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論文がRejectになった時に考えること

大学で研究をして論文を投稿することが仕事の一つとしてあります。論文と言っても,査読の有無があるので,ここでは査読有の国際会議・学術雑誌に投稿した論文がReject (電気学会は返送と表現)された場合の著者の気持ちについてのみ考えてみたいと思います

査読による判定

私が専門としているパワーエレクトロニクスの分野では,国際会議で論文発表後に学術雑誌に投稿するというのが一般的です。国際会議および学術雑誌にはそれぞれ査読が独立してあり,著者が投稿した論文に対して匿名の査読者(専門家)が論文に対する意見・質問を文章で行います。学術雑誌の場合は,査読者と著者の間で2~3回ほどやり取りが繰り返され,査読者が納得すれば晴れてAcceptになり,掲載され公開されます。一方,国際会議は査読者と著者の間でやり取りは無く,複数の査読者が採点して1発勝負みたいな状況なので,その平均点が良いか悪いかという判断になっています。

最近の状況

ここ最近の私の状況ですが,学術論文が2件,国際会議が3件Rejectになりました。大学教員を20年ぐらいしていると,トータルではたくさんRejectメールを受け取っています。TwitterのTLを見ているとAcceptになったことを報告されている方が多いのですが,実際にはRejectになっていることもあると思います。私自身,論文を投稿する側でもあるのですが,電気学会論文誌やIEEE TransactionのAsociateEditor(・・・すなわち編修側の仕事)や査読もしているので,採否決定側の仕事もしています。大御所が著者の一人となっている論文がRejectになっている例がもちろんなかったとは言えません。

参考までに,最近受け取ったある国際会議のRejectのメール文章です

On behalf of the Technical Program Committee, we regret to inform you that your following summary is not able to be included in the program as a result of paper review.

Acceptメールはこんな感じ

On behalf of the Technical Program Committee, we are pleased to inform you that your following summary has been accepted as a result of paper review.

Rejectになって最初に考えること

論文がRejectになって,最初にすることは査読者のコメントを読み,査読者は何を考え・感じたのかをよく考えます。正直な話,Rejectのメールを受け取った直後は,私も納得できないので2~3日は時間を置くことにしています。Rejectになる多くの理由は,投稿者が論文で主張したい点が査読者に伝わっていないということだと思います。査読者は専門家ということになっていますが,非常に良く理解している方もいれば,残念ながらそうではない場合もあります。人格・技術・論文内容が否定されているわけではなく,学術論文として掲載する価値の有無についてのみの議論なので,投稿した論文の最初の読者である査読者のコメントは非常に重要だと思いますし,その点は受け止める必要があると思います。査読者と著者は直接議論するわけではなく文章を介してのやり取りなので,誤解の無いように表現することが重要です。きっと,対面で説明すれば誤解を解けるだろう・・・と思うこともありますが,将来の読者のことを考えると文章で論文の主張内容を伝えることは必要です。

Rejectになった後にすること

Rejectになった理由を元に,論文を修正して再投稿するしかありません。国際会議の場合は,1年/回なので翌年の会議までは待てないので,次に締め切りに近い国際会議に出すしかありません。学術雑誌の場合は,同じ雑誌に投稿することもありますが,場合によっては異なる雑誌への投稿も考える必要があります。大学院生が著者の場合には,限られた時間内で論文を評価してくれる雑誌に論文を再投稿するかは非常に重要です。論文はインターネット上で広く公開されている時代なので,私自身は固定の雑誌や国際会議に限定することなく,投稿先を探してみることが重要だと思います。

まとめ

論文が世に公開されて初めて研究をしたと言えるので,Rejectされても投稿し続けることが大事です。もちろん,査読コメントには真摯に受け止める気持ちも重要です。

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