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長月朔日ーー『題西林壁』蘇軾

長月(9月)スタート! 朔日参りに行ってきました。

蒸し暑さは残っていますが、だんだん日が短くなってきていることで、秋の気配を感じます。

さて、今日は、7月の漢詩講座で取り上げた蘇軾の詩をご紹介します。

『題西林壁』は特に夏の廬山をテーマにしている訳ではありませんが、廬山を詠んだ詩として有名な漢詩です。

『題西林壁』  Tí Xīlín bì  

        蘇軾  Sū Shì

横看成嶺側成峰   Héng kàn chéng lǐng cè chéng fēng

遠近高低無一同   Yuǎnjìn gāodī wú yì tóng

不識廬山真面目   Bù shí lúshān zhēn miàn mù

只縁身在此山中   Zhǐ yuán shēn zài cǐ shānzhōng


【書き下し文】

   西林の壁に題す    

     蘇軾

横より看れば嶺(れい)を成し 

側(そば)は峰と成る

遠近高低 一(いつ)も同じきは無し

廬山の真面目(しんめんぼく)を識(し)らざるは

只(ただ)身の此の山中に在るに縁(よ)る


【詩の形式】七言絶句

【押韻】峰・同・中

西林寺は4世紀後半に廬山の麓に建立されたお寺です。

2句目の「無一同」は「各不同」とも。


【桂花私訳】

  西林寺の壁に記す 

           蘇軾

横顔は連なる山なみ 

近くで見ると峰を成す

遠き峰近き峰、高き峰低き峰、それぞれに異なる姿

廬山の真の姿がわからないのは、他でもない、私がこの山中に身を置いているゆえなのだ。


この詩は、蘇軾49歳の年(1084年)の作と言われています。

「物事は見る角度によって様々な姿を呈するもの――多面的な見方とともに、全体像、真の姿を捉えることの難しさを語るものでもある。」
(『新編中国名詩選(下)』より引用)

「真面目」とは真の姿のことですが、確かに山の中にいると山全体の姿は見えないものですね。

俯瞰する、客観視するーーなかなか難しいことですが、素晴らしい山容を眺めるためには少し離れて見ることも大切だということでしょうか?

いろいろな意味で奥の深い表現だと思います。

来週末には重陽の節句(9日)、翌10日は中秋の名月ーーと秋の行事が控えていますね。

心地よい秋の入り口をお楽しみください😊


【参考書籍】

*『漢詩入門』一海知義著   岩波ジュニア新書

*『宋詩選』小川環樹編訳   筑摩書房

*『新編中国名詩選(下)』  川合康三編訳 岩波文庫

*『人生のヒントをくれる型破りな10賢人  中国詩人烈伝』 
       諸田龍美著 淡交社 

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