪っていた。

　でもその様々な感情が、スガとコロナの災厄の中で、どんどんと色褪せ消え去ろうとしています。自分でも恐ろしいほど足早に……。

　今はただ、スガとコロナが一刻も早く終息し、その後取り戻されるであろう穏やかな日常の中で、「実録・安倍晋三」3部作を心ゆくまで堪能したい。そのときには、きっと心の底からアベシンゾーとその時代を、観客の皆とともに笑い飛ばすことができるでしょう。いや、そうした日常を必ず取り戻さなければならないのです。

改めて言います。さようなら、アベシンゾー！　地獄の彼方へ……