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2023年デジタルファッションリサーチ in NY

現在NYのファッションデザインでも有名な大学、Parsons School of Designで学んでおり、デジタルファッションについても勉強中です。現地で感じているNYのデジタルファッションについてまとめます。

Parsonsの学生の中には、趣味やお仕事でMayaなどでデジタルファッションを自分でデザインしてる学生もいます。

デジタルファッションとは

ZERO10

デジタルファッションとは、ゲームやSNSなどのバーチャル空間で身につけることが出来る衣服や靴、アクセサリーなどのことです。現実の空間で実際に衣服を着用するのではなく、デジタル空間にて自分やアバターが着用出来るデジタルな衣服です。

Digital Fashion Marketによると2022年のデジタルファッションの市場規模は約3.4億USドル(約460億円)で、2028年までに約1950億USドル(約26兆円)まで市場規模が拡大されると予想されています。

デジタルファッション分類

現在流行しているデジタルファッションの使い方は、大きく分けると3つに分類されます。

  1. カメラで現実の自分や人をスマホ上に映し、デジタルの衣服の試着を画面上でするAR試着

  2. 現実のファッション展示やイベントをメタバースに移した、メタバースでのブランド広告

  3. メタバースでアバターに着用させるアバター向けデジタルファッション

AR試着

Amazon Virtual Try-OnZero10などに代表される、スマホのカメラで人の体をトラッキングし、人の体の上に様々な衣服を重ねることで試着することが出来るアプリです。

試着からユーザーに購入を促す

Amazon

Amazon Virtual Try-Onなどの試着アプリでは、実際に消費者が買いたい商品を家でバーチャルに試着出来ます。アプリでの買い物だと試着出来ないので、バーチャルで試着することでユーザーが事前にどういった商品か理解しやすくなります。お店側にとっても返品での配送料などを節約出来るというメリットもあります。

ブランドがユーザーエンゲージメントを高めるために使う

ZERO10などのアプリは、ブランドがユーザーとのエンゲージメントを高めるために使われます。例えば上記VOUGUEチェコスロバキアの例では、Dior、Louis Vuitton、Dolce & Gabbana、LOEWEのコレクションをデジタルにし、ユーザーが各ブランドの最新ファッションをアプリ上で試着出来る様にしました。

メタバースでのブランド広告

特にコロナ以降、多くのブランドがメタバース空間でのブランド戦略が目立ちます。

Gucci Twon on Roblox

例えばGucciはRobloxで2022年5月にGucci Townを作りました。今までに4000万人以上の人が訪れています。Gucciのデジタルファッションアイテムを購入出来るだけでなく、Gucciのアイテムの巨大オブジェを見たり、ミニゲームを楽しんだり出来ます。
他にもTommy Hilfiger、Burberry、Balenciaga、Nikeなどのブランドがメタバース上に自身のメタバースを作っています。

Digital Fashion Week NY

またファッションウィークNYの期間中にリアルで開催するだけでなく、デジタルファッションウィークNYとしてメタバース等のデジタル空間で開催する様になりました。各ブランドとしても無視できない存在になっています。

アバター向けデジタルファッション

https://blog.roblox.com/

RobloxやSpatialなどメタバースを作っている会社はデジタルファッションにも力を入れており、ユーザーは自分を表現するデジタルファッションをアバターに着用させます。ユーザーは自分を表現するため、各メタバース空間で使える通貨でデジタルファッションアイテムを購入します。

またRobloxでは自分でデジタルファッションやマップを作るための開発環境も用意しており、デジタルファッションを販売することも出来ます。個人でデジタルファッションを作り、月1000万円以上の売上をあげるユーザーもいます。

デジタルファッションの注目企業やデザイナー

The Fabricant

https://www.thefabricant.com/iridescence

The Fabricantは2018年にオランダで創業した、Web3技術を使ったデジタルファッションクチュールです。

2019年、世界で初めてNFT技術を用いたデジタルのみの服(Iridescence Dress)を作り$9,500で販売しました。
物理制約がなくなった時、私達の体は何が出来るのか。デジタルの世界で表現する時、アイデンティティの意味は何か。などデジタルファッションの未来についてこれから考えるべき作品となりました。

Rtfkt

https://rtfkt.com/

Rtfktは2020年にアメリカで創業した、NFT技術を使ったデジタルファッションブランドです。主にNFT化されたデジタルスニーカーをデザイン、販売しています。

2021年に彼らがデザインしたデジタルスニーカーをブロックチェーン上でオークションし、600足のデジタルスニーカーが7分以内に売り切れ、合計額が$3.1 million USD(約4 億円)となりました。
その後2021年12月にNikeが買収しています。

DressX

https://dressx.com/collections/

DressXは2020年にウクライナで創業した、デジタルファッションを販売する会社です。現在はロサンゼルスを拠点としています。

物理的な服の多くは廃棄されており、デジタルファッションにより環境負荷を下げる事を目的としています。自身の全身写真をサイトからアップロードすることで、選択したデジタルファッションを身にまとった画像が送られてくるというサービスを行っています。この画像をSNSで投稿するユーザーもいます。

https://dressx.com/

Adidas、Bershka、Banterなどなど多くのファッションブランドとコラボし、デジタルファッションを販売しています。またRobloxやHorizon WorldなどのMetaverseプラットフォームでもデジタルファッションを販売しています。

Samuel Jordan

https://www.businessinsider.com/how-roblox-creator-makes-about-80000-month-selling-virtual-items-2022-3

Samuel Jordanは、Robloxのデジタルファッションクリエーターです。12歳からRobloxを始め、2019年からは様々なデジタルファッションを作り始め、現在は月に$90,000以上を売り上げることもあり、Robloxのトップクリエイターの1人です。

Roblox内のデジタルファッションのみを開発するだけでなく、スーパーモデルのカーリークロスや各ブランドとコラボし、現実のファッションをいかにRobloxのメタバースに落とすかを一緒に考え、そのデジタルファションを開発しています。

さらにデジタルキャラクターIPを現実の人形にする仕事もやっており、彼のデザインする領域が、デジタルファッションのみだけではなくなっています。

デジタルファッションでの取り組みとこれから

Digital Fashion Week NY

Digital Fashion Week NY

Digital Fashion Week NYは2022年春のコレクションからスタートしました。これまで、2022年春、夏、2023年春のコレクションを開催しています

Digital Fashion Week NYの公式ホームページは↓こちらです。
Digital Fashion Week New York

Digital Fashion Week NYでは、メタバース空間でのデジタルファッションショーや、ZOOMを使ったトークイベント、スマホAR技術を使ったユーザーの目の前でのファッションショーやファッション試着体験などなど、従来の現実の体験では出来ない、様々なデジタル体験が出来ます。

デジタルファッションショーはPixel Canvasのプラットフォームを通じて開催されました。Pixel Canvasはブラウザベースのメタバース提供プラットフォームです。

ARでの試着はZero10のAR試着アプリを用い、Privacy Policyなどのブランドのデザインのファッションをスマホアプリ上で試せる様になっています。

2023年からは現実での開催もかなり戻っていますが、デジタルでの開催もまだまだ残っていて、各ブランドはどちらも大事にしていることは疑う余地はないでしょう。

RtfktとNikeが現実と仮想が融合されたスニーカーを発売

RtfktとNikeは、2022年12月に最新作のスニーカーであるCryptokicks iRLを19,000足限定で販売しました。

Cryptokicks iRLはデジタルのスニーカーと現実のスニーカーのセットで販売されました。デジタルのスニーカーはNFT化されているだけではなく、それぞれのデジタルスニーカーに紐づく現実のスニーカーを受け取れます。現実のスニーカーの中にはNFCチップが入っており、デジタルスニーカーと1対1に紐づいています。

ユーザーはメタバースで自分の購入したデジタルのスニーカーを自分のアバターに履かせるだけでなく、現実世界で自分で履くことで触覚フィードバックを得たり歩行検出したりするだけでなく、様々な現実のイベントに参加出来るそうです。

2022年RobloxのMetaverse Fashion Trend調査

Robloxは2022年11月にParsons School of Designと共同でメタバースにおけるファッショントレンドを調査しています。

詳細調査レポートは↓こちらのリンクから
FINAL_2022-Metaverse-Fashion-Trends-report_Roblox-x-Parsons.pdf
*2022年9月19~21日に、アメリカ在住の14~24歳の1000人に対して調査

https://blog.roblox.com/2022/11/insights-from-our-2022-metaverse-fashion-trends-report/

Z世代は自分のアバターに様々な服を着させることで、個性を表現する(47%)、自分自身の気分を高める(43%)と回答しています。またデジタルスペースでの友達との繋がり感じる(32%)や現実世界での友達とのつながりを感じる(25%)など、デジタルや現実の友達のとの繋がりを感じると回答しています。

Roblox Metaverse Fashion Trends

Z世代の70%が自らのIRL(In Real Life。現実世界)のスタイルから影響を受け、アバターのデジタルファッションを選んでいます。また逆にデジタルファッションから影響を受けIRLのスタイルを選んでいることもわかりました。

https://blog.roblox.com/2022/11/insights-from-our-2022-metaverse-fashion-trends-report/

Z世代の約半数(48%)がIRL(In Real Life。現実世界)で試したことのないファッションをデジタル世界で試したいと考えており、41%がIRLで着ているブランドと似た服をデジタル世界で着たいと感じています。

RobloxとParsons School of Designの取り組み

2023年春のセメスターにRobloxとParsos Schoolが連携してクラスを実施しています。私もこのクラスを受講しています。この授業ではデジタルファッションをデザインしながら、現実とデジタルのファッションの関係性を探索する授業です。

https://garbagerobloxgames.miraheze.org/

Robloxは上記画像の様に左から右にボディタイプを徐々に増やしており、Robloxが2021年に発表したLayered Clothingシステムを使うことで、一番右側の体に合うようにデジタルの服を作れば全てのボディタイプに着させることが出来ます。

授業ではRobloxのLayered Clothingシステムを使いながら、デジタルファッションをファッションデザイナー(現実のファッションをデザインしているデザイナー)と一緒に作ります。作ったデジタルファッションはRobloxで販売したり、VRやプロジェクター、Looking Glass、ARグラスなどを使いながら展示を行い、デジタルと現実のファッションの関係性について考察します。

クラスでは2023年5月に最終報告をする予定になっています。

まとめとデジタルファッションの今後に向けての考察

デジタルファッションは昔からウェブ世界で見られているものでしたが、NFTとメタバース、WFHの波に乗り、ここ3年程で大きく変革しました。

デジタルファッションデザイナーの仕事範囲も大きく変わってきています。これまでデジタルファッションデザイナーは、メタバースやウェブ世界で使うデジタルファッションのみをデザインしていました。しかし現在のデジタルファッションデザイナーはデジタル空間のみで使われるデジタルファッションもデザインしていますが、各ブランドの現実のファッションの世界観を崩さずにデジタル世界で活きるようにデザインしたり、更には現実のファッションデザインやプロダクトデザインにまで幅広い活躍をしています。

今後どの様にデジタルファッションが成長するかは未知数な部分があります。少なくともメタバースのデジタルファッションのみでビジネスが完結する様にはならず、現実のファッションとデジタルのファッションを結びつけて考えることが重要と思います。

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